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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第9章 伯爵閣下の結婚指輪編
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空き部屋と物置

 昼からは作業の続きだが、いくら作業が早いと言っても、2部屋分の床板と壁板となるとそうすぐに終わるものでもなく、日が暮れる頃に出来たのは「ここでも寝れなくはないかな」くらいの建造物だった。


 屋根板はまだ全く張られていない。家のある周辺は木がないので、茜色に染まった空がまるまる見えていて、景色としては悪くない。透明な素材があれば、一部屋くらい展望室と言うか、サンルームのようなものを作るのもありかも知れない。

 テラスをガラス張りにするのも一瞬頭をよぎったが、クルルが(物理的に)首を突っ込めなくなるので、そのまま脳内で却下した。


 翌日、昼前に床板と壁板チームはその作業を終えた。屋根のかかっていない、何にもないガランとした部屋に陽が差し込んでいる。


「雨が全く降らないのなら、こっちのほうが気持ちいいかも知れないがなぁ」

「そうなると私達を含めて、すべての生き物が乾いて死んでしまいますね」

「砂漠にも生き物はいるが、霧やら雨やらでそいつらが生きていける水分はあると言うから、全くないとダメだろうな」

「”さばく”ってなんだ?」


 俺とリディの会話に、板の切り出しを終えたらしいサーミャが加わってきた。

 ずっとこの森に住んでいる獣人だとそうそう聞くこともないか。旅人もよっぽどでなければ、わざわざ危険な砂漠を通っては来ないだろうし、危険な黒の森に立ち寄ったりもしないだろう。


「大地の神の怒りでものすごく暑いのに、恵みがなくて雨がほとんど降らなくて、石や砂しかないようなところがあるんだよ。それを”砂漠”って言うんだ」

「へー、そんなとこでも生きてるのがいるのか」

「地面の下から水を得ていたり、ほんの少しの水でも生きることができたりするのがいるらしいな。さすがに行ったことはないから分からんが」


 ”インストール”された知識によれば、この世界の砂漠はどうもこの辺りからはかなり離れた国--前の世界で言えばUAEのような多種族間、部族間による連邦らしい--にあるようなので、この2回めの人生の間でも訪れる機会がくるのかどうかは怪しいところだな。


「エイゾウは色々知ってんなぁ」

「まぁ、いろんな知識に触れる機会だけはあったからな」


 基本的なところは前世の書物やらから得た知識だが。そこのところはもちろん言わず、かと言って嘘にもならないようにサーミャに返事をする。


「またなんか教えてくれよ」

「サーミャが聞きたいことが出てきたらな」


 俺はそう答えて、昼飯の準備をすべく、台所へと向かった。


 昼飯をテラスでみんなで食べて午後、一家総出で屋根に取り掛かる。作業の役に立つかはともかく、ルーシーも頑張れと言わんばかりに走り回ってわんわんと吠えている。


 屋根には作業が速い俺とリケ、木登りなどで高所作業ができるサーミャとリディが上がり、他の身長が高いメンツ+クルルは下から屋根板を渡す係である。

 重なる部分を作りながら、少しずつ上へ上へと屋根を葺くと栩葺きのような屋根ができていく。

 重ならせる部分が大きいので本当に少しずつしか進まなかったが、この作業にすっかり慣れつつあるみんなのお陰で、まだかろうじて日がある間に屋根までを終えた。


 俺は思わず出来上がった屋根の上で両腕を上げ、


「完成だー!」


 と叫んだ。同じくまだ屋根に登っている3人も手を上げ、クルルとルーシーを含めた下にいるみんなもやんやと拍手喝采している。

 しかし、デカいものができたときってのは嬉しいものだな。前にちょっと考えていた、クルルとルーシーの小屋へ行くための渡り廊下も早めに作るか……。


 ずっと廊下に放置してあったベッドを新しくできた部屋の片方に放り込み、これで完全に完成だ。

 新しく突き当たりになる部分の部屋を、しばらくは物置として使うことになる。

 そこで俺は気がついた。


「今気がついたが、部屋と廊下で壁板つながってないんだな」

「そうよ」


 ディアナが答える。俺はそのまま「なんで」と聞こうとしたが、


「ここから廊下を延ばす可能性もあるから。その時にこうしておいたほうが楽でしょ」


 と先回りされ、俺は何も言い返せずに、そのままポリポリと頭をかいて台所へと引っ込んだ。

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