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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第14章 秘密のインク編

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手持ち無沙汰

 別のところに帰るのだという丁稚さんにチップを渡し、


「それじゃあ、また明日も頼むな」


 と言うと、丁稚さんは満面の笑みで、


「はい! 勿論です!!」


 そう言って去って行く。その丁稚さんを微笑ましく見送りながら、番頭さんがやってきて、先導を始める。


「どうぞ、皆様にご滞在いただくのはこちらになります」


 案内して貰って俺たちが世話になる場所は、カミロの店のすぐ裏手にあった。

 2階建ての建物で、1階がリビング、2階が多数の寝室になっているらしい。

 元々名うての行商人であったカミロのところには、各地から客人が来ることもあるのだそうで、その時に使うものらしい。


「まあ、そう滅多にあることではないのですけれどね」


 そう言って笑う番頭さん。

 しかし、家具や床をチラッと見ただけでも手入れが行き届いていることが分かる。慌てて手入れをしたのでは、こうはならないだろう。

 普段から手入れをしてあるに違いない。そこに商人としての打算があるにしても、こういったことを普段からできる(カミロがやっていないにせよ)のは、なかなか凄いことだなと思う。


 うちの客間も、もう少し手入れの回数を増やそうかな。今のところ客が来てから整えてる感じだし。


 ともあれ、向こう2日ほどはここに滞在することになる。いつもであれば晩飯の準備やらなんやらでバタバタしているのだが、


「皆様はここでおくつろぎください。夕食の準備をしてまいりますので」


 そう番頭さんに凄みすら感じる笑顔で言われたのでは、俺たちも大人しく席について待っているしかない。

 そうして全員が着席したのを確認してから、番頭さんは居間を出て行った。


 俺はそこで大きくため息をつく。


「どうにも落ち着かないな」


 普段していることをしないというのは、こんなに落ち着かないものだっただろうか。

 魔物討伐の遠征の時も手持ち無沙汰ではあったが、ちょっとした作業で気を紛らわせることはできた。

 今はやることが全くない。あまりの落ち着かなさ加減に自分のワーカホリック具合を再認識して、思わず苦笑が漏れる。

 本来はこうしてのんびり暮らすのが目標だったはずなんだがな。


「こんな時くらい、ゆっくりしたほうがいいんじゃないの。ほんのちょっとの間なんだし」


 あまりにソワソワしている俺の様子を見かねたのか、そう言ったのは、アンネだった。第七皇女とは言え、帝室に属する彼女は今まで何かと忙しい日々を送っていた……らしい。


 それが突然〝黒の森〟で暮らすことになり、それまでと比べれば、すべきことがあるにせよ、かなりのんびりした生活を送ることになったわけで、そんな彼女にそう言われてしまっては俺も、


「そうだなぁ。なんだかんだ忙しかったし、明日もあるし、ご厚意に甘えることにするか」


 そう言って、だらりと姿勢を崩すしかなかった。


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― 新着の感想 ―
[一言]  異世界転生ものではすぐにスローライフ、スローライフて言うけど、ほんとにスローな日々のライフを送りたいのなら家業とか持っちゃダメだったねって思うけど、こんだけワーカホリックだと元々スローなラ…
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