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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第11章 北方からの来訪者編
534/980

監修

「かなり助かってるわよ?」


 夕食のとき、カレンは慣れてきたか? という話になった。まぁ、来て間もないのでしょっちゅうそういう話になるのは避けられまい。

 そこでディアナから返ってきたのがこの返事というわけだ。


「器用だし、何より“温泉”のことを知ってるから、どういうものを作ればいいか分かってるしね。カレンがいなかったら、エイゾウに聞かないといけないことがあったと思う」

「ああ、なるほど」


 そう言えば、浴槽を埋める時も、渡り廊下の作業中も特にディアナ達に呼び止められるようなことはなかった。気がつけば作業が進んでいて、床や壁、そして天井の面積がモリモリ増えていた。

 その功績はカレンに帰するところ大、というわけだ。そのカレンはディアナの評価が嬉しいのか、少し目がキラキラしている。

 俺はカップのお茶を一口飲むと、ディアナに向かって言った。


「じゃあ、もう完全にそっちに任せちゃおうかなぁ。分かんないとこはまずカレンに聞いてくれる方式のままでいいし」

「え、いいんですか? 師匠の理想の体現でしょう?」


 そう言って、カレンが目を丸くした。俺は苦笑を返す。


「いや、体現てほどじゃない。他に北方っぽいのを知ってる人間がいないだけで」

「ううむ。しかし、今更ですが出しゃばりすぎていませんか?」

「うちは来てすぐでも関係なしだから気にしなくていい。ディアナ達に何か聞かれて迷ったら、遠慮なく俺に回してくれていいから」


 ここに来て本当に間もない人間にいきなり監修をぶん投げる、というのはなかなかにブラックな気もするがフォローはするし、もうそれなりに湯殿が出来てきている今、新たに確認しなければいけないようなことは少ないはずだ。

 それなら任せてしまって、こっちはこっちの作業に集中したほうがよい……というのは甘いだろうか。あとはちょっとの難関を乗り越えたほうが仲良くなりやすいのでは、ということもある。前の世界だと文化祭の準備で急に仲良くなることがあるような。

 まぁそれで仲良くなれるかは「人による」としか言えないので、これで逆にギクシャクしはじめるようなら、渡り廊下チームに組み込んで、ディアナたちがわからないところは俺が随時対応する形をとるようにしよう。

 そんな俺の思惑を知ってか知らずか、カレンは少し考え込んでいる。あまり無理強いするのもよろしくないな、パワハラっぽくなってしまうな、と思ったとき、

 カレンはグッと自分の胸の前で握りこぶしを作り、


「分かりました! がんばります!」


 と気合いを入れた。どうやら乗り気にはなってくれたようだ。


「あんまり気負いすぎても良くないから、程々にな」


 俺は小さく苦笑し、残っている鹿肉の醤油ベース焼き肉(風)を口に運ぶ。俺もお気に入りだが、カレンがことのほか気に入ったようだ。作業で空腹だったこともあるのだろうが、うちで一番の健啖家のリケに負けず劣らずのペースでヒョイパクと口に運んでいた。

 そのカレンにはサーミャとディアナが狩りについての話をはじめ、今度の狩りには一度カレンもついていくという話が進んでいた。

 早速仲良し作戦の効果があった、と思って良いのだろうかこれは。狩りに行けば1日鍛冶の仕事を見る機会が減るわけだが、もう既に湯殿の建設という全く関係ないところをやってもらっているし、そこの監修を任せようというのだから、それこそ今更の話というものだろう。

 カレンのここでの暮らしが少しでも楽しいものになればそれでいいかと、何を狩ろうかワイワイ打ち合わせをする家族を見つつ、俺はもう1つ焼き肉を口に運ぶのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] カレン、向こうに帰ったら米とか醤油・味噌とか定期的に送ってくれないかしらねえ……。 余りに居心地良すぎてずっと居座り続けなければの話ですがw。
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