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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第14章 秘密のインク編
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 小さい方の歯車を回すと、それに連れて大きい方の歯車が回る。大きい方の歯車は直線の部品を動かし、その部品はキリキリキリキリと音を立てて、弓の弦が引かれていく。

 思ったよりも軽く回せているが、これは俺の筋力がこの世界へ来るにあたって強化されているからなのか、それとも歯車のおかげなのかはちょっと分かりづらい。


 これは量産する前にリディにもやってもらったほうが良さそうだな。他の面々はなんだかんだで、この世界の平均的な女性よりもかなり力が強い……らしい。

 サーミャとリケ、アンネは種族的な特性もあり、ディアナとヘレンは鍛えていてなのだが、唯一どちらにも該当しないのがリディだ。

 ただ、エルフも農作業を良くするからか、いわゆる「貴族のお嬢様」然とした女性と比べれば力が強いらしい。


 まあ、それでもうちで一番「か弱い」のがリディであることには違いないので、こいつの目的を考えれば彼女が動かせないと少し意味が薄れるのだが。


 俺はぐるぐると歯車を回していたが、如何に歯車の力を借りていると言っても、弦が引かれるにしたがって、どんどん手応えが重くなってきた。


「あ、やべ」


 そこそこ重くなってから気がついた。こういうものには、手を離しても安全なように歯車に逆回転防止のための仕組みか、似たような機構を直線状の部品に付けておく必要がある。

 今俺がパッと手を離すと、当たり前だが力を蓄えた弦は直線状のパーツを前方に動かし、そのパーツは大きな歯車を動かし、そしてさらに小さな歯車が回ってしまう。


 大きな歯車が小さな歯車を回すときは、力ではなく回転数が上がる。つまり、俺の手が高速回転する取っ手でこっぴどく叩かれる可能性がある。

 そして、直線状のパーツには飛び出し防止の仕組みも付けていない。俺が素早く退避しても、直線状のパーツがすごい速さで射出されてしまう。


「そっと戻すか……」


 歯車の機構を使って、弦を引くという目的は達成できたので、第1段階はこれで良しとしよう。そのままゆっくりと、力を抜かずに先ほどとは逆回転させていく。


「引くときよりキツいな」


 逆回転はさせるが、一気に回ってしまえば、うっかりやらかしたのと同じことになる。回ろうとするのを抑えつつ、しかし、少しずつ回っていくちょうどいい力加減が必要だ。

 そしてそれはぐっと力を入れていけばいいよりも、はるかに難しく、体力を削っていく。


「ふぅ、やれやれ。次はちゃんと考えないとな」


 ようやく戻し終えて、俺は軽く肩で息をしていた。今の作業自体は鍛冶でも生産でもない。だからだろう、あまりチートの手助けもなかったのだ。

 こんな大事な時期に大怪我をしてしまうかとヒヤヒヤしたが、ともあれ無事に確認を終えることができた。


「これで連射型のとっかかりもできたしな」


 連射型の機構は2つの方式を考えていた。1つはレバーを引くごとに矢の装填と弦を引くところまでをやってくれて、発射は引き金でやるもの。

 もう1つはぐるぐると歯車を回すと、連続して装填と発射を繰り返すもの。

 後者の方式でも一時的なストッパーを用意し、それが抜ければ発射されるようにすれば設置型として十分使える。

 そして、ぐるぐる連射の方式は、今作ったものの応用でできる……はずなのだ。矢の装填方法をどうするのかなどの問題は残っているが。


「さてさて、今日は逆回転防止まではやっちゃうか」

「親方、機嫌がいいですね」

「新しいのやるときはどうしてもな。今度、カミロに卸すものもなにか新しいのを考えるか」

「いいですね!」


 そう言って、俺とリケは笑い合うのだった。

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― 新着の感想 ―
連弩も1からつくるのか、凄いな。
今回の物に関しては素直に設計図でも買ったほうがよかったんじゃないかなぁ……とかおもったり?
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