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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第1章 異世界での暮らし方編
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今度は本当に新しい部屋

 バタバタしたが、この日と翌日は鍛冶仕事を休みにし、翌日、熊を湖に取りに行く。重い熊を引き上げ、(はらわた)を抜いて心臓だけは土に埋め、残りを茂みに捨てる。熊の胆嚢は薬になるらしいのだが、どれがそれなのか分からないので諦めて一緒に捨てた。

 その後はいつもどおり運搬台をこしらえて家まで輸送する。熊の腕を持って運搬したときはリケに手伝わせられなかったが、運搬台があれば一緒に運べるので、手伝ってもらう。

 鹿よりもやや時間がかかって家についた。その後の捌く工程そのものは、ほとんど鹿と変わらない。無論、皮の固さや骨格、内臓の違いなどはあるが、作業しないといけない内容はほぼ同じだ。本来ならば作業しにくさとかが段違いなのだろうけど、特注モデルの切れ味のナイフ3本があれば、どうということは無かった。

 手の部分は珍味だとも聞いたことがあるが、処理がやたらめんどくさいらしいので、今回は食肉にするのをやめておいた。次回があるかどうかはわからないが、またあの死闘を繰り広げるつもりもないので、基本的には口にしない食材ということになるな。


 いつもより大量の肉が取れてしまったので、昼飯は豪勢にした。熊の肉は処理が悪かったのか、多少味は悪かったが、思ったよりは全然美味かった。残りは保存が利くように干したり塩漬けにしたりするが、しばらくはサーミャが樹鹿を獲らなくてもいいくらいの量がある。腐らせたらもったいない。

 昼飯を食い終わったら俺は休み、リケは鍛冶、サーミャは部屋増築の壁張りの残りをする。この日はそれで終わった。


 翌日、今日の作業を一通り終えたら、明日は街に行って卸す日である。昨日休んだぶんがあるので、水汲みと部屋の増築はリケとサーミャにやってもらうことにして、俺は朝イチから鍛冶に集中する。ナイフ、ショートソード、ロングソードの高級モデルをそれぞれ3本ずつが目標だ。

 ショートソードとロングソードの型を作って、鉄を流してバリをとり、一般モデルよりは少し集中して、鎚を振るって形を整える。型を乾燥させたり、鉄が冷めるまで待つ間に、ナイフの作業もやってある。

 最後にまとめて焼入れをして、研いで完成させた。ここまででギリギリ一日かかる。おそらくこれは(チート持ち)だからできる効率であって、普通ならもっと少ない数しかできないだろう。

「あんまり集中してて、昼メシの声もかけていいか迷った」

 とはサーミャの言だ。

 すべての作業を終えたので、作業場の火を落として片付けていると、サーミャがやってきた。

「今日はもう終わりか?」

「ああ。なんとか思ってた数出来たよ」

「そうか。じゃあ、ちょっと来てくれ」

「おう」

 ウキウキした様子で俺を先導するサーミャ。俺はのそのそとその後をついていく。


 一緒に居間に戻ってくると、なんとなしに違和感がある。ないはずのものがある、と言うよりは、あるはずのものがない。

「ああ」

 居間の一角、寝室の前に開口部が出来ている。違和感の正体はあれだ。

「部屋が出来たのか?」

「おう、2部屋な。廊下もつながった」

「おお、凄いな」

「今日、メシのとき以外はずっとやってたからなぁ」

 サーミャの後について、廊下を覗くと、そこにリケがいた。

「おう、リケ、ご苦労だったな」

「いえいえ、サーミャが頑張ったからですよ」

 最近の作業で結構完成しつつあったとは言え、今日できるとは思ってなかったな。

 廊下があって、そこに部屋の入口がある。ちゃんと傾斜のある屋根もかかっていた。

 ただ、扉は間に合ってないし、寝具や家具もないので、本当に「部屋ができただけ」という状態ではある。それでも逆に考えれば、それらを用意できれば完了ではある。

 効率よく作れば2~3週間ほどで揃うだろう。

「先に扉と寝具と家具を作って入れなきゃなぁ」

「え、部屋に扉をつけるんですか?」

「ん?」

 リケになんか凄いことを聞かれた気がする。

「そりゃあ、つけるだろ。女の子の部屋だぞ」

「いや、普通お客さんとか、家長と奥さんの部屋でもない限りはつけないですよ」

 あー。なるほどね。そういうことか。

「まぁ、そうかも知れんが、一介の鍛冶屋の家に書斎と寝室がちゃんとある、って時点で色々おかしいんだ。ここは俺の要望ってことで、弟子とか家族の部屋にもつけることにさせてくれ」

「親方が良いんなら、私は別に構いませんけど。サーミャは?」

「アタシも構わないぜ。そもそも家に住んだことないからな、アタシ」

「ああ、そうでしたね……」

「じゃあ、そういうことで。簡単でも良いから、蝶番作んないとなぁ」

 チートで作れば割と楽にできる気はするが、武器や農具とは違い、細かい作業にはなることは間違いない。どこまでチートで対応できるか試すには、ちょうどいいようにも思えるな。その意味でも扉はぜひともつけておきたい。


 熊肉の夕食を終えて、寝る時間になった。今日からはまた俺は書斎、女子2人は寝室だ。新しく出来た部屋はまだ使えないからな。女性陣は今日も俺が寝室、と言うことにしたかったようだが、もう痛みはかなり引いてるし、そろそろ日常に戻す必要もあるから、扉に引き続いてわがままを言わせてもらった。


 さあ、明日はまた街に出る日だ。今までと違って、カミロに卸すだけではあるが、売れた代金と、カミロが仕入れに成功していれば、鉄石、それに木炭の引取もある。

 俺は遠足前の小学生のように、ワクワクしながら眠りについた。

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