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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第3章 エルフの剣編

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お別れ

 夕食は家にある酒と肉を大量に動員して、リディさんの送別会みたいにした。お客さんなので、送別会と言うのもおかしいのかも知れないが、それなりに生活を共にしてるからなぁ。そういえば、滞在費も払ってくれようとしたのだが、その辺りはリケに魔力周りを教えてくれたことと相殺、ということにした。

 人間だと家名持ちでも無ければ魔法が使えないこの世界で、魔力の知識というのはなかなかに貴重な情報だとは思うので、これで相殺になっているかは若干怪しいが、リディさんの中では剣の修理代は若干足りてないって感じぽいし、それも含めてお互いにそれで納得しているので良しとする。

「今回は非常に興味深いものがたくさんあって、正直に言えば、楽しかったです。修理の依頼はそんなに来ないほうがよいとは思いますが、また他にも頼みたいことがあれば、ぜひともこの工房にお任せしたいです」

 リディさんは送別会の最後にそう言った。

「ぜひ、エイゾウ工房をご贔屓に」

 俺も笑顔でそう返した。


 翌朝、今日はリディさんが森から魔力を吸収していた。「帰りに使う身隠しの魔法の分」だそうだ。エルフは強力な魔法を扱えるようだが、それでも一人旅は危なかろうと思うので、リディさんはよっぽど剣の腕も立つのかと思いきや、街道なんかでは身隠しの魔法を使って見えないようにして、街のすぐ近くとかで解除するといった方法でやってきたので、一通りの護身以上のことはできないらしい。森に入ってからうちに来るまでもその魔法使ったって言ってたしなぁ。


 ということで、朝飯をリディさんも含めた5人で食べ、リディさんが出立の準備を終えたら、森の入口までみんなで送っていくことにした。こうすれば少しでも魔力の消費を抑えられるだろうし。

 サーミャを先頭に、俺、リディさん、リケ、ディアナの順に並んで移動する。今日は荷車がないので、俺は熊を倒した時に使った槍も念の為持ってきている。よくよく考えれば、今日納品とかにして、街までリディさんを送っていける体制にしたほうが良かったな。迂闊だった。もし次があればそうしよう。

 森の入口までは特に何も起きなかった。鳥やらの小動物には出くわしたが、彼らが危害を加えてくるようなことはない。リディさんがエルフなので、もしかしたら森の動物と会話とかそういうことがあるかと、ほんの少し期待したが、別段そういうこともなかった。魔力が必要かつ扱いに長けていて、長命である以外の基本的なスペックは人間と変わんないしな……。


「皆さんには本当にお世話になりました」

 リディさんが右手を差し出す。

「こちらこそ。またいつか来られることを、あの家でお待ちしています」

 そう言いながら、俺はその手をそっと握る。

「またな!」

「今度来るまでに、魔力の扱いの練習しておきますね!」

「今度来る時は、エルフの剣術とかも教えてね」

 3人もリディさんの右手を取って別れを惜しんでいる。

「それではまた!」

 リディさんがそんな声量で声が出せたのか、と驚くほどの声で別れを告げる。俺たちは互いに手を振りながら、姿が小さくなるまで見送った。


「行っちゃったなぁ」

 ぼそりとサーミャが言う。元々は一匹狼(虎だけど)だったサーミャではあるが、一旦気を許した相手にはそれなりに寂しさを覚えるらしい。

「まぁ、なんか作ってほしいものがあればまた来るだろ」

「そうね。エイゾウしか作れないものもいっぱいあるみたいだし」

 俺がフォローすると、ディアナが後を引き取る。そうして俺たちは森の中へ戻っていった。


 森の入口までは往復で4時間くらいあるので、今日の時間のほとんどを使ったことにはなる。なので、昼飯を食ったあとは休みということにした。俺はもちろんミントの植替えである。

 昨晩であるが、リディさんに

「もし植え替えるなら、壺か何かに入れて育てたほうが良いですよ」

 と言われたのでそうすることにした。使ってない中くらいの素焼きの壺の底に穴を開けて、土と一緒に根っこのついたミントを入れて、外に出す。下には余った木材を加工した受け皿を敷いておいた。木材だから時々はチェックしてやらんとなぁ。

「伸びた茎が地面につくと、そこから根が生えて増えるので、時々は確認して垂れ下がってきたやつは切ってください」

 とも言っていたので、夕方の稽古の前後のどっちかにでもチェックするようにしよう。長く家をあける時は家の中の窓際に移すとかしたほうが良いかも知れないな。帰ってきたらそこら一面にミントが、ってのもちょっと恐怖だ。畑に植えるものが決まるまでのまさに“埋め草”にするつもりだったのだが、リディさんの里からそのうち種かなんかが来るなら、むしろ増えすぎるのは邪魔になるし、ミントには適度に育ってもらおう。


 そういえば、うちにはベランダがない。洗濯物は庭に立ててある背の高い杭にロープを張ってそこに干しているのだ。勿論屋根はない。洗濯バサミもないので、ロープにかけるか通す形でやっている。そして屋根がないので、そんなに降らないとは言え、雨の日は一切洗濯物ができない。

 陰干しになっても、干せるならちょっとしたものの洗濯くらいはできるだろうし、森の中だが日差しの強い季節にはそこで涼むこともできるだろう。プランターならぬ壺栽培の植物が増えたときもそこに置いておけるし、作っておくメリットは結構あるようには思えるな。貯蔵庫周りが先決だとは思うが、その辺りが片付いたら作ることをみんなにも提案しておこう。


 その後は中庭の土がまた雑草だらけにならぬように耕し直したりして一日を過ごしたのだった。

後ででも構いませんので、このお話を気に入られましたら、ポイント評価、ブックマークしていただけると大変嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ミントを舐めるな
[一言] ミントの侵略防止(笑)
[一言] エルフ編も面白かった
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