表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第13章 〝黒の森〟探検隊編
758/985

生まれ変わる

 簡易火床で熱された鋼の塊はまた赤く身を染めていく。塊になって来た元両手剣は、剣であった頃とは違い、外部と内部の温度差が大きく、当然、外側の温度だけ上がっても思った通りの加工はできない。


 今の資材が限りある状況の場合、加熱は必要な最低限度だけにしたい。

 普通ならその見極めはとても困難な話だが、幸いにしてチートの手助けがある俺にはたやすいとまではいかなくとも、かなりの精度で見極めることが可能である……少なくともそのはずだ。


 剣や板金であればとっくに加工できるだけの時間が過ぎているが、チートの感覚はゴーサインを出さない。

 真冬であれば少しありがたいまであるかも知れない高温だが、もう冬も過ぎて春になるこの時期ではかなり厳しいものがある。夏には遠いにもかかわらず、俺の額からは汗がしたたり落ちる。


「リディもすまないな」


 俺は額の汗を手で拭って言った。送風口は簡易火床から少し離してあるがほど近い場所で意識を集中させているリディも、かなり暑い中それをこなしているはずだ。

 リディは首を横に振った。


「いえ、エイゾウさんのほうが大変でしょうし、それに……」

「それに?」

「森を守るためですからね。エルフとしても見過ごせません」


 そう言って、リディは笑う。普段はあまりエルフであることをアピールしない彼女が口に出したということは、わざとそうしたんだろうなぁ。

 つまりは「あまり気に病まないように」ってことだと思う。それを確認してしまうのは野暮もいいところだし、すまないを重ねるのもよろしくなさそうなので、


「ありがとうな」

「いいえ」


 短く感謝の言葉を述べることにした。


 額の汗を拭いつつ待っていると、「その時」はやってきた。ヘレンとアンネが持ってきてくれた石。それを使って加工する残り3回のうち1回で形が少し見えてくるところまでは持っていきたい。

 魔力をこめるのは形ができてからでも遅くないから、ここはスピード勝負だ。

 チートによって与えられた感覚が「今取り出せ」と教えてくれる。


「よし、いいぞ!」

「はい!」


 かけ声でリディが〝送風〟を止めた。赤熱を少し通り越した元両手剣を簡易火床から素早く取り出し、金床代わりの石の上に置いたら、素早く叩く。

 チートによる手助けで、どこをどれくらいの力で叩けばいいかが分かる。

 俺が無心でその通りに鎚を振るうと、赤熱した塊はその形をややダイナミックに変えていく。

 ほんの僅かも迷っている暇はない。できる限りの速度で、俺は鎚を振るっていく。


 このとき完全に集中していて、当の俺には全く覚えがないのだが、後にラティファさん曰く、


「凄い音がメチャクチャ連続して聞こえて何事かと思いましたぁ……」


 だそうである。そんなに凄い音だったのかをリディに確認すると、


「集中を切らしてしまうのはどう考えてもまずいと思いましたので。それに割と〝いつも〟の話ですし……」


 とのことだったので、リディも変な毒されかたをしてしまっているように思う。


 さておき、そんなことを思われているとはつゆ知らずの俺は一心不乱に鎚を振り続け、元両手剣は鋼の塊から、その姿を斧に近いものへと変えていく。

 さて、いよいよこいつを生まれ変わらせるときがやってきたようだ。

9/27に日森よしの先生によるコミック4巻が発売になりました!

発売直後から大変好評を戴いております。この物語の重要ポイントの一つと言っても過言ではないシーンもありますので、どうぞお求めいただければと思います!

https://www.kadokawa.co.jp/product/322305000892/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=509229605&sツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ