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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第11章 北方からの来訪者編
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手仕舞いをはじめよう

 普段、街道で警戒するときは主に野盗の出現に備えるものだ。街の衛兵隊が職務熱心なこともあってか、幸いにして出くわしたことはない。

 俺たちは“黒の森”に住んでいるから、狼たちが滅多に森の外に出ないことを知っている。リスクを覚悟で街道や草原に出なくても、森の中で獲物を捕らえることは十分に可能だからだ。

 うちの家族以外にそれを知っているのは森に住む獣人達くらいで、彼らも街の住人達には積極的に教えたりとかはないらしく、普通の人は森からの襲撃も気にしていたりするらしい。

 そして今の俺達は、と言うと、


「気配を隠されるとアタイでも厄介だな」

「アタシの鼻が利くから、それでカバーするよ」

「アタイも見てるけど、任せた」

「おう」


 北方使節団からの襲撃を警戒しているわけだ。彼らには手練も混じっている。気配を消すことができるものもいるだろう。

 ヘレンはそれ以上の手練ではあるのだが、完全に気配を消されると見つけにくいのは確かだ。しかし、それでも匂いまでは消しきれるものではない。

 消そうと思えばどこかに無理が生じる。それを見逃す(嗅ぎ逃す?)ほどサーミャは甘くない。そして見つければサーミャとリディの弓が、接近してもヘレンにディアナ、そしてアンネに不肖俺がいるので、見つけることさえできれば対応は可能なはずだ。

 こうして、いつも以上の警戒で街道を進んでいった。


 結果から言えば、警戒は全くの杞憂で済んだ。警戒をしていることは明らかな状態ではあったので、逆にそれを警戒した可能性もある。少なくともそこらの野盗が潜んでいたら、手を出そうと思わない状態だったのは確かだ。

 街の入口でぼーっと突っ立っているように見える衛兵さん――もちろんぼーっとしているようでも、全くそうではないのだが――を見たとき、一瞬緊張が解ける。

 だが、すぐに引き締め直した。カミロの店につくまでは完全には気を抜けない。いつものとおりに衛兵さんに挨拶をしても、一瞬怪訝な顔をされるくらいには警戒を解かなかった。


 街に入っても警戒は解かない。と、言っても人出がそこそこあるし、それにルーシーがいつものように荷車の周囲からひょこひょこと顔を出している。

 もし手を出そうと思っても、ルーシーに見つかるかも知れないと考えれば、二の足を踏むことだろう。本人は単に周りを見たいだけなのだが。

 いや、今日はやけに鼻をヒクヒクさせている。もしかすると彼女も荷車の雰囲気を察して、警戒をしてくれているのかも知れない。家に帰ったらねぎらってやるか。


 その警戒の甲斐もあってか、街中でも襲撃されることはなく、カミロの店に到着した。

 いつものように倉庫に荷車を入れ、裏手へ回る。すると、いつものように丁稚さんがすっ飛んできた。ヘレンが俺の前に回ろうとしたが、俺は後ろ手にそれを遮った。

 疑って損はないのだろうが、この子まで疑ってしまうのもな。

 実際、丁稚さんはいつもの笑顔で、


「いらっしゃいませ! 皆さんお待ちですよ!」


 と出迎えてくれた。俺はポンポンとヘレンの肩を優しく叩く。叩かれたヘレンは肩をすくめて、先に店に入っていく。多分、チェックしておいてくれるのだろう。


「ありがとう、今日もこの子たちを頼むな」

「はい! お任せください!」


 くしゃり、と丁稚さんの頭を撫でると、彼はくすぐったそうにした後、「おいで」とクルルとルーシーを呼んで、駆け出す。

 その彼をいつものように、


「クルルル」

「わんわん」


 まるで「待ってよー」とでも言うかのように、2人の娘が追いかけていった。

 それを微笑ましく見守った後、これから待ち受けているであろうものを考え、少しだけ気分を重くしながら、今ヘレンが開けてくれた扉をくぐった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 北方の勢力図がわからないからなあ [気になる点] ほっぽが鎌倉から戦国あたりの騒乱期なら 舐められたら○すなYakuzaな感じですし 物騒なのは分かりますけれど なら一族を外に出す意味も…
[良い点] 丁稚の少年は付き合いも長いし信用出来る。 [気になる点] エイゾウって良く解らないところで異常に警戒したりするけれど、前世ではトラックに轢かれて死んだだけで特に裏切りやら殺人で死んだ訳じゃ…
[気になる点] 対話に誰が待ち受けているのか、はたして。
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