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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第10章 “黒の森”の主編
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道と来客

 一夜明け、再び渡り廊下の建築に取りかかる。柱チームのアンネとリケは屋根チームに転属、ヘレンは道板チームだ。背が高いヘレンを屋根の方に回さなかったのは、リケのほうが屋根を作るのには慣れているから、という理由である。その代わりと言ってはなんだが、うちで一番背の高いアンネも屋根の方に回している。

 柱を立てるのに重機として大活躍していたクルルは、運搬を受け持つことになる。チアリーダー(ウルフ?)のルーシーはその大事な役目を引き続き行ってもらうことにした。


 屋根チームは柱と柱をつなぐようにテキパキと梁や桁を組み上げていく。流石に今日明日では終わらないだろうが、それも可能なのではと思うくらい早い。

 一方、道板チームは枕木――鉄道がないので“のようなもの”だが――を埋めるためにショベルで地面を掘り、枕木を並べていく作業だ。これはこれで今日明日では終わらないだろう。

 早めに終わらせてはおきたいが、どうしても急がねばならない作業でもないし、次の納品日に納品するものはもう作り終えているので、次の次の納品に影響が出なければとりあえずは良し、である。


「じゃあ、俺が掘っていくから、皆は木を並べていってくれな」

『はーい』


 どういうことなのか、生産の方のチートがこの作業にも適用されるみたいなので、それに従って俺が掘っていき、他の皆で枕木を並べ、埋めていく方式を取ることにした。多少は平らで無かったりするかも知れないが、あまりにも歩きにくい以外は目をつむることにするのだ。多少道に凹凸がある程度も気にしないとダメなほど慎重になって運ばないといけないものは、そもそも倉庫に入れずに家の物置の方に入れるし……。

 増強された筋力とチートによって、この森の硬い地面でもどんどん凹字に掘れていく。時には石も出てくるが、それをヘレンが取り除く……というか、小さいものはものすごい速度で遠くへ放り投げている。

 同じ方向に投げ続けているので近寄る人がいたとしても、その方向からの接近を避ければ良いのだが、運悪く通りすがった鹿でもいたら仕留められているかも知れないな……。サーミャもルーシーも反応しないので恐らくは大丈夫なのだろうと思うが。

 石を取り除いてできた穴には掘り出した土を埋めて軽く叩いて固めている。そこに枕木を横に並べていって、隙間にはやはり土を埋めていく、という作業を繰り返していく。

 その合間合間に、ヘレンが放り投げた石をルーシーが喜び勇んで拾ってきて、褒めていいやら悪いやら(結局褒めたので再び拾いに行ったりした)などという一幕もあったりしたが、順調に作業は進み、そろそろ日も暮れるから作業を終わろうかと声をかけようとしたところ、覚えのある声がした。


「ごめんください」

「はいはい」


 声のした方を向くと、小さな人形のような姿があった。妖精族の長、ジゼルさんである。俺はまず頭を下げて謝る。


「この間はすみません」

「いえいえ、お気になさらず。この“黒の森”で住む場所の違う互いの都合が運良く一致するほうが本来は珍しいんですから」


 ジゼルさんは鈴の鳴るような声で言ってコロコロと笑う。うちは鍛冶屋なのでしょっちゅう家にいるが、この森で暮らす“人間”はそうでない人のほうが多い。アポも取りようがないとなると、なるほど定期的な連絡が難しいのは確かだ。


「ジゼルさんがいらしたということは」

「ええ、そうです」


 ジゼルさんは満面の笑みを浮かべる。


「温泉の場所をお伝えしに伺いました」


 その話だと分かっていても、やはり嬉しいものは嬉しい。その時の俺の喜びようを、後にディアナが回顧して言うには「自分に子供が生まれてもあそこまで喜ぶだろうかと思った」とのことだったので、相当に喜んでいたらしい。


「ささ、どうぞどうぞ」


 それほどまでに浮かれていた俺は、片付けもそこそこにジゼルさんを家に案内し家族に呆れられるのだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] むしろ女性陣が全くと言っていいほど温泉に興味なさげなのが意外というか不思議ではある
[良い点] >ジゼルさんは鈴の鳴るような声で言ってコロコロと笑う ジゼルさんもすっかりエイゾウに打ち解けたようですね。 矢っ張りジゼルさんにはエイゾウ工房の新たな「家族」になって欲しいです!。 リュ…
[一言] 温泉は嬉しいもの、浮かれてしょうがない
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