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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第9章 伯爵閣下の結婚指輪編
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 いつも購入している物資に寝具を2セット(さすがは大店、余裕で在庫があった)、それにエルフたちがカミロに託した植物の種を積み込んで、竜車はカミロの店を出て、街を去る。

 街道をのんびりと走る荷車の上で俺は言った。


「まだ種の中身は確認してないが、リディは見当がついてたりするのか?」

「ええまぁ、おおよそのところは」


 まぁ、そりゃ出身地由来のものだし、見当はつくか。


「楽しみだな」

「そうですね。畑で薬草などは育てていましたが、他のものは全然でしたからね」


 今、家では消毒に解熱や止血の薬草類や香草類を中庭部分にあたる畑で育てている。ミント(正確には似たようなハーブだが)だけは気を抜くと他の植物のところまで繁茂してしまうので、納品物の合間に作った木製のプランターに隔離しての栽培だ。

 水やりは雨季の時に作った貯水槽の水を利用している。そこの水は降雨で貯まるもののほかに、日々の水汲みで使わなかった水も僅かながら入れるようにしているから、常にある程度の水が確保されている。

 されてはいるが、生活用水に灌漑用水、いままであまり意識してこなかった防火用水なども考えると心許ない事になってきそうだな。大きめの水瓶3つでは確保できる水の量もたかが知れているのだし。


「そろそろ家の近くに井戸でも掘るか……」

「そうすると水汲みがいらなくなるわね」


 ディアナがそう言うと、ルーシーが俺の方を向いて「キュゥン」と鳴いた。散歩代わりの日課だから、なくなるかもしれないことを察したのだろうか。


「いや、あれはクルルとルーシーの散歩も兼ねてるし、俺の朝の運動でもあるから続けるよ。ただの散歩でもいいんだけど、目的があった方が出かける気になるしな」


 俺の言葉にルーシーがホッとしたように息を吐いてディアナの膝で丸まる。ディアナが微笑みながらそっとルーシーを撫でた。


 家に帰り着いたら、荷物の運びこみをはじめた。家の裏手に荷車を止めて、クルルを放したら、倉庫に木炭などを入れる。


「今日から酒の樽は家の物置に入れようか?」

「あ、そうだな。頼む」

「わかった」


 そう言ってヘレンはヒョイと酒の樽を担いで家へ引っ込んでいった。ヘレンなら苦にならなさそうだが、こういうときもテラス側から入れるから少しは楽だろう。


 同じように寝具と種も家の方に運び込む。昼飯を食べた後、寝具をセットして正予備両方の客間も使えるようになった。


 それも終われば普段は好きなことをする時間とするのが納品日の常ではあるが、今日は少し毛色が違っていた。


「これがニンジンの?」

「あ、芋もありますよ、親方!」

「こっちはカブかな」

「うちにない香草のもあるみたいね」

「これは? ……あんまり好きじゃないやつだ」

「これは豆ね」


 袋から種を出して、みんなでワイワイとリディに確認する。畑にどれから植えはじめるのかを決めるためだ。

 種は蒔き時があるんじゃないのか、とリディに聞いたところ、


「この環境なら、いつ蒔いても育ちますよ」


 とのことだった。なんでもエルフの森の種には、“黒の森”みたいに魔力が多い環境だと、それを吸収して育つ特性があるんだとか。

 そうでない環境では、植物の特性としては普通のものとして育つ。種を欲しがる人が少なくないのは、それでも味や収量がいい場合が多いからだそうだ。

 本来収穫できる時期が違うはずの、リンゴとベリー系の果実が同時に収穫出来る時点で疑問に思うべきだっただろうか。

 そのあたりをサーミャに聞いてみたが、


「いや、アタシ達はそれが当たり前だったし……」


 という答えが返ってきた。


「そりゃそうか。普通にそうやって収穫できてたのなら疑問には思わないよな」

「私たちエルフも外に種を渡すようになってから知りましたからね……」


 きっと、「いつでも育つと聞いたのに育たないじゃないか」みたいなクレームを受けて調べて、「なるほどな」となったのだろう。

 エルフ達が森から出ない理由の最大のものは自身が魔力を必要とすることだが、作物の問題もあると言うことだろう。


「よし、それじゃ早速いくつか植えるか」


 ワイワイと小一時間話し合いをしたあと、俺はそう言って皆で畑へ向かった。

 これでまた一歩自給自足に近づけるといいのだが。

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