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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第13章 〝黒の森〟探検隊編
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打ち始める

「そろそろだな」


 じっとアンネの両手剣が赤くその身を染めていくのを眺めていた俺はそう独りごちた。

 用意しておいた鎚と、ちょっとした歪みを取る時でも使う可能性を考えて持ってきていたヤットコを構える。


「よし、いいぞ!」

「はい!」


 ゴウゴウと音を立てて炎を巻き上げる音に負けない声を俺は張り上げ、リディが送風を止める。今の作業ではほぼ無尽蔵と言っていい〝黒の森〟の魔力を使えるが、消耗は僅かでも抑えた方がいいだろう。

 両手剣を簡易の火床から取り出すと、赤々と輝いていた。それを、鎚を使って表面をならした石の上に両手剣を据える。


 ガキョン!


 勢いよく鎚を赤熱した両手剣に振り下ろすと、いつもとは違う音と手応えがした。


「当たり前だけど、いつもどおりとはいかないか」


 それでも可能な限りはチートが手伝ってくれていて、スムーズさはないものの、加工自体はできている。

 聞こえるものといえば、鳥のさえずりくらいだった森の中に、大きな金属音が響き渡る。

 大抵の動物なら、この音で逃げるだろうな。好奇心旺盛な動物や獣人がいたら、逆に近寄ってくるかも知れないが。


 何度も叩いて両手剣を半分ほどで折り返すようにしていると、赤かった両手剣はその色を失っていく。そろそろ加工できなくなる頃か。

 叩きはじめと比べれば、かなりコンパクトにまとまってきたな。

 それでも、まだまだ序の口で、日が落ちるまでに終われるかどうか、チートありでも良くてギリギリと言ったところだろう。


「すまないが、また頼む」

「もちろん。任せてください」


 簡易火床にすっかりくすみ色になってしまった両手剣を入れ、被せるように均一な大きさに揃えた炭を追加する。

 その間にリディが〝送風〟を再開してくれて、まだ火が残っていた炭たちが息を吹き返し、まだ火のついていない炭をたたき起こそうと炎が包み込んでいく。

 もう既に元両手剣になってしまったものが再び赤熱するまでにはまだ時間がある。俺はリディに断ってから、金床がわりに使った石を確認する。


 それなりに熱も衝撃も伝わったはずだが、とりあえず大きく割れていて次は使えないということはなさそうだ。多少は衝撃が分散されたかな。

 ただ、さすがに無傷というわけではなく一部に小さなヒビは入っている。叩き続ければいずれここから割れていくだろう。

 ハンマーで殴り続けても全く割れない石なんてものがあったら、うちの壁に使えそうだが、そもそも切り出しや加工ができないだろうなぁ。


 じっくりとヒビの様子を見ていると、チートの感覚が「もってあと3回」と告げてきた。

 どうやら、これで鍛冶作業をしたことで鍛冶のチートの範囲と見なされたらしい。毎回いつ壊れるかとおっかなびっくり作業するのも精神的にはよろしくないので、いつまでなら大丈夫そうかわかるのはありがたい。


 だが、逆に言えばあと3回しか、この石で作業は出来ないということだ。全ての石であと3回ずつ作業できたとして、リケとクルルが持ってきてくれるであろうものを含めて16回か。

 多分、ギリギリで間に合うとは思うが……。どこかのタイミングで、どれくらいで完了しそうか見極める必要があるな。

 

 そして、再び火床の様子を見に行こうとすると、ラティファさんがパタパタとやってくる。

 木の魔物に変化でもあったかと思い、一瞬身構えたが、取りあえずの定時報告だったようである。


「ウネウネはしてますけど、それ以上のことはないです」

「わかりました。まぁ、あんまり安心は出来ないですから、なるべく急ぐようにはしますよ」

「はいー。凄い音でしたねぇ。耳とか大丈夫なんですか?」


 わりと切羽詰まる状況のはずだが、ラティファさんはどこかのんびりした声でそう言った。

 俺はニッコリ……いや、ニヤリと笑って答えた。


「お気遣いなく。仕事ですから」

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