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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第12章 オリハルコンのナイフ編
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警戒網

 俺はいくつか鳴子を作り終わるとリディ達に引き渡す。ディアナが振ると、鳴子は軽快な音を立てた。しんと静まりかえっている――厳密にはうちの家族がはしゃぐ声が聞こえているが――“黒の森”に思いの外大きく響く。


「これなら鍛冶場で作業してても誰か気がつくかもなぁ」

「そうね」


 ディアナがそう言った。リディも頷いている。ちなみにエルフのリディは耳が長いが特段音が良く聞こえるとかではないらしい。人間(とドワーフと巨人族)と比べれば多少は聞こえるそうだが。

 うちで一番耳が良いのは獣人のサーミャである。狩りの時もその聴力で獲物を見つけたことがあるらしい。

 さておき、これだけ響けば引っかかった者に自分がドジを踏んだであろうことを知らせるには十分だろう。                                                                              


「よし、それじゃここは頼んだ」

「うん、分かった」


 ディアナが頷く。俺は他の警報の位置を確かめるべく、その場を離れた。


「ふっふっふ」


 ヘレンが不敵に笑っている。うちに来てから機嫌の悪いところをあまり見てないが、今日は特に機嫌が良さそうである。

 罠を仕掛ける、というのが久方ぶりで嬉しいとかだろうか。彼女が見る先を俺も見てみると、かなり目立つように縄が張ってある。慣れていない素人でもすぐに分かりそうな張り方だ。

 ヘレンがうっかり目立つように張ってしまったとも思えない。とすると、あり得そうなのは……


「ダミーか?」


 俺は近寄ってそっと手を出した。特に止めてこないので、そのままグイッと縄を掴んでみると、カランコロンと高らかに音が鳴る。


「よしよし」


 振り返ると満足そうなヘレンがアンネとハイタッチをしていた。文化としてそういうものがある、というよりは感情がそう動いた結果っぽいな。

 それを少し微笑ましく思いつつ、ダミーと見せかけて本物とはやるな……と感心しながらふと見ると、下生えに隠れているところに別の縄があるのに気がついた。

 そっちも掴むと、やはりカランコロンと鳴子が鳴った。それと同時に、ダミーだと思っていた縄が少し揺れる。


「ははあ、繋いだのか」

「ご名答」


 縄はダミーを乗り越えても引っかかるような、絶妙な位置にも仕掛けてある。

 そもそもダミーと思えるものであっても、鳴子が鳴るものが1本でも含まれていれば、全てについて警戒せねばならない。

 それで警戒して乗り越えようとすれば、そこにも仕掛けてあるというわけだ。

 流石プロと言うべきか。短時間なのに罠のお手本みたいな仕掛け方をしているのだ。


「流石だな」


 ヘレンはそう言った俺の言葉を聞いて、ニンマリと笑う。そのヘレンの後ろでは、金槌を持ったアンネがどうだと言わんばかりに腕を組んで立っている。

 俺はその2人の肩を叩いて、リケとサーミャのいるほうへ向かった。


「おお、これはまた……」


 発想としてはサーミャたちもヘレンたちに似たところに至ったらしい。こちらは視線を誘導しておいて、その死角になるようなところに仕掛けてあった。

 俺はまんまと引っかかり、カランコロンと派手な音を聞く羽目になったのだ。

 それも1つに引っかかってそれから離れるように動けば次のに引っかかる、といった具合で律儀にほとんど片っ端から引っかかってしまったが、位置は良く確認できたので結果オーライということにしておきたい。


「こりゃまた凝ってるな」


 俺が素直に感心すると、サーミャがフンスと鼻息も荒く胸を張った。


「動物を捕まえる罠の応用らしいですよ」

「へえ」


 リケが言って、俺は辺りを見回す。引っかかってきた場所から考えると、ちょうどここが罠の中心になりそうだ。なるほど、大きく網をかけるように仕掛けられているのだな。いつの間にか中心に寄せられてしまうわけだ。

 狩りの時は中心に来たところで弓で仕留めるのだろう。今回は別の罠でも仕掛ければ高い効果を得られるかも知れない。


「流石サーミャだな、見事なもんだ」


 俺の再びの感心に、サーミャはさっきより一層鼻息を荒くし、一層ドンと胸を張るのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やってる事は罠を仕掛ける事なのに、楽しそうで、微笑ましくなりましたw
[気になる点] 対人罠で非致死における意義は余計な人手を増やすという事で駒を減らせる点にあります。 ただし非傷で知らせるのみじゃ相手が手練であればあるほど、直ぐに退かれて「この奥にはお目当てのブツがあ…
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