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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第11章 北方からの来訪者編
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休憩

 ヘレンが機嫌よく掘ってくれたおかげもあってか、浴槽設置予定場所の掘削はスムーズに進んだ。

 傍らにはちょっとした小山が出来ていて、振り返れば前の世界のパルテノン神殿のように柱が林立した光景がある。その脇で1人、へたり込んでいる姿。カレンだ。

 俺は運んできた水瓶からカップに汲んだ水を飲む。横ではヘレンが同じようにして水分補給をしている。

 別のカップに水を汲んだ俺は、それをカレンに差し出した。


「休憩は適度に取れよ。水もちょいちょい飲んどけ」

「はいー、皆さんにもそう言われましたぁ。それでここで休んでるんですー」


 差し出されたカップの水を一気に飲み干すと、尻尾でペチペチと地面を叩きながらカレンは言った。作業の邪魔になりそうだからだろう、長くてスッと流れていた髪を今はひとまとめにしていた。やったのは「みんなのお姉ちゃん」リケだろうか。

 カレンは人心地がついたのか、ふう、と息を吐き、忙しなく動き続ける皆を見て言った。


「私のいる部屋とかも皆さんで作られたんですよね?」

「そうだな」


 最初に用意してもらっていたのは、居間に書斎と寝室、そしてトイレに台所というシンプルな住まいと鍛冶場だけだ。サーミャとリケの部屋からは自分たちで作ったものである。

 増築に増築を重ねた、カレンのいる居住棟……と言っていいのだろうか、まぁそんなようなところは言わずもがなで、空いている部屋は物置代わりの1部屋のみとなっている。

 あそこもいずれ増築するんだろうか。そろそろ2階建てなんかを考えたほうがいいのかも知れないが、鍛冶場の熱気が流れ込んだりしたら厄介なので、もしやるとなったら考えないとな。


「私にもそういう経験があれば良かったんですけど」

「いや、言い方は悪いがうちのがおかしいだけだ」


 再びため息をつきつつのカレンの言葉に、俺は苦笑しながら返す。エルフとドワーフはともかく、建築経験のある伯爵家令嬢と帝国皇女はどう考えてもおかしいでしょうよ。


「アンネさんは身分の高い方だと伺いました」

「うん。本来は俺が拝謁賜われるかどうか怪しいくらいのな」


 今ここではただのアンネとして、俺や家族から指示を出したり手伝ってもらったりしているが、本来あくまで一介の鍛冶屋のオヤジでしかない俺が、継承権最下位クラスとはいえ帝室に名を連ねる人物に対して、おいそれとお目通りがかなうはずがないのである。

 カレンにはまだディアナとアンネの本当の身分は明かしてない。情報セキュリティの観点よりも、「これ以上情報を与えてパンクさせたくない」ほうが大きい。なので、いずれ伝えることになるとは思っているし、ディアナやアンネの判断で伝えることは特に制限していない。

 彼女もディアナの方はある程度察しがついているかもしれないが、アンネの方はどうだろうな。かなり身分が高いことは分かっているだろうが、皇女殿下とまでは思ってなさそうだ。


「それなのに、ああやって働いていて……」


 フッと目を細めるカレン。


「なんだかいいなぁ、って思いますね」

「本当に?」

「本当ですよ!」


 俺がからかうと、カレンはわざとらしく怒ってみせた。うちでは彼女だけがゴールが見えている。リケも見えてはいるのだが、かなり遠いので一旦はノーカンだ。

 そんなに長くならないだろうが、馴染んでくれるといいな、そう思っていると、


「カレン! ちょっとここ手伝ってくれない?」

「はいー! 今行きます!」


 アンネがカレンを呼び、カレンはパタパタと走っていった。どうやら俺の心配は杞憂に終わりそうだ。なんとなく嬉しくなりながら、俺はヘレンと作業に戻った。

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― 新着の感想 ―
[一言] >作業の邪魔になりそうだからだろう、長くてスッと流れていた髪を今はひとまとめにしていた そう言えば、北方には「髷」を結う文化はないのでしょうか?。 カレンさんが「髷」で登場しなかったのは、…
[良い点] >「カレン! ちょっとここ手伝ってくれない?」 >「はいー! 今行きます!」 カレンさんもあっという間に馴染みましたね(笑。  「はいー、皆さんにもそう言われましたぁ。それでここで休んで…
[一言] この感じが大好きです。毎日更新楽しみにしています。
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