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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第11章 北方からの来訪者編

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街道と街

こちらは本日(9/17)分になります。もし、9/15分をご覧でない方は、そちらもご覧ください。

 ガタゴトと荷車は揺れる。あまり幸先のよろしくないことに、出かける段になって空には雲がかかり、“黒の森”を照らすスポットライトは全ての照明を落としてしまった。

 晴れの日でも暗いこの森が、より一層の暗さを得る。もうこの暗さに慣れてきた俺でも、不気味さが増してるなぁと思うほどなので、この森に住んでいない人間なら尚更だろう。


「あらためて凄いところにいたんですねぇ、私」


 あたりを見回しながらカレンが言った。彼女は今ここにいる誰よりも滞在した期間が短い。そういう感想になるのもむべなるかな、である。


「それはね。私も時々はそう思ってるからね」

「私もですよ」


 ディアナとリディもそれに乗った。アンネとヘレンは口には出さないが、頷いているので、そういう感覚は残るものらしい。サーミャはともかく、リケが頷いていないのは慣れの問題だろうか。


「ま、だからこそ、みんなここに来たってのもあるわけだが」


“黒の森”は「うかつに立ち入れば死を免れない」とまで言われている。そんなヤバいところに住んでいるはずがない、住んでいたと分かったとして手の出しようがない、というのがうちに滞在する最大のメリットだ。

 これは表向きにはしていないが、うちには“人避け”の魔法もかかっているので、到達できるような人間も限られている。


 そう言えば、カレンがもし北方へ戻るってなったら、ハヤテたちはどうなるんだろう。俺はクルルの頭に止まっているハヤテを見やった。

 彼女は今、鳥のように翼の一部を綺麗にしているところだ。表現はアレだが買取みたいな形なので、カレンが戻ってもハヤテたちを戻さないといけない道理はない。


 だが、それはまっとうにうちで修業を終えて円満に戻っていく場合の話で、「全てご破算な」という流れになる可能性は十分にある。そうなった場合は当然、ハヤテたちの買取もなくなるだろう。一応対価は払っているので粘るつもりもあるが。

 それでも一緒に戻るとなると、新しい連絡手段を構築する必要がある。その時は……別の小竜をカミロに調達してもらうのが良いのかな。


 その時の名前はコガラシとかフブキとか、ハヤカゼとかそういう名前にしようかな。器用なことにクルルの頭の上で居眠りをしようとしているハヤテを見て、できればそんな未来にはなってほしくないと願いながら、俺は気を紛らせた。


 晴れの日には気持ちよい青空と草原を見せてくれる街道だが、そこも今日は生憎の曇天でいつもの気持ちよさはなく、陰鬱な感じをまとっていて、いつもならそっと草を撫でていく風も幾分乱暴になっていた。

 時折、上空を優雅に舞っている猛禽らしき姿も今日はない。俺たちは周囲の警戒を強くした。


「今日みたいな日は何が出るか分からん。風も強いし、少し警戒を強くしよう」

「伯爵閣下のおかげでここいらはかなり安全だけどな」


 俺の言葉にヘレンが返した。口調は気軽だが、その目は周囲を鋭く見ている。サーミャも頭を動かしながら、クンクンと臭いでも警戒を続けていた。


 俺たちは時折こうして街へ出かけはするが、姿を晒しているのは半日もない。ただ、それは定期的なものなので、襲うつもりがあればこのタイミングだろう。

 しかし、こうして異常を察知するのに長けているサーミャとヘレンがいるのだ。そうなれば俺たちはたちまち“黒の森”に引っ込む。


 久しぶりの街道は、曇天であることが残念な以外はいつもどおり、平和に通行することが出来た。3週間ぶりの街の入口が見えてくる。普段と1週間しか変わらないのに、随分と懐かしいような気がするな。


 俺たちが入り口に差し掛かると、ちょうど街道の巡回に出ていくらしき衛兵さんたちとすれ違った。動きやすいようにだろうか、装甲箇所を減らした甲冑を着て、手には槍。腰には剣を佩いていて、なかなかに物々しい。

 隊列を組んで進んでいく中に、顔見知りの顔もあったので、俺は声をかけた。


「今から巡回ですか? ご苦労さまです」

「おお、あんたらか。あんたらが何事もなく到着したってことは、今んところ街道は大丈夫そうだな」


 顔見知りのうちの1人がそう言って笑う。俺も「ええ、皆さんのおかげで」と笑って返し、互いに軽く手を振って別れた。


 入り口にはいつもの衛兵さんが立っていて、ニヤッと笑い、片手を挙げるだけで通してくれる。俺たちはそれに頭を下げて、久しぶりの街へと入った。


 雨の降らないうちに用事を済ませたい、ということなのだろうか。いつも来るときよりも道に溢れる人の数が多い。ルーシーはいつも通りに荷台から顔を出して、いくらかの人を一瞬ぎょっとさせ、強面の露天商のおっさんを含む人々を和ませている。


「こうして見ると、大きくなったなぁ」


 荷台の縁から背伸びをするようにしてかろうじて頭を出していたルーシーは、今その背伸びをしなくても頭を出せるようになっている。

 俺は将来の懸念を一つ口にした。


「今はいいけど、そのうち出しちゃだめって言わないといけないかな」

「噛みつかなかったら良いんじゃない?」


 ディアナがルーシーの背中を撫でてやりながら言った。


「そういう素振りを少しでも見せたら駄目にする、で大丈夫でしょ」

「街の決まりとかには……ないよな」

「そうね」


 他ならぬこの街の領主の妹様のご発言である。時折、忘れてしまいそうになるが。ともかく、それなら俺もあまり反論はない。俺は頷くことで了解の意を示した。


 やがて、荷車はカミロの店に到着した。曇天だからだろうか、それともこの後に待っているものが、もしかしたらあまり気持ちの良いものでないと、俺が思っているからだろうか。

 俺ははじめて、この店が少し不気味に見えたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] カミロ「ええ・・・(困惑)」
[一言] 連絡の取り次ぎやってくれてるだけのカミロさんに飛び火したw お店貶されてちょっとかわいそう
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