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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第14章 秘密のインク編
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試し撃ち

 庭に出ると、ディアナとヘレンが娘たちと走り回っていた。

 俺が試作に取りかかってから、そこそこの時間が経っているのだが、まだ元気に走り回っていて、ヘレンや娘たちはともかく、ディアナもまだまだ走る速度が落ちていないように見える。


 つまりはディアナの体力がなかなかに凄いものになってきている、ということなのだが。

 まあ、今の師匠はヘレンだからな……。ディアナ自身が気がついているかどうかは分からないが、彼女はとっくに王国の宮殿にいる誰より強くなっているんじゃなかろうか。

 元々〝剣技場の薔薇〟と呼ばれるほどの実力者なのだし。


 それはさておき、遊んでいた2人と娘たちが、鍛冶場から出てきた俺に気がついて、駆け寄ってきた。


「お、それがそうか?」


 ヘレンが俺が手にしている試作品を指差す。俺は頷いた。


「うん。だが、まだまだ試作段階で使えたもんじゃなさそうだけどな」

「そうなのか?」

「ああ。一発撃てたらいいほうだと思ってる」


 試作品を持ち上げると、コトリとあまり格好のつかない音がして、ヘレンが苦笑する。

 試作品にクルルが顔を近づけて匂いを嗅ぐ。それを見たルーシーが、ディアナの肩に前脚を置いて立ち上がり、同じようにしている。


 ルーシーもだいぶ重くなってきたはずだが、余裕で支えられるくらいにディアナの筋力も上がっているということか。

 今後、肩には気をつけないといけないな。


 ハヤテはヘレンの肩に乗り、マリベルはふよふよと浮かんで同じようにしていた。

 マリベルが匂いを嗅いで、ニンマリと笑う。


「木と鉄の匂いがするね」

「材料はそれだからなあ」


 マリベルの素直な感想に、思わず笑みがこぼれる。それはディアナもヘレンも同じだったようで、3人の親と4人の娘達の笑い声が庭に響いた。


「危ないから、ちょっと離れててな」


 何をするのかと、近寄ってきた娘たちに言うと、彼女たちは素直に離れた。


 まずは取り付けた持ち手をグルグル回していく。小さな歯車と、それに噛み合った歯車が回り、逆転防止ラッチがカタカタと音を立てる。

 それに連れて、ギリギリと弦が引かれ、力を蓄えていく。


 かなり重くなったところで、俺は手をそっと離した。ギリッと音がしたが、とりあえず動きは止まってくれた。

 引かれた弦の前に、そっと矢を置く。空で撃つと負荷が掛かって良くないことは以前にクロスボウを作った時に学習済みだ。


 今回は一発こっきりの可能性も十分あるが、余計な負荷で壊れたのか、それとも関係ないのかは分かるようにしておく必要がある。

 それとは別に、今もし弦が解放されたら、俺の手は大変なことになるだろうから、矢を置くだけでも緊張の一瞬だ。


 小さく音を立てて、矢が試作品に収まった。動きはないから、俺の手は無事だ。これで発射可能な状態になった。

 俺はいつもサーミャとリディが弓矢の練習をしている的に向けて、試作品を構える。

 構える、といっても的のほうに向けるだけに近く、狙うなどは全然出来ていない。


「ようし」


 俺は小さく呟いて、軽く気合いを入れた。背後からは固唾を呑んで見守る家族の気配がする。

 俺が指の先でそっと逆転防止ラッチを解放すると、矢は力を蓄えた弦によって、勢いよく飛び出していった。




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