表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第12章 オリハルコンのナイフ編
569/980

つくるもの

 まだストーブやクロスボウを作る前、いつもの納品物を作っていた休憩中のことだ。


「そういえば、ここって武器しか作らないの?」


 ふと、そんなことをアンネが言った。


「いや、特にそう決めたわけじゃないぞ」


 言って俺は鍛冶場においてある飲料水用の水瓶から柄杓でカップに水を汲んで飲み干す。


「初めて街へ行ったときは鎌なんかもあったよな」


 サーミャが懐かしむようにそう言った。あれももう半年以上になるんだっけか。

 その後、武器に専念してリケが来てカミロのところに品を卸すようになって……。


「そもそも今使ってる斧だの鍬だのはここに来てから作ったやつだぞ」

「あの使いやすいの、売れるんじゃない?」


 再びアンネが俺に言った。まぁ、俺も最初はそう思って意気揚々と街へ鎌だのを持っていったわけだが。


「それがなぁ、ことはそう簡単じゃないんだよな」


 街には領主お抱え、つまりはエイムール家お抱えの鍛冶屋がいて、農具を作ったり修理したりといったことは、その鍛冶屋がすることになっている。

 それでことが足りてしまうため、売って売れないこともないのだろうが、基本的には誰も買っていかない。

 今も作っているナイフは下町の農業をしない人達が買っていってくれるので、なんとかなったわけだが。


「それ以外のものも、あんまり売れそうに無かったからなぁ」

「鍋とか?」

「だな」


 よほど傷んだなら買い換えるのだろうが、ちょっとした穴あきなんかは鋳掛け屋の領分で、直して使い続ける家のほうが多い。

 となれば、そうそう売れるものではない。下町の人々の感覚からすれば、安いもんでもないし。まぁ、そのたまの機会を狙うのもありだったかもだが、嵩張るからな……。


「かといって、小物は作る手間に比して儲けがな」


 大物でない金属製の食器の需要は庶民にはない。うちで使っているスープ椀やスプーンも木製だし。

 逆にマリウスのとこなんかだと金属製のスプーンなんかもあるんだが、銀製だったりする。無論、そんなものが庶民に買えるはずもない。


 釘やかすがいみたいなものなら多少は需要もあるみたいなのだが、その手間に対して数を作ってもそう大した儲けにはならないのだ。

 いきおい、そこそこの手間で儲けられる武器を作ることが多くなってしまうというわけだ。


「そうは言うけど、大抵のものはもうカミロさんが買ってくれるんじゃ?」

「それはそうなんだけどな」


 アンネの言葉に、俺は肩をすくめた。何を作っても「売るあてはある」と言って買ってくれるだろう。それこそ銀食器でも。……銀で食器作る時って鍛冶屋のチートきくのかな。

 そしておそらく実際に売ってしまうのがカミロの才覚というやつである。自惚れがすぎるのもなんだが、これまでの話でもあったように俺の作ったものでも売れないときは売れない。

 そしてカミロは不良在庫をいつまでも抱えているようなタイプではない。だからこそ帝国や北方にまで手を広げることができたのだろうが。


「もうちょっとのんびりやっていける確信が持てたら、そういうのをメインに作っていくのも悪くないかもな」


 俺が言うと、なぜだかアンネはニッコリと笑った。


「ま、カミロが困らん程度に、だけど」


 今度は他の皆も笑う。


「さ、続きをやっていこう」


 皆の了解の声と、火があげるゴウゴウという音が鍛冶場に響いて、俺たちはいつもの作業に戻っていった。

 明後日の11月10日に書籍最新5巻が発売となります。

 早いところでは明日にも入荷するところがあるかと思いますので、是非書店にお立ち寄りください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=509229605&sツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] カミロとか言う商人ガチャURみたいな人材に出会えたのヒロイン遭遇以上に天運使ってそう。
[一言] うーんこの皇女スマイル 国家のパワーバランス的な意味でね・・・
[気になる点] 金物なら異世界チートしてもいいと思うんだよね 発想の問題というだけで、ぶっちゃけ技術的にはテコの原理くらいしかないと思うし 技術力で勝負すれば模倣品が出回っても問題ない 貴族向けにカミ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ