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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第10章 “黒の森”の主編
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「軍隊だと弓兵を前にして、射掛けたら下げる、んで槍兵で槍ぶすまを作って徐々に前進ってのが普通か」

「そうだな」


 俺が言うと、ヘレンが頷いてくれた。向こうはワンマンアーミーみたいなもんだし、こっちも少数精鋭の部隊として動くのもありかなと思ったわけである。

 おとがいに手を当てながらディアナが言う。


「問題は、それが通じる相手かどうかね」

「理想は弓か投槍であっさり倒れてくれることだけどな」

「それならアタシら獣人だけで大丈夫だから、こっちには頼まないだろ」

「それもそうだ」


 投射武器だけで倒せそうなら、獣人族総出でやる案でいったはずだからな。その場合、うちに対する依頼は矢じりと投槍を用意してくれってことになるだろう。


「じゃあ、どう動くかな……」


 その辺に転がしてあった木の端材(井戸を作った時のあまりかなにかだろう)を手に取って、ナイフで適当な大きさに切り分けてコマのような物を作り、テラスに並べた。

 大きな1つ――邪鬼トロールだ――を置いた後、少し離して小さめのを2つ並べて置く。

 2つの方を指差して俺は言った。


「サーミャとリディで弓手をやってもらうのは良いとして、洞窟の中だからな……」

「斜めに射つのは難しいでしょうね」

「うん」


 リディの言葉に俺は頷く。曲射は無理だろうなぁ。直射してもらうしかないが、それも常に射線が確保できるとは限らないのだ。

 ヘレンが2つのコマから指を大きな1つに動かして言った。


「それでも、次に矢が飛んでくるかも、って意識させるのはいいと思う。まぁ、アタイ達が取り付いたら射ちにくくなるけど、2人共隙があったら狙ってほしい」


 誤射を考えれば、味方が接近戦をしている最中に投射武器で攻撃するのが褒められたことでないのは言うまでもない。にも関わらず、ヘレンがサーミャとリディに頼んだということは、それだけ実力を買っているということだろう。2人とも力強く頷いている。この2人なら滅多なことにはなるまい。


「後はもう俺たちでワッとかかるか?」


 俺はサーミャとリディのコマの後ろに、4つを置いた。さらにその後ろに3つ置く。3つはリケとクルルとルーシー、つまり今のところ非戦闘員として考えている3人だ。

 並んだコマを見てヘレンが言った。


「うーん、同士討ちにはならないと思うけど、リーチの差はどうかな。ディアナは槍は全然だっけ?」


 一番得意な武器を構えた状態でリーチが長いのは勿論アンネだ。巨人族の身長に長く大きな両手剣。短槍と同じくらいある。

 ヘレンは短剣なので武器としてはリーチが短い。ただ、それを補って余りある速さを持っている。大黒熊もあっさりと斬り捨てた“迅雷”の真骨頂だ。

 この2人は槍を持っていく必要はあるまい。槍と同じリーチか、それくらいの間合いは一瞬で詰めて再び離れることが出来るという2人だ。

 となると、槍を持っていくのは俺とディアナと言うことになる。しかし、全然使えない物を持っていってもデッドウェイトになるだけで、それも意味はない。

 俺が聞かれないのは魔物討伐のときに使ったのが槍だったからだろうな……。


「うーん、全く使えないってことはないわね」

「じゃあ持っていこう。出来るだけ離れて戦えたほうがいい。ディアナとアンネは牽制だけしてくれれば大丈夫だから」


 ヘレンがテキパキと指示して、ディアナとアンネも頷く。やっぱり、こういうのはプロに任せるに限るな。


「じゃあ、接近してやりあうのは俺とお前ってことか」

「おう。よろしくな、相棒」


 ニィッっとヘレンが笑った。引き受けたのは俺だし一番危険なところに回るのは、言われずとも立候補するつもりだったし、そばに最強の傭兵がいてくれるなら心強い。


「よし、じゃあ後は実際に動きを確認しよう」


 俺が言うと、皆は互いに顔を見合わせる。その顔は、決意に満ち溢れていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] >俺が言うと、皆は互いに顔を見合わせる。その顔は、決意に満ち溢れていた 「家族」たちの信頼関係の強さを感じました。 日頃から仲が良いことは伝わっていましたが、命懸けのミッションでも揺らが…
[気になる点] 手持ち装備でなんとかしようとするあたり、なんとなく一回の遠征じゃ倒しきれない気がしてきた。^^: [一言] >澱んだ魔力溜まりで発生する魔法生物なので、呼吸の必要がなく、酸欠や燻り出し…
[一言] 槍も特殊な金属で出来ていれば殺傷能力が高かったんだけどね。
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