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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第13章 〝黒の森〟探検隊編
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魔法

 預かったアンネの両手剣から、柄に巻いた革紐など金属でできていない部分を外す。

 柄の革紐は斧を作った時に、持ち手に巻き付けるために取っておく。

 いつもなら使用回数はともかく、握ったりしたことがあるものは傷んでいる可能性も考えて新しいのに交換するし、いざというときのために革紐もいくらか準備はしているのだが、今回はリサイクルでエコ……前の世界で最後に聞いたのはSDGsだったか? とにかく、再利用することにした。

 もちろん、使えるかどうかチェックしたうえで、だが。


 鎚を使って鍔などの付属品を外し、一本の鉄の棒のようになった両手剣を火床に入れる。それを見て、リディが風を強めた。


「大丈夫か?」

「ええ、これくらいならなんとも。この森は魔力が多いですから」

「キツくなったらすぐに言えよ」

「はい。ありがとうございます」


 前に少しだけ魔法の手ほどきを受けたときにリディが言っていたが、魔法を発動させるだけなら、さほど魔力は必要ないらしい。

 なので、俺がいつもの作業で使うくらいなら、街や都のような魔力が相当薄い場所でも問題なく発動はできる。


 だが、それを維持するとなると、相応の魔力が必要になってくる。

 なので、例えば都で魔法が使える者はそれなりにいるだろうが、自在に操れるかというと怪しいのだそうだ。


「例外的に魔力の扱いに長けている人はいます」


 その時、リディが言っていたことだ。


「なので、都でも魔法の維持ができる人はいるでしょう。ただ、例えば炎の魔法が使えて、それを鍛冶が出来るほどに維持できるかと言うと……」

「難しい?」

「おそらくは。それも超える、大魔法使いと呼ばれる人もそのうち現れるでしょうが」

「そんな人が鍛冶仕事の手伝いなんてことはしないよなぁ」

「そうですね」


 たぶん、戦にも出てこないだろう。万が一にでも死なれると貴重な才能を持った人間が失われてしまうしなぁ。

 維持が出来ないとなると魔法が使える場面は限られる。

 限られるがとても便利だというわけで、時間と金に余裕がある一部の貴族子女が魔法を修めて、家でちょっとした役に立つといった場面が多いらしい。

 エイムール家の領地がもう少し狭くて、街を治めていなければマリウスも魔法を習っていたかも知れない。

 そうならなかったから俺は知り合えたので、マリウスがもし魔法を使えるようになりたかったんなら、彼には悪いが俺としてはエイムール家が街を治めていてくれてありがたい。


 ともあれ、魔法のエキスパートであるリディの手助けを受けて、両手剣はその形を変えるべく、温度を上げていく。

 銀だった身体を黒へ、そして赤く輝かせていく。まだ、その姿を変えさせるには早い。

 じっと両手剣を生まれ変わらせるタイミングを見計らっている俺の耳に、聞き慣れた声が届いた。


「おーい、持ってきたぞ!」


 サーミャの声だ。振り返ると、彼女と一緒に石を運んできたのは、ルーシーだった。

 石を2人で引きずっていて、ルーシーの協力はささやかだが、それでも幾ばくかの力添えにはなっているらしく、そこそこの大きさのものを持ってきている。


「ワンワン!」


 石を引っ張っていたロープを口から離すと、ルーシーが俺に駆け寄ってくる。


「おう、よしよし、エラいエラい」


 俺は「おいおい、そんなに大きくなくてもいいんだぞ」と言おうとしたのを引っ込めて、ブンブンと尻尾を振るルーシーの頭をなで回してやるのだった。

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