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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第8章 帝国の皇女編
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帰宅と意図

 今日は店につくなり2階の部屋に上がったのだが、裏庭に行ってみるとそこでクルルとルーシーがいつものように丁稚さんに構ってもらっていた。


「いつも済まないね」

「いえいえ。ルーシーちゃん大きくなりましたねぇ」

「そうだなぁ」


 丁稚さんがルーシーの頭をなでながら言った。まだまだ子犬(子狼)と言っていいサイズではあるが、この短い期間に拘わらず大きくなっている。自分で荷台に上がれるようにもなったし。

 これが狼の魔物だからなのか、それとも森の狼はこういうものなのかまではわからないが。成長があんまり早いようなら、色々と考えないといけないかもなぁ……。

 丁稚さんにチップを渡したらすぐに出発だ。街中ではアンネに布を被っておいてもらう。行きと荷物の量は変わらないか、むしろ多いくらい(主に炭と土と鉄石のせいだ)なので、帰りもアンネが目立ってしまうということもないだろう。

 来たときとは別だが顔見知りである衛兵さんが街の入口に立っていたので、少し緊張しつつも会釈をしたが、特に何かを言われることもなく通り過ぎた。止める理由がないわな。


 街道に出ると来たときのように気持ちのいい風が草原を渡り、神様か何かが緑の絨毯をその手でそっと撫でているようにも見える。空は太陽の光を受けて青く輝いている。つくづくアンネに見せられないのが残念だ。

 途中で「少しくらいは良いのではないか」という話も出たのだが、万が一を考えると森に入るまでは止めたほうが良いだろうという事になった。

 事がうまく運べば、帰りにでも楽しんでもらいたいものである。


「ぷはぁ~」


 森に入って少ししてから、アンネに被せていた布を取り払う。大きな体躯がグッと伸びをして、より一層大きく見える。


「お疲れだったでしょう」

「いえ、思ったよりは揺れがひどくなかったので平気ですよ」

「それは良かった」


 うちの荷車には少しだけ時代を先取りした技術のサスペンションを搭載してあるから、普通の荷車よりも乗り心地はいいはずである。わざわざそれをこっちから言うことはないが。

 森の中も街道や草原ほどではないが、晴れた日の気持ちよさを感じることが出来る。ずっと森の中にいるとわかりにくいが、木々の匂いをゆっくり感じられるのはある種の特権かも知れない。

 時折、鹿やリスなどにルーシーが反応して尻尾をパタパタと振り、俺の肩のHPが微減(最近は少し手加減を覚えたらしい)した他には何事もなく家にたどり着いた。


 荷物を皆で手分けして運び入れ、全員で居間に集まり茶をすする。


「アンネさんを連れてこいということは、そのまま帰す気だろうな」

「そうね」


 ディアナが頷いた。まぁ、それ以外で俺と一緒にアンネを呼ぶメリットがないからな。最後の危険というわけだ。


「今の状況で何事もなく帰るのに一番いい方法は、非公式でも外交特使として扱うことだから。そうすれば護衛もつけられる」

「来るときに隠密だったのは問題にならないか?」

「そこはなんとでも理由はつけられるわよ。周辺諸国を無用に刺激しないためだったとかね。どのみち帰りも派手にはできないんだから」

「じゃ、侯爵の家で会談の予定があったことにする?」

「もしかすると”白銀宮”まで行かなきゃならないかもだけど」

「第七とはいえ、私は皇女ですからねぇ」


 のほほんとした声で、ディアナの言葉をアンネが引き取った。白銀宮は王族が諸外国の要人と会談するための屋敷らしい。ちなみに別に白銀で装飾されているとかいったことはないそうだ。

 名前だけでも立派にしておくことで、来た人間に扱いが良いことを知らしめる手法の1つだとかなんとか。俺にはそういう気の回しかたは無理だな……。


「大臣で侯爵のところならそんなに格落ちってわけでもないけど、体面を考えれば王族が対応するのが良いでしょうね」


 あの2人のことだ。その辺りは考慮済みだろうな。いずれ4日後には終わるのだ。そこまでは誠心誠意、槍づくりとアンネの対応に腐心するとしよう。



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