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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第15章 竜の目覚め編
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少しの晴れ間

 俺の目が捉えた人影は、肩口で切りそろえられた銀髪と緑の目、そして長い耳をしていた。


「リディ!」


 俺が言うと、皆もリディを見るなり、彼女に駆け寄った。物理的に近寄れないクルルも、なんとか顔を寄せている。


「ご迷惑をおかけしたようで……」

「いや、そんなことはないぞ。なあ?」


 俺はここまでリディを運んできたヘレンを見て言った。

 ヘレンは大きく頷く。


「アタイはここまで連れてきただけだし」

「獲物もちゃんと処理してきたから、何も問題ないわよ」


 ヘレンに続けて言ったのはディアナだ。確かその辺の作業をしようとしている時に、リディが倒れたんだったか。


「すみません。ありがとうございます」


 そう言って頭を下げるリディ。俺は彼女に尋ねる。


「身体の調子はどうだ? どこか痛むとか、歩くときにフラフラするとかは?」

「いえ、それがなんともなくて……」


 うーん、一時的なものだったのだろうか。詳しくは後回しにするとして、取りあえず今は、


「じゃ、腹減ってるだろ。まだちゃんと残してあるから、それを食うといい」


 ちゃんと飯を食うことが大事だ、と俺は思う。

 それを知ってか知らずか、リディは少し恥ずかしそうに頷き、俺たちの夕食はいつもの通り、賑やかなものになった。


 翌日、リディは水汲みにはついてこなかったが、特に身体に異常はないらしい。

 元々この〝黒の森〟の魔力異常が進行する気配もないから来ないということだったし、特に問題はなさそうだ。


 この日は獲物の回収や解体を経て、その後はゆっくり過ごす予定になった。

 誰も何も言わなかったが、リディの身体を気遣って誰からともなくそうなったのだ。


 ただ、俺だけはカミロに一筆したため、ハヤテに託した。

 内容はもちろん、病気になったときに診せるあてがあるかどうかである。リディにあったことについては一旦伏せておいた。

 エルフが急に倒れて、それ以外には特に何事もなく回復したが、何か知っているかと聞かれても、知っていると答えられる人間はほぼいないだろうし。


 ハヤテはすぐ戻ってきてくれたし、程なくしてアラシがカミロの返事を持ってきてくれた。

 曰くは「色々な種族を知っている人間を探しておく。なるべく女性で」とのことだった。

 こちらが言うのを忘れていても色々要望を先回りできるのが、カミロが成功したもとになってるんだろうな。


 もうすぐ日が落ちてくるころ、庭で走り回るディアナとヘレン、クルルとルーシー、そしてハヤテにマリベルを眺める。

 俺の手には、今日日がな一日削っていた木があった。その木は削り始めたときからは大きく姿を変え、人のような姿になっている。


 言うなればもう一つの女神像のようなものだな。これは医者はさておき、今できることと言えば神頼みくらいなので、取りあえずと言っては失礼だが、手を合わせる対象として作ってみたのである。

 マリベルがうちに来るきっかけになったのが鍛冶の女神なら、こちらは健康の女神だろうか。

 ギリシャ神話のアスクレピオスには全てを治す女神と予防する女神の、2人の娘がいたと言うし、そういう感じのものと思えばそう変でもないな。


 特に意識せず、ほぼチート任せで作ったのが女神になってしまうあたり、うちはつくづく女性に縁があるらしい。


 庭を眺める俺の隣にリディが座る。


「それは新しいのですか?」

「うん。適当に作ってたらこうなった」


 リディは俺の返事を聞いて苦笑した。


「それで今回も女神様に? エイゾウさんは女性に好かれるたちなんですね」

「そうかなぁ……」


 俺は小首を傾げる。好かれるどころか、怖がられることのほうが多かったのだが。


「ま、嫌われるよりマシだ」


 俺がそう言うと、リディは笑って、


「そうですね」


 黄昏の中、そう言った。

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