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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第14章 秘密のインク編
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延びる

 サーミャとアンネが大鎚を振り下ろし、合間に俺も手鎚で少し形を整えたりする。

 リケとリディには今のところ待機して貰っていた。筋力的な部分や、叩くべき場所の勘所について考えると、サーミャとアンネ組に勝るとも劣らない実力はある。


 俺が鋼の加熱をし、そのたびにサーミャとアンネが大槌を振るう。

 それを何度か繰り返して、サーミャとアンネの額にハッキリと汗が滲み始めた頃、


「代わります!」


 リケが声をかけた。もちろん、俺と代わるわけではない。

 どちらの組もかなりスタミナがあるほうなのだが、それにも限界はある。

 サーミャとアンネが作業をした後に交代して貰うことで、連続して作業が可能なはずである。

 俺はこの世界に来るときになかなかの体力も貰えているし、直接手を出すタイミングは限られているから、その間もずっと作業はできる。


 かなり延びてきた鋼の一部が赤くなっている。鋼は板から棒に形状を変えつつあるが、もっと細くしないと、その先の作業ができない。


 ガキンガキンと、派手な音が鍛冶場に響く。いつもの場所ではないが、いつもの音には安心する感じを覚えた。


「よし、これくらいか」


 スムーズに作業は進んでいき、鋼の一部がかなり細くなった。ここからは俺の仕事だ。


「みんなはちょっと休んでてくれ」


 みんなから了解の声が返ってきた。彼女たちには手伝って欲しいことがまだある。それまでは休んでいてもらいたい。

 俺は鋼の細くなった部分を熱する。細いぶん、赤くなるのも早い。十分な熱を得た鋼を素早く取り出し、手にした鎚で連続して叩く。

 貰ったチートのおかげで、どこをどのように叩けば良いかは分かる。わずかばかり馴染まない鎚を手にしていても、いつもと同じように作業を進められている。


 細い部分の鋼は、針金といっていい形状と細さになる。次のステップに進んでも良いか、かざすように持ち上げてチェックする。


「あれだけで?」


 針金の状態を確認していた俺の耳に、ペトラさんの呟きが入ってきた。


「親方ですからねぇ」


 しみじみとリケが応える。


「こういうとき、親方は常に最短で作業をするんですよね。きっと鋼の声が聞こえてるんですよ」

「ああ、カレンさんもそんなことを言ってましたね」


 リケとペトラさんのそんな会話も聞こえてくるが、俺のはあくまでチートなので、申しわけない、と思うと同時に、目標にして貰えるならそれもありだな、とも思えるようになった。


 この世界に対してあまり影響を与えたくはないのだが、この世界の人々が何かを得て、自身で発展させてくれるなら、それを止めようとするのは、それはそれでおこがましいことなのかも、と思うのだ。

 でなければペトラさんがここにいることも断っていただろう。


 次は何をするのかと注目する2人の視線を受けながら、次の工程を進めるべく、新しい板金を手にとり、俺はそれを火床に突っ込んだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 先にアポ入れてくれればもっと少ない労力で魔力入りのチェインメイルが出来たのに…感ある
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