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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第8章 帝国の皇女編
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家に帰り着く

 ガサゴソと音を立てながら移動する。この森の動物なら大体はこれで逃げるし、今追いかけている家族たちにもこの音は聞こえているだろう。むしろ「何者かの接近」を知らせておきたい。

 あっちにはサーミャがいないし、匂いで誰が来ているのかを判断するのは難しそうだからだ。今回、追いかけているのは俺たちだが、これがさっきの追っ手だった場合を考えると、警戒されたほうがむしろ安心できる。

 そろそろ追いつくかもしれないと思ったとき、茂みをかき分けて小さな影が飛び出した。殺気も何もないから俺もサーミャも、そしてヘレンも反応が遅れる。

 しかし、その影はと言うと、


「わん!」


 と可愛い声で鳴いた。そうだった。ルーシーがいればある程度は誰が近づいたのかは分かるか。サーミャよりも鼻が利くはずの彼女なら、覚えのある匂いかどうかは判断できるだろう。

 俺は雨の中パタパタと尻尾を振るルーシーを抱き上げた。尻尾の動きが一層激しくなる。


「よーし、それじゃあ一緒に帰るか」

「わんわん!」


 その様子を見て、ヘレンが思わずクスリと笑う。ルーシーが迎えに来たということは、すぐ近くにみんながいるのだろう。俺たちは更に足を早めた。

 程なくして、みんなの姿が見えるようになる。ここから家まではもう少しだ。


「おーい!」


 俺は大声でみんなを呼ぶ。全員がこっちを振り返った。一番背が高いのは言うまでもなくクルルなのだが、アンネもかなり背が高いので目立つ。追っ手からするとかなり楽だろう。


「みんな大丈夫か?」


 俺が聞くと、ディアナが答えた。


「ええ、こっちはなんともないわ。そっちは?」

「こっちも無傷だよ。“片付け”も済ませといた」

「そう。良かった。急にルーシーが走り出したから……」

「多分、俺の匂いがしたんだな」


 こっちには追っ手を回さなかったのだろうか。1人2人伏せてあると思ったが。もしくは――


「早く帰りたいところだが、一度周囲を捜索して、跡を消しておこう。おそらく後をつけられてはないと思うが、念の為だ。ヘレン、サーミャ、ディアナは来てくれ。ルーシーもおいで。後のみんなはここでもうしばらくの辛抱だ」


 家に帰ってから寝込みなんかを襲われてもつまらない。ルーシーがなんの反応もしないから大丈夫そうだが、命に関わることだ、念を入れるに越したことはない。


 ゆっくりと周囲を巡回しつつ気配を探る。前に女性陣(ルーシーを含む)で、俺が殿しんがりをつとめながら、その辺の枝を折ったもので足跡を消していく。


「どうだ?」

「いや、いないな」

「アタイも何も感じない」

「そうね」

「わん!」


 ぐるりと1周したが、何の気配も感じなかった。遠くに残してきたみんなの姿が見えている。俺たちは再びそこに戻っていく。もちろん、跡は消しながらだ。

 アンネはともかく、リディとリケは戦闘はそこそこ止まりだ。つまり、主力は全部こちらに集めている。起死回生を狙うならこのタイミングかと思ったが、動きがないということは刺客はあの5人だけだったようだな。


「よし、じゃあ今度こそ家に帰ろう」


 みんなから賛成の声が上がり、俺たちは再び家に向かって歩きだした。


 家に帰り着くと、まずクルルとルーシーを小屋に入れて、貯水槽の水(思ったより水が貯まっていた)をかけて体に付いた泥を落としてやる。ルーシーがプルプルと体を振って、俺たちにかかるが元々雨に濡れているので気にならない。

 その後でクルルとルーシーの体をタオルで拭いてやった。ここ何日か大活躍だな、タオル。また買い足しておこう……。


 こうして、短い見送りと逃避行は終わった。これからは反撃の方法を考えなくちゃな。

 俺はそんな仄暗い炎を胸のうちに抱え、家の扉をバタン、と閉めた。


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― 新着の感想 ―
[一言] クルルってアンネよりもデカかったのか、コモドオオトカゲみたいなのを想像してたけどどうやら違うみたいね
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