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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第14章 秘密のインク編
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カリオピウムの焼き入れ

 魔力の抜けたカリオピウムをまずは加熱せずに、鎚で軽く叩いてみる。魔力が入っていってしまっては意味がないので、そうならないように慎重にだ。

 コチッ、と軽い音がする。この衝撃で崩れてしまうほど脆くなっているわけではないようだ。

 カリオピウムは形を変えることもなく、そのままの姿でそこにある。


「ふむ」


 さっきの鎚の感触からすると、強く叩いても平気そうだな。そう思い、先ほどよりもかなり強めに鎚を振り下ろす。もちろん、魔力がこもらないように。

 鎚が当たったカリオピウムからキィンと大きな音がして、形を変えた。叩いたところが少し凹んでいる。

 つまり、はじめてこれを変形させることができた、ということだ。


 最終的な目標がインクを作るということだと考えると、形を変えるだけではダメなのだが、ともあれようやく一歩を踏み出すことができた。


「焼きなましみたいになってるのかな」


 焼きなましとは大まかに言えば、硬くなっている金属を熱してからゆっくりと冷やすことで、金属を柔らかくすることだ。

 柔らかくなっているので、割れたり砕けたりするよりも、伸びたり変形したりするほうが強くなる。

 餅とは違うので、いくら叩いても一切割れないということはないと思いたいが、メギスチウムは魔力を込めるまで粘土のようだったし、この状態のカリオピウムもある程度の硬さととんでもない柔らかさを備えている可能性がある。


 前の世界にいたときにはなかった金属なのだし、どういうことがあってもおかしくないと思ったほうがいいだろうな。


「焼入れを試してみるか?」


 熱して急冷する焼入れをすれば金属は固くなる。そのかわり脆くなるわけで、今回のように、文字通りに粉砕しようかなと思っているときには適している……と思う。

 俺は叩いたところを見ながら独りごちる。


「試してみないことにはなんともか」


 他の皆の作業もあるので、その合間にカリオピウムも熱していく。以前に加熱したときは大して状態が変わらなかったような記憶もあるのだが、今回はちゃんと赤くなっていくのが見てとれる。


 チートの助けでも、温度が上がっていく様子が分かるので、適度なところで加熱を止めて、すぐに水に浸ける。

 ジュウとなかなかに派手な音がして、もうもうと湯気が上がる。


 本来ならば冷却する温度や時間はかなりシビアに調整する必要があり、少しでもズレれば思ったとおりの仕上がりにならなかったりするのだが、今回はその辺りをあまり気にせずにやっていく。

 最終的に調整が必要になる可能性はあるが、ひとまずはこれで様子見だ。


 しばらく水の中で動かしたりして、十分に温度が下がったところで取り出す。熱する前と同じ、くすんだ色合いの金属が水の中から現われた。

 皆の作業する音をBGMに、俺は金床へ向かい、そこへカリオピウムを据える。


「さてさて、どうなりますかね」


 俺は鎚を振り上げ、カリオピウムの角をめがけて、それを振り下ろすのだった。




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― 新着の感想 ―
急冷すると硬くなるのは、主に鉄系のハガネ(鋼。炭素の入っている鉄)ですね。銅系の金属なら、柔らかくなります。
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