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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第12章 オリハルコンのナイフ編

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6巻発売特別編「一日最初の“仕事”」

今回は6巻発売記念の特別編となっております。

この内容は本編には直接影響しませんので、ご承知おきください。


ふわふわと、なんだか気分が良かった。たとえて言うならぬるま湯に浸かっているような。この状態がどういうものかはなんとなくわかる。

 俺は今、完全に寝ている。なぜだかそれが客観的に意識できた。この状態なら普通はもうすぐ目が覚める頃合いのはずだが、今のところそんな気配が全くなく、それがなんだか引っかかる。


「お父さん」


 そう呼ばれると同時に、ゆさゆさと身体が揺さぶられる。この声には聞き覚えがあった。

 俺はゆっくりと目を開ける。目の前には思った通りの少女の顔が、満面の笑みを浮かべていた。


「ルーシー」

「えへへ」


 一層の笑みを浮かべたその黒髪の頭を、俺は寝転んだまま手を伸ばして撫でてやる。昔は寝転んでいても楽に頭が手が届いたものだが、今は少し厳しい。顔も幾分大人びてきた。子の成長は早いものだな……。


「よし、起きるか」

「クルルお姉ちゃんとハヤテお姉ちゃんも待ってるよ」

「わかった。すぐ行くから外で待ってな」

「はぁい」


 ルーシーはパタパタと小走りに部屋を出て行った。扉が開けっぱなしだ。俺は苦笑して身体を起こす。

 その開けた扉から、ヒョイと別の顔が覗いた。肩の辺りで切りそろえられた銀髪に緑の瞳。リディだ。大抵はリケが早起きなのだが、今日はリディも早かったらしい。


「やっぱりルーシーちゃんでしたか」

「うん。開けっぱなしで行っちゃったや。まぁ、すぐ出るから良いんだけど」

「大きくなっても、やんちゃなのは変わらないですね」


 そう言ってリディはクスリと笑う。ルーシーの髪は黒だが、やや灰色がかってもいるので本当に親子みたいな感じがする。

 ルーシーは時々「リディお母さんと畑に行った」話を嬉しそうにすることがあるから、余計にそう思うのかも知れないな。


 パパッと手早く出かける準備……と言っても上着を羽織って靴を履き、髪をざっと纏めるだけだが、それを済ませて部屋を出る。


「肩に木くずがついてます」


 パタパタと俺の肩をリディが払ってくれた。


「ありがとう。昨日に鞘作ったのがまだついてたかな。じゃあ、行ってくるよ」

「はい。いってらっしゃい」


 今度はパタパタとリディが手を振る。「お母さん」に見送られて、俺は家を出た。


「お父ちゃん遅い!」


 家を出るなり、俺は緑の短髪の少女――クルル――にドヤされた。今にも走り出しそうに足踏みをしている。傍らには水瓶が用意されていた。


「クルル、あまり父上に無理を言うものでは無いですよ」


 そう言ったのは黒くて長い髪のリザードマン、ハヤテだ。クルルよりも年上なので、うちでは年長のお姉さんとして振る舞っている。


「今日はちょっと寝坊だったかも知れんなぁ」

「父上は昨日まで大仕事をこなしておられたのですから、仕方ありません」


 そう言えば何か大変な仕事をこなしたような気がするな。鞘もそれで作ったんだっけか。爆睡したのもそれで疲れてベッドに倒れ込んだ……ような記憶がある気がするな。


「一緒に水汲みに行くのも3~4日ぶりになるか」

「その間はお母ちゃんと行ってた!」


 大仕事の間の水汲みはアンネにも頼んでいた。力という点では彼女がかなり上位に位置するからだ。

 実際、仕事の合間にはクルルが興奮気味に「アンネお母ちゃんが凄かった」話をしていた。アンネお母ちゃんは複雑な表情でそれを聞いていたが。


「よし、じゃあ行こうか」


 めいめい1つずつ水瓶を持つ。クルルやルーシーはまだ身体が小さいのに軽々と頭の上に水瓶を乗せて、トテトテ歩き出した。

 その後ろから、俺とハヤテがゆっくりとついていく。さあ、これから朝の一仕事だ。


 クルルとルーシーの足取りは危なげない。完全に「勝手知ったる」だな。小さい頃から手伝ってくれてたから、目を瞑っても余裕で湖まで辿り着けるかも知れない。

 ……うっかりそれを言うと本当にやろうとするだろうから言わないけど。


「カレンとアラシはまだ北方から戻ってこないんだっけか」

「一昨日にあともう少し滞在すると文があったばかりですよ」

「そうだっけ」

「そうですよ」


 カレンもアラシもリザードマンだ。一見して姉妹であるかのように見えるが、実は血縁ではなかった。アラシとハヤテが似てるなぁと思っていたら、そっちは実の双子であったが。

 彼女達は都合でこちらを離れて、北方に帰っていた。すぐ帰る、と言っていたように思うのだが、少し遅れるらしい。


「父上は本当に家族想いなのですね」

「そうかな」

「そうですよ」


 そう言って、クスクスとハヤテは笑った。半分は照れ隠しに空を見上げる。木々に阻まれながらも、抜けるような青い空がそこに広がっている。

 ”いつも”の朝がそこにある、と俺には思えた。――少しの違和感を同時に抱きながら。

5/9に最新6巻が発売になりました。既に在庫の少ない書店様などもあるようですので、どうぞお早めにお求めください。

https://kadokawabooks.jp/product/kajiyadehajimeruisekai/322201000227.html

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― 新着の感想 ―
[良い点] この特別篇シリーズはかなり好きです。 どの程度好きかと言えば、肩のHPを減らす援軍に加わるくらい好きです。 [気になる点] ルーシーって父上じゃなかった? ハヤテが加わったから呼び方が変わ…
[一言] 第6巻発売おめでとうございます
[良い点] 待ちに待った特別編!やっぱりかわいい娘たち 家族で温泉に行く回も見てみたいです [一言] 6巻発売おめでとうございます 「援助」を断るシーンは改めて読んでも面白かったです マリウスもこの頃…
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