表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第14章 秘密のインク編
789/985

伯爵のオーダー

「お前にとっちゃ大した話じゃないかもしれん」

「聞いてみないことには分からんぞ」


 俺は苦笑した。前の世界でも「これなら数時間で終わるだろう」と踏んでいた作業が、いざやってみたら2~3日かかったことが何度でもある。


「今のところ、暗殺に失敗した原因がどうも指輪らしいとはバレてない」

「〝災厄除けの加護〟については、誰も口外してないからな」


 俺が応えると、カミロは頷いた。

 たしか、材質もおおっぴらにはされていなかったはずだ。特に隠しもしてはいないらしいが、情報を集めていなければ北方のものらしい紋様の入った金の指輪にしか見えないだろう。


「暗殺は2回実行されたが運の良いことに、1回目はたまたま身体を動かしたことで避けられて、2回目は暗殺者がなぜか武器を取り落として未遂に終わってるんだ。2回とも奥方が同席していないときだったらしいし」

「強力だなぁ、加護」

「そうだな。俺も欲しいくらいだよ」

「そりゃそうだ」


 フフッと笑みがこぼれる。〝災厄除けの加護〟は物理的に守ってくれるものではなく、偶然回避できるものらしい。病気なんかは知らず知らずのあいだに治ってる、とかなんだろうな。


「で、だ」


 カミロは居住まいを正した。俺も崩していた姿勢を正す。


「2回目までは〝たまたま〟運が良かったで済んだとして、次に回避したときに、それを相手が〝たまたま〟だと思ってくれると思うか?」

「それは厳しいだろうな」

「何かを持ってるかも、と思われたときに、指輪に目をつけられるわけにはいかない、というのが、伯爵閣下と俺の意見だ」

「俺も同意するよ」


 短期間で何度も狙ったとなれば失敗したときのリスクも上がっていく。恐らく次回に失敗すれば、しばらくは控えるだろう。

 1回目より2回目、2回目より3回目のほうが腕の良い暗殺者を使ってくることは明白だが、いずれも「運」だけで回避していれば、何かの介在を疑われる可能性も出てくる。

 何せ魔法が実在する世界だ。マジックアイテムも数は相当少ないが存在する……と、インストールの知識が教えてくれている。

 その知識は同時に伯爵くらいが持っていることはあまりない、という事実も教えてくれた。


 そして、その時に指輪に目をつけられたくない。材料が貴重なこともあるが、それ以上に妖精の加護を受けている品、なんてものに目をつけられたら、マリウスの気が休まるときはなくなってしまう。

 なんなら王家からもあれこれ言ってきかねないようなものだし。

 侯爵はどうだろうな。マリウスを息子のように可愛がっているから、取り上げたりはしなさそうだが、その辺の判断がシビアそうでもあるからなぁ。


「そこでお前さんには、それっぽいだけでいいから、次は『これを身に着けていたから大丈夫だった』と言えるようなものを作ってほしいんだ」

「なるほど。だとすると……装飾品か?」

「いや、それだとそれこそ王家に召し上げられたあと、何か起きるとまずいからな」

「ああ、そうか。となると……」


 それ自身になんらかの効果を持たせないといけないわけだ。

 そして、一見して普通でなくてはいけない。できれば、


「実は今までもこれを身に着けていたのだ」


 と言えるようなものが望ましいが、


「2回も襲われたので、流石に今回は備えました」


 とは言えるので、ここはあまり気にしなくても良さそうだ。

 家に戻ればアダマンタイトにヒヒイロカネが残っているはずだが、今回はそれも無しで、鋼でやるしかない。

 魔力については都で作業をしたときと同じようにナイフを混ぜ込めばなんとかなるとして……。


「ごく薄い鎖帷子かなぁ……」


 俺はボソリとそう呟く。その瞬間、俺からは見えないにもかかわらず、リケの目がキラキラと輝き始めるのがなぜだか分かったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=509229605&sツギクルバナー
― 新着の感想 ―
事前に知ってれば魔力入りの板金準備できたのにね。まぁカミロはその秘密を知らないだろうから仕方ないか
[一言] 鍛治仕事頼むんなら、先に言っておけば事前に材料を用意できたんじゃないかなあ?w
[一言] 鎖帷子……めっちゃ細かくて大変な作業になるぞぉ…………
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ