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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第9章 伯爵閣下の結婚指輪編

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祝福

 話が一段落したところで、俺は少し気になっていたことを聞いた。


「そういえば、突然ふわっと現れたりしないのですね」


 俺が言うと、他の皆も小さく頷いた。リディまでもが頷いているということは、この世界一般でもそう思われているのだろう。

 フッと現れ、悪戯をしてフッと消える。そして、小さな子供のように憎めない、そんなイメージだ。

 いや、前の世界の神話や物語だと結構えげつないのもいたっけか。


 俺の言葉を聞いて、ジゼルさんはプクっとふくれっ面になった。


「それをするのは精霊たちです。私達は妖精族なのでそんなはしたない真似はしません!」


 可愛らしくて、謝る前に思わず微笑んでしまいそうになる。

 でも、「はしたない真似はしない」ということは、やろうと思えばできるってことだよな。

 そして、妖精族とは別に精霊がいる、という情報も得ることができた。今日はなんだか盛り沢山だなぁ……。


「すみません、どうも我々の間ではそういった印象がありまして」

「それは遺憾なので、早めに改善をお願いしたいですね」

「善処します」


 妖精達はめったに姿を現さないので、精霊と混同されてしまっているのかも知れない。

 あまり「妖精と会った」と言うのもあれだし、改善しなければならないほど、普通の人間が妖精族に会うかというとなぁ……。徐々に改善することを考えよう。

 棚上げにする、ともいう。棚卸しがいつされるのかはわからんが。


「で、ここでその魔力が抜ける病を診ますってのは、ジゼルさんから妖精族のみなさんに伝えるという事であってます?」

「はい。この森の妖精族の長は私ですので、言うことは聞いてくれるはずです」


 俺は自分の片眉が上がるのを自覚した。

 イメージと違ってちゃんと玄関から来たり、言葉遣いが丁寧だったりするのは、「妖精族が実はそうだった」というより、「妖精族の長としてのジゼルさんの素養」が強いのではなかろうか……。

 わざわざそれを指摘して話をこじらせる必要もないので、そこについては黙っておく。

 知りたいことが色々出てくるが、そこはまた機会があればということにしておこう。知らなくても影響はなさそうだし。


「それでは、私は失礼しますね」

「あ、ご注意があります」


 立ち上がって優雅に礼をしたジゼルさんを引き止めた。大事なことを忘れていた。


「私達はたいてい日が昇ってから、沈むまでここにいますが、1週か2週に一度、街に出向きます。その日は、日が中天に差し掛かるくらいまでは家を空けています。それと、あまりないようにはしたいんですが、私が最長で1月程度、この家を空けることもありますので、その時はご容赦ください」


 俺の言葉に、ジゼルさんは微笑んで言った。


「ええ、もちろん。死に至る病、とは申しましたが、実のところすぐに死んでしまうようなものではないのですよ。少しずつ弱ってはいきますし、苦しむのも確かではあります。最終的には確実に死をもたらします」


 そこまで言うと、ジゼルさんは小さくため息をついた。そうなった者を看取った経験があるのだろうか。


「ですので、いらっしゃらない場合は日を改めることができますので、そこはご心配には及びません」

「それは助かります。いらっしゃった場合はなるべく早く、魔力の結晶をお渡しできるようにしますので」

「よろしくお願いしますね」


 再びペコリとお辞儀をするジゼルさん。


「ああ、そうそう、人間族は報酬が必要なのでしたね」

「え? ああ、そうですね」


 完全に副産物だから、それで報酬を貰う意識がなかったな。俺は最初「いらない」と言おうと思ったが、後ろから突き刺さる視線で思い直した。


「では“まえきん”として、その指輪に妖精族の祝福を授けましょう」

「あ、これもう1つ作るんです。まだ素材ですが」

「あら。では、そちらも持ってきてください。その後どうやっても祝福は消えませんので、ご安心を」


 それ、実は(のろ)いって言わないか。まぁ、紙一重のものではあるか。ジゼルさんの言葉に従って、俺は指輪と残りのメギスチウムをテーブルに持ってきた。

 その上をジゼルさんがふわふわと飛びながら回る。


「これらに我ら“黒の森”の妖精たちの祝福を授けます。身に着けたものに幸多からんことを」


 ジゼルさんが歌うように言うと、指輪とメギスチウムは一瞬ほの青く発光した。


「おお……」


 俺も含めたエイゾウ工房の全員が感嘆の声を上げると、ジゼルさんは少しだけ誇らしげに胸を張った。



「それでは、長いことお邪魔いたしました。失礼しますね」


 開けた扉の前で浮かんで、ジゼルさんはお辞儀をする。


「ええ。また何か相談事があればお越しください」

「はい。ありがとうございます」


 外はもうすっかり暗くなってしまっているが、その中をふよふよとジゼルさんは飛んでいき、やがて見えなくなった。


「行っちゃったわねぇ」

「行っちゃいましたねぇ」


 扉を閉めようとすると、うちの娘2人がそばまで来ているのに気がついた。クルルもルーシーも尻尾を振っている。

 今までじっと我慢していたのだろうか、そう言えばジゼルさんが来たときにも騒がなかったな。


「よしよし、2人ともえらいぞ」


 俺は2人の頭を撫でてやりながら、今日の夕食は夕方の埋め合わせにテラスで一緒に食べるか、などと考えるのだった。



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― 新着の感想 ―
最早、国宝級の物になってしまったのでは?(w
[一言] クルルとルーシーは妖精さんについてどう反応してるんだろうと思いながら読んでましたが、ちゃんと気づいた上で大人しく待ってたんですねえ……さすが自慢の娘
[一言] 呪(まじな)いと呪(のろ)いは紙一重
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