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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第8章 帝国の皇女編
333/980

完成

 心鉄の部分の残り2つを作る。ここはもう手慣れてきて、すぐに終わった。

 今日は皮鉄を打ったら終わりだな。3つの四方ということは計12枚の板を整形する必要があるので、それなりに時間はかかったが、なんとか日が暮れるまでには終えられた。


 翌日、サーミャ達はアンネを連れて狩りに出ていった。アンネは都に行ったあとそのまま帝国に帰る流れになるんだろうし、都へは俺とアンネだけ行くことになっているから、サーミャたちが一緒にどこかに行くのは今日以外にはない。

 俺は槍を作らなきゃいけないが、みんなでピクニックにすればいいのにとは思うし、実際そう言ったのだが「働いている人がいるときに行くのは憚られる」とかなんとかで、あくまで作業として狩りに出ていった。

 獲物は獲れても獲れなくてもかまわないから、のんびりやってくれれば良いんだが。


「いってらっしゃい」

「いってきまーす」


 俺とリケでみんなを見送る。クルルとルーシーもお散歩代わりに付いていった。アンネが嬉しそうに「行ってきます!」と手を振っているのもこれが見納めかと思うと、ほんの少し印象的なように思えた。


 角柱状の心鉄に鍛えた皮鉄をくっつけていく。4面一度には出来ないが、俺の作業速度であれば1面を処理している間に、温度が上がりすぎない範囲で別の1面を加熱しておくことも無理ではない。

 これも魔力で動くフイゴのおかげではあるが。


 2本分の皮鉄を貼り終えたあたりで昼食くらいの時間になったので、朝食のスープに具材を足して温め直したものを昼飯として食べながらリケと話をする。


「親方、いつになく仕事が早いですね」

「手慣れてきてるからなぁ」

「同じようなのをたくさん作れたりはしないですかね」

「手間そのものはかかるから、なるべくやりたくない感じではあるな……。作りは同じにしておいて、今回みたいに心鉄と皮鉄で素材をかえるようなことをしなければ、手間はあまりかからないかも知れないが」

「なるほど。でもそれだと今まで作ってきたのとあまり変わりませんね」

「そうなんだよなぁ」


 今作ってるのと変わらないのなら、そっちのほうでいいという事になる。北方風の槍よりも、ここいらで一般的な形式の方が売れそうだし。


「特注というわけではなくても、北方風の槍が欲しいって言われたら考えるくらいかな」

「そうですね。あまりうまみはなさそうです」


 俺がそのあたりに無頓着なせいか、ドワーフであるせいか、リケのほうがこの辺の判断はシビアだ。

「真っ当な品物には真っ当な報酬をもらうべき。それが品物と職人に対する礼儀である」というのが彼女の主張だし、俺もそれに異論はないのだが、どうもチートに頼っている感覚が強くて「いくらでもいいや」となりがちである。この辺は改善していかないといけないだろうな。


 パパっと昼食の後片付けをしたら、作業の続きである。日が沈む頃には仕上げてしまわないとな。


 加熱して叩いて整える。叩く間に次叩くものを火床に突っ込んでおいて少しずつ加熱したりと時間の短縮も図っていく。


「よーし、穂は出来た」


 そう言いながら窓の外を見る。今から石突を作って、柄を作るまでの時間がありそうだ。組み上げは最悪移動中でも出来るし。


 石突はとにかく硬く作り、形状はキャップ状にする。凝った装飾をつけてもあまり意味はなさそうなので、シンプルなものにしておいた。このあたりは能力に頼って同じものを4つ作った。

 柄になるものは最初に作った柄を参考に、庭に転がしてあった材木からよく目の詰まったものを選んで4本作成する。

 とりあえず1本組むか。


 試作品と同様に柄に挟み込んで、目釘を打ち、上から革紐をぎゅっと巻きつける。石突の方は釘で留めてしまうことにした。そうそう補修したりするものでもないしな。

 こうして1本が槍として完成した。


「ちょっと試しがいるかな」

「念の為ですか?」

「うん」


 俺がやっても良いんだが、やはりここはヘレンに頼みたいな。そう思っていると、ちょうど鍛冶場の鳴子がカランコロンと音を立てた。こっちが鳴ったと言うことは、家の戸が開いたのだ。


「ちょうどいい、ヘレンに頼もう」

「そうですね」


 俺は完成した槍を手に、みんなを出迎えに行った。


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