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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第9章 伯爵閣下の結婚指輪編
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手順の確立

 妖精が来るかどうかはともかく、作業をしなけりゃならないのは変わらないので、ひとまず魔力フル充填の板金を用意することにした。

 用意するのは3つだ。下に敷くもの、上に被せるもの、そして指輪と同じくらいの大きさの穴を空けたものである。

 もっと大きなものなら囲むために6枚を用意するのだろうが、今回は小さいものなのでこれで問題ない……はずである。試してみないことには分からんが。


 2枚はそのまま加熱もせずに叩いて魔力をこめていく。もうかなり手慣れたもので、素早く限界まで魔力をこめることができた。鋼だし、上限が低いというのもあるが。

 3枚目のものは加熱したあと、金床の角みたいになっているところを利用して小さめに穴を開け、その後、鎚を駆使して指輪とほぼ同じ大きさの穴に調整する。

 板金の厚みは指輪の幅よりも大きめに取ってある。冷えた状態で叩くから平気だとは思うのだが、厚みがギリギリだと被せた板金を叩いたときに、指輪に当たって歪んでしまうかも知れないからだ。


 こうして魔力フル充填の鋼が3枚揃った。キラキラしたものが板金にまとわりついている。


「これをリケに打ってもらう、って実験もそのうちやらないとなぁ……」


 俺はそうひとりごちた。自分だけが聞こえるくらいの音量のつもりだったのだが、リケは耳ざとく聞きつけたようである。


「いいんですか!?」

「いや、うん、まぁ今回のが終わったらやってみるか」

「はい!」

「俺から言っておいてなんだが、自分で込めたやつでなくても良いのか?」

「勿論そっちのほうが良いに決まってますけど、その前に魔力が最大量までこもった板金を試してみたいのも本心なので。自分ではまだそこまでできませんし」

「なるほどね」


 良いものがあればそれでやってみたい、と思うのは当たり前か。俺だって「魔力フル充填したオリハルコンを持ってきたけど打ってみない?」って言われたら、加工できるかどうかはともかく、二つ返事で頷くだろうし。


 リケに俺が魔力をこめた板金を打ってもらうことの意味は量産性にある。

 俺が板金に魔力を込めるだけなら加熱しなくてもいい。その魔力を完全に維持できずとも、大半を残したままリケが加工できるなら、俺は魔力を込めることにだけ集中し、リケにはどんどん加工だけしてもらう、といったことが可能になる。


 そうすれば、予定数の板金を俺が準備したあと、俺が追っかけて加工することで単純計算すると2倍近い速度で生産することが可能、というわけだ。

 これを放置する手はないし、なにより何かで俺がいなくなった場合も、板金さえ残していればしばらくは安泰だろうと思う。

 うまくいった場合は、暇を見つけて魔力をこめた板金をせっせと作り、倉庫に収めるようにしよう。


 それも指輪を無事作り終えたらの話だ。俺は金床の上に板金と指輪を置き、板金に鎚を振り下ろす。

 何回か叩いていくと、上に置いた板金の魔力が少し減っているように見えるので、今のところうまくいっているようだ。


 それから更に作業を続け、もう少しで昼飯かなという頃合いで、一度確認してみることにした。

 ここでうまくいってなければ、今日の午前中の作業は水泡に帰すわけだが、それでもまだ傷はそんなには深くない。


 俺は鎚を傍らに置くと、そっと板金を持ち上げてみる。キラキラした何かが、その隙間から少し溢れ出してくる。

 イメージ的にはドライアイスを入れた箱を開けるときのような感じだ。

 指輪が置かれていた空間に魔力が充満していたのは間違いないらしい。俺はそのまま板金を取り去った。


 そこにはキラキラと輝く指輪がある。指の爪で突いてみると、コツコツと硬い感触が返ってきた。昨日と比べて硬くなっているのはほぼ間違いない、とチートが教えてくれる。

 俺は深くため息をつく。良かった、これで完成までの手順を確立することができた。もう1つを作るときにはこの手順に従えばいいから、かなり早く出来るはずだ。


 しかし、安堵したのも束の間、指輪と同時に懸念が生まれていた。

 指輪の内側、つまり完全になにもない空間だったところに、ごくごく小さな青い透き通る宝石のようなものが生まれていたのである。

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― 新着の感想 ―
[一言] 待て待て待て待て! 魔力フル充填のオリハルコンは、取り扱いを間違えたら大陸が沈むレベルの危険物じゃないのか? チャレンジャーだなぁ(滝汗
[良い点] 矢張りエイゾウ自身や、彼の作製する製品の品質のチートさに、みんなが驚いたり、呆れたり、笑っちゃったりするシーンが楽しいです。 [気になる点] >ごくごく小さな青い透き通る宝石のようなものが…
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