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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第12章 オリハルコンのナイフ編
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テーブルマナーの初歩の初歩

 さて、カトラリーは作った。あとは器だな。

 普段俺たちは木製の器を使っている。マグカップのようなものは金属でも良いのかも知れないが、この森の木は硬い割に加工性もよい。

 俺が本気で魔力をこめれば相当に頑丈な鉄製のマグカップが出来る――それこそちょっとしたハンマーにできるくらいのものが――のだろうが、「森の中の家」ということもあるし、ここへ来たときに用意されていたのも木製だったので、追加を作るときも木で作っていたのだ。


 となれば、マリベルのものだけ違う材質というわけにもいかないだろう。妖精族の人が来たとき用のも用意しよう。

 鍛冶ではないので、そちらのチートの手助けはない。その代わりに生産のほうのチートが手を貸してくれそうだ。


 なるべく綺麗で乾いた木材を見つくろい、普段は鞘の加工に使っている工具と、自分のナイフを駆使して、皿と椀、カップの形を作っていく。カトラリーほど小さくなくていいのが助かる。


 皆がカンカンと鉄を叩く音を響かせる中、俺は1人シャッシャッと異質な音を立てている。

 その音をさせながら、小さな皿が出来上がった。子狼の頃のルーシーならさぞかし喜んだことだろうが、今の彼女にはやや小さい。

 同じようにして椀とカップも木を削り出して作る。うちの強化されている工具と、質の良い“黒の森”の木材、それにチートの手助けが合わさってスイスイと加工できるが、普通ならこうはいくまい。カップ1つでもかなりの時間がかかってしまうはずだ。


 日の暮れる頃、俺は小さな木製食器に植物油を塗りおえた。これらは乾くまで少々時間がかかる。晩飯には間に合うまい。


「ええ~~」


 出来上がった器を喜んでいたマリベルだったが、今日の夕食では使えないと知ると、露骨にガッカリした。


「まぁ、明日の朝飯には間に合うだろ」


 暑く乾燥している鍛冶場も、これから火を落とし、外の寒さもあってすぐに冷えていくとは言え、しばらくは暑さも残ったままである。冬場であっても乾燥時間は短くて済むはずだ。

 俺がそう言うと、


「やったー!」


 マリベルは鍛冶場の中を文字通り飛び回る。その様子に、家族から笑みがこぼれる。

 うちの末の娘は、俺たちが鍛冶場の片付けをしている間、楽しそうに並んだ食器を眺めていた。


 翌朝、食卓にキラキラと目を輝かせたマリベルが座っていた。目の前には小さなカトラリー一式と木製の器と、そこに盛られた料理。

 そんなマリベルの両隣にはディアナとアンネ。最初は厳しく教えるつもりはないらしい。


「はじめから剣を上手く振れる人はいない」


 とはディアナの言葉だが、そこで剣を持ち出すのがディアナらしいというか何というか。

 今朝のメニューは切って焼いた肉とスープに無発酵パンのスタンダードな我が家の食事だから、基本は肉をフォークで、スープはスプーン。無発酵パンは手で食べる。


 なので行儀作法などはあまりない、と言っていい。そもそも持ち方もうまく出来てないのだ。ぐっと握るようにスプーンを持つ手を、ディアナが優しくなおし、どう運べば上手に口に入れられるかをアンネが教えている。

 伯爵令嬢と皇女殿下揃い踏みでのテーブルマナー初歩の初歩である。若干スプーンの持ち方が怪しかったサーミャも、2人の教える内容を聞きながらほほうと感心しているし、ヘレンも持ち方はともかく「今は出来なくてもいいから、こう食べましょうね」といった内容を横からではあるが真剣に聞いている。


 俺はと言うと、そのうち待っているかも知れないスパルタ教育に備えて、予習のためにある意味サーミャやヘレン以上に、真剣に聞きいるのだった。

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