表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第15章 竜の目覚め編
913/980

加工

 昼食を手早くすませて午後。


「さて、魔力を吸収させられることは分かったわけだが」


 湯気で蒸している状態だったナイフを前に、俺は腕を組んだ。ナイフはどれもキラキラと輝いていて、本体の出来はそこそこまでで抑えてあるのに、入っている魔力は不相応に多いという状態になっている。


「やっぱり、この方法を常に使うわけにはいかんなぁ」


 湯気に当てるということは、つまり常に水分に晒すことになる。鋼の部分に良くないのはもちろんだが、鞘や持ち手も湿ってしまうのは良くないだろう。


 まあ、それ以前に大問題が一つある。それはサーミャが指摘してくれた。


「みんながみんな温泉持ってるわけじゃないだろ」

「それなんだよなぁ」


 俺は腕を組んだまま、ガックリと肩を落とす。普通の温泉ならまだしも、〝黒の森〟で湧いているような、魔力をふんだんに含んだ水や湯となると、この世界中を探してもそうはない。

 もしかすると魔界ならなんとかなるかも知れないが、我が工房の製品が出回るのは魔界以外が多い……はずである。

 カミロのことなので、しれっと魔界にパイプが繋がっていても何らおかしくない。


 ともあれ、もとよりこの方法でなんとかしようとは考えていなかったが、最後の手段としても厳しいのは間違いないので、他の方法が必須になってくる。


「何らかの形で魔力を吸収しやすい構造を作れればいいんだが……」


 俺が首を捻っていると、リディが言った。


「温泉の湯気に含まれる魔力がナイフに吸収された。つまり、少しだけ魔力が集中するようにすれば、少しずつでも補充されるかもしれません」

「集中、か。それは良さそうだな」


 魔力が集中するようにしておけば、それが補充される、というアイデアは良さそうだが、どんな形状がいいだろうか……。


「朝露をイメージしたらどうでしょう」


 俺がうんうん唸っていると、リケが言った。


「朝露?」

「はい。朝露は小さな水のしずくが集まって出来るんですよね? 同じように小さな魔力を一つのところに集まるような形にして、集中させれば少しずつの魔力でもなんとかなりませんか?」

「ふむ……。いや、そうか。魔力を集める溝を彫ればもしかして……」


 俺は早速、新たな試作品の作成に取り掛かった。刃の形状はそのままに、柄や鍔の部分に細かい、葉脈のような形をした溝を彫り込んでいく。

 作業はチートの手助けを借りて、魔力が集まるよう、水の流れもイメージして作業をしていく。


「どうかな?」


 俺は出来上がった1本のナイフをリディに見せてみる。


「確かに、魔力の流れが違うようには見えますね」

「でも、本当に効果があるかは時間をかけて観察しないとわからないわね」


 ディアナが言った。その通りだ。すぐに結果が出るわけではない。しかし、これは確実に一歩前進だった。


「まずは試作品を増やしていこう。溝の形や深さを変えたものをいくつか作って、どれに効果があるか比べるしかないな」


 俺はそう言って、再び作業に取り掛かった。 魔力が抜けるという問題は、完全には解決していない。


 だが、少しだけ明かりが見えたような気がして、心なしか鎚が軽い気がした。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=509229605&sツギクルバナー
― 新着の感想 ―
高級モデルの制作時間、どれだけ増えるんだろ。 リケも高級モデル作れるようになるかなと思ってたら、やっぱりエイゾウしか作れませんってなるんかな。
あえてこういう展開になさっておられる以上相応の解は用意しておられるのでしょうが、これまでエイゾウ工房で作ってきた製品すべてにかかわる問題なので物語の辻褄がきちんと合うのか、率直に言って不安です。納得で…
そもそも街とかでは魔力がないか少ないって話では…… 朝露に例えてたけどそれも霧があってのことだし霧がないところでは朝露も溜まらないというか まあ魔物とか狩ったり魔力のあるところに冒険に行くなら関係…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ