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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第12章 オリハルコンのナイフ編
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スリング

「アレは結構キツいからな」


 革を細く割いた紐を編んでいたヘレンが肩をすくめた。この中でリアルに投石の恐ろしさを知っているのは彼女だけだ。戦闘経験は魔物退治で皆あるのだが、軍同士が戦う戦場へ赴いたことがあるのはヘレンだけのはずだ。


 あと可能性があるのはアンネくらいだろう。うちはリケを除いて皆強いから忘れそうになるが、元々“お姫様”らしからぬ強さだった。

 それなら、前線に赴いて鼓舞するとかそういうくらいのことはあったかも知れない。だが、干戈を交えるところまではしてなさそうではある。万が一があったらえらいことだからな。


「やっぱりそうか」


 俺が言うと、ヘレンは頷いた。


「弓もそうだけど、それ以上に数が飛んでくるからな。ここの皆だったらその全部が無視できないし、ましてやそれがスリングで飛んでくるんだろ?」

「そうだな」

「食らう側には回りたくないな」


 うへぇと舌を出すヘレン。そう、今回はスリングを作るのだ。

 形状を簡単に言えば石を挟む部分もしくは石を置くカップの部分があり、その両端から紐が伸びているだけである。

 伸びている紐の片方を手首などに結わえて石をセットし、もう片方を握りこんで振り回してスピードが出たら離すと石が飛んでいく、という仕組み……というかなんというか、まぁ、そういうものである。


 そんなわけで、皆鍛冶場に集まっているが、単に広い作業場がここなだけで、今日は特に火を使わない。

 別にマリベルのことを意識したつもりではないのだが、シンとしているのがなんだか彼女の不在を意識させるようでもある。

 今はサーミャとリディがなめしておいてくれた革を細く割いたものを、皆で編んでそれぞれ紐にしているところだ。自分の身体にも合わせられるし。


 作るのが一番上手なのは、やはりリケだった。器用にスイスイと紐を編み上げていく。前の世界でミサンガとか、パラコードブレスレットとか編むの上手な人がいたけど、そんな感じにも見える。


「こっちだとリケに敵わないなぁ」

「そうですか?」


 俺もチートのおかげで決して下手な出来ではないのだが、いかんせん鍛冶のほうではなく生産のほうの故か出来映えは数段落ちる。俺のは編み目がリケのと比してかなり不揃いである。

 リケの次に上手だったのはヘレンだった。意外と、と言うと彼女に怒られそうだが手先が器用なのだ。そのうち鍛冶仕事で細かいのも任せてみようかな。勿論、ヘレンが嫌でなければだが。

 リディも上手で、彼女だけ微妙に編み方が違うらしく、編み目で綺麗な模様が出来ていた。リケとは違う上手さなので実際のところは比較しにくいところではある。


 サーミャ、ディアナ、アンネも下手なわけではない。サーミャもディアナもそつなくこなしている。アンネだけが手が大きい不利もあってか、やや大雑把なようだが彼女が自分で使うことを考えれば十分問題の無い範疇だろう。


 今回は携帯性を考えて、カップの付いたものではなく、中心部分にやはり革で石を包む部分を取り付けることにした。


「それ、大きくない?」


 ディアナが指さしたのはヘレンのものである。ディアナが言うとおり、他の皆のものよりも石を包むところが1.5倍くらい大きい。


「アタイはこれくらいでいいんだよ」

「まぁ、力あるしなぁ……」


 純粋な出力で言えばリケとサーミャ、そしてアンネがかなりのものなのだが、上手く力を使う事に関してはやはりヘレンに一日の長がある。

 運動エネルギーは重さにも比例してくるから、大きな石を投げることが出来るなら、そっちのほうが良いという考えだろうな。


 こうして思い思いに出来上がったスリングを手に回してみる。当然石をセットしてないので上手く回せないが、そんな状態でほどけてしまうということもないようだ。


「よし、それじゃ試すか」


 バラバラと了解の返事が返ってきて、俺たちはスリングを手に表に出るのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] スリングはそこそこ強いけど射程の短さという欠点もあるので集団戦ではあまり向かないかと思われますがどうなんでしょうね。 いっそ鉄球のスリングショットを開発すれば鉄の鎧もへこませる凶器になると思…
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