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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第12章 オリハルコンのナイフ編
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夕食の時間

 マリウスの惚気話と土産話、そして世間話――その中には〝金色牙の猪亭〟の面々や、カレンの動向も含まれるが――を聞いていると、ドアがノックされた。


「どうぞ」


 とマリウスが応えると、扉が開き、ボーマンさんが姿を見せる。


「お食事の用意が調いました。奥様と皆様も既にお揃いです」

「そうか」


 そう言ってマリウスは俺を見る。俺は頷いて立ち上がると、マリウスも席を立った。

 俺はいつもの癖で一瞬飲んでいた茶のカップを片付けそうになったが、今日はそれをする必要がないことにすぐに気づいて、居住まいをただす。

 それを見なかった振り(だろう、多分)をして、ボーマンさんが俺たちを先導してくれる。

 部屋を出て、外をふと見ればもう日は沈んでいて、廊下をランプの灯りが照らしている。嫌な臭いがしないのは、燃やしているのが獣脂ではなく、植物油だからだろう。


 俺がこの時間までいるのはマリウスが家督を継いだお祝いの時以来だったか。

 あの時はこっちの生活にも慣れきってない時だったし、こうしてのんびり歩いて観察するなんてことも考えられなかったなぁ。

 そして、よくよく見れば、ランプの油皿は石壁に据え付けられた金属の輪っかに置かれている。

 輪っかの太さから見て、いざという時には松明も使えるようになっているようだ。

 松明を使うと派手に煤がついたり、炎が大きくて延焼の危険が高かったりと貴族の館、それも屋内で使うようなものではあまりないのだが、「そうも言っていられないとき」に備えてあるのだろう。

 武で名を上げた家らしいと言えばらしいように思えるが、やりすぎではないのかという気もしてくる。

 そういえば、この屋敷の裏口は侵入者を撃退するようなつくりになっていたな。そんな家でやりすぎも何もないか。


 やがて、ボーマンさんは俺がほんの少しだけ見覚えのある扉を開いた。確かあの向こうはダイニングになっていたはずだ。

 ボーマンさん、マリウスの後について入ると、俺の予想に違わず料理が並んだテーブルがあった。そして、女性陣は既に席に着いている。


「待たせたかな」

「いえ、私たちも先ほど来たところよ」


 マリウスの言葉に返事をしたのは奥さんのジュリーさんだ。以前に見たときとは違って、かなりラフな格好をしている。

 まぁ、前は婚礼だったから当たり前だし、俺たちは今いつもの格好なので、どうしたってかしこまった場にはならないのだが。


 そんなわけで、テーブルの上の料理も祝宴の時とは違い、いつも食べているのだろうスープやパン(ちょっと奮発したのか発酵種を使ったもの)に、鶏らしき肉を焼いて塩胡椒、といった感じのものだ。

 ほほう、と俺がテーブルの上を眺めていると、マリウスが少し苦笑しながら言った。


「魚はなかなか用意できなくてね」

「ああいや、特に魚だけ食べてるわけじゃない。というか、うちも普段は猪か鹿の肉だ」

「そうなのか」


 俺の言葉にマリウスは片眉をあげて、俺は頷いた。

 こっちの世界でも北方は大きく海に面している地域がある……らしい。そんなわけで前の世界の日本人よろしく「北方人は魚が大好きだ」という認識を持つ人が多いようだ。

 さすがにこっちの世界では生魚を口にすることはそうそう無いようだが、いずれ新鮮な海魚が手に入るようなら、刺身ができないかは試してみたいところだな。

 それは相当海の近くまで行ったときになるだろうが。


「さて、お嬢さん方の腹も減っているだろうし、早速いただいてもいいか?」

「もちろん」


 俺とマリウスは席に着きながら、そう言って笑い合った。

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