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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第12章 オリハルコンのナイフ編
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竜の宴

 パチパチと、拍手が暗闇の森に響く。ヘレンが綺麗なお辞儀をして、拍手の音が一層大きくなった。


「切れるからって戦に持ち出すと痛い目に遭うだろうな、これ」


 しげしげと〝神竜の爪〟を眺めながらヘレンが言った。俺としてはそのように作ったので、狙い通りなのはありがたい。だが、


「あれを見た後じゃいまいち説得力がない」


 とサーミャがボソッと言って、俺たちは深く頷いた。

 それを見たヘレンが僅かに頬を膨らませ、わざとらしく舌打ちをした。

 もちろん、本気で怒っているわけではない。その証拠に彼女はすぐに破顔一笑する。


「まぁ、ヘレンが使いにくいって言うんだから、相当ってことなんだろ」

「もちろん。アタイが保証するよ」

「なら安心だ」


 俺が言うと、ヘレンは再び笑い、腰を落としながら恭しく〝神竜の爪〟を差し出す。

 それを俺も丁寧に受け取り、再びテラスのテーブルの真ん中へ安置すると、キラリと虹色に光を反射させる。

 神々しさと言えそうなそれは、今日の宴会の主賓としては全くもって申し分ないものだ。


 俺たちは誰からともなく、テーブルの上の杯を手にする。


「よし、それじゃあお待ちかねの……」

「乾杯!」

『かんぱーい!!』


 俺が言うより先に、ディアナが抜け駆けをし、皆笑顔で杯を高く掲げると、互いに打ち合わせる。

 ガラスではないので、木のポコポコとした音と、それに合わせたのかクルルとルーシーのはしゃぐ声が夜の森の音に加わった。


 宴会と言っても、森の中の一軒家で、このところ街にも出ていないとなれば出来ることは限られる。

 それでも、前の世界風のタレで味付けした焼き鳥や猪の生姜焼き、それに鹿のワイン煮、それにいつもより少しスパイスを多めに(量も種類もだ)きかせたスープと、それなりに手の込んだもので、お祝いには充分だろう。

 一応、家族の皆には評判だったので、俺はホッと胸をなで下ろした。


「後はこれを納品したら終わりなんですよね?」


 既に4杯目だったか5杯目だったかの火酒を豪快に呷りながらリケが言った。

 俺はチビリとワインを舐めるように飲んで頷く。


「そうだな。大変だったけど、実りも多い作業だった」


 一番大きな収穫はもちろんオリハルコンの加工法を知れたことだ。なにせオリハルコンである。そう滅多にできる作業ではない。

 多少の試行錯誤は今後も続いていくだろうが、基本的な加工法で悩むことがなくなったわけだ。

 これで勇者でも魔王でもドンと来い、というのは少し言いすぎかも知れないが。


「親方のところにいると、色々新しい経験が出来ますねぇ」


 のほほんとした声色で言うリケ。俺は少し苦笑しながら返す。


「さすがにオリハルコンで打ち止めかも知れんぞ」

「でもまだヒヒイロカネや、アダマンタイトの加工もありますよね」

「ああ……」


 俺はここからでは見えない、鍛冶場の神棚のほうへ目をやった。鎮座し赤く輝く2つの貴重な鉱石が見えるような気がする。

 さすがにオリハルコンより面倒な事は無いと思いたいが、なにせ伝説と言える鉱石の一角だ。なにがあってもおかしくないと思っておくべきだろう。


「そこまで出来るようになったら、加工できない素材がないドワーフになるな」


 俺が言うと、リケは一瞬キョトンとしたが、すぐに満面の笑みを浮かべて言った。


「いいですねぇ、それ。そこを目指しましょうかね」






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― 新着の感想 ―
[一言]  でも、ここを出て自分ちの工房に戻ったら、どっかで火の精霊と仲良くなって手伝ってでも貰わない限り、オリハルコンの加工はできないよね……。 まあその時だけここに戻ってきて打たせて貰うってやり方…
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