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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第8章 帝国の皇女編
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両手剣の完成

 昼飯は特に当たり障りのない話だけして終えた。下手に地雷を踏んでヤバい空気のまま午後の作業をしたくないからな。寝て起きれば忘れられるかもしれない晩飯とは事情が違う。前の世界で身につけた処世術的なやつである。


 昼飯前まででおおよその形は完成した。後は仕上げていくわけだが、うちの製品で大事なのは魔力がどれくらいこもっているかだ。

 アンネは家名持ち……というか帝室の人間なので、大なり小なり魔法の心得がある可能性が非常に高い。となれば製品にこもっている魔力を感知できる可能性もあるわけだ。

 そうでないなら、適当なところで切り上げて「はいコレ」と引き渡すことも選択肢に入っただろうが、ヘレンのショートソードを鑑定でもされていたらバレるだろうし、危ない橋を渡る必要もないので、ここから魔力を込める作業に入る。


 この作業はリケでもある程度は可能だが、それ以上は俺がやるしかない。なので、「細かい修正を入れる」として、昼飯の間に冷えた剣身を鎚で叩いていく。

 切れ味よりも耐久性を重視するように鎚で魔力を剣身にこめていく。長い剣身に魔力をこめるのには時間がかかったが、鋼にこめられる限界までこめることが出来た。


 その後はひたすらヤスリで凹凸をなくしていく。魔力のこもった剣身を削る作業なので、これも俺が担当である。砥石で刃をつけることはしない。こいつなら重さと硬さでたいていのものはぶち割れるだろうし。

 リケにはその間、鍔になる部品を作ってもらうことにした。コイツは後からピン留めだ。遠心力の関係で柄頭には負荷がかかりそうだが、こちらはそうでもなかろうと言う判断である。後は目につくところなので変えるなら自分で変えてね、という意味もある。

 ヤスリで一通り綺麗にしたら、焼入れをするのだが、長いので通常の水槽に沈める方式ではなく、大量に水をかけ続けるという方式にした。

 両手剣を熱している間に、皆で水槽の水をたらいやらに汲んでおき、その水を必死でかけ続けるという方式である。「はじめ」と「やめ」の号令のタイミングや加熱する範囲の見極めが重要であるが、そこも俺ならなんとかなる。


「よーし、じゃあいくぞ」

「はーい!」


 俺は熱した両手剣を空にした水槽の上に持ってきた。皆は手に手に水をかけるための何かを持って待ち構えている。


「……はじめ!」


 俺の号令で皆が水をかける。ジュウという音と、もうもうと立ち昇る水蒸気が鍛冶場を包む。一気に暑さが襲いかかってくるが、これに負けるわけにはいかない。

 頃合いをみて、俺は次の号令をかけた。


「やめ!」


 皆がピタリと手を止める。俺はじっと目を凝らして剣身の様子を見た。どうやら大丈夫そうだ。


「よし、大丈夫だな」


 俺の言葉に皆がはーっと息を吐く。ここまで集中しての作業は気疲れもするだろう。今日の晩飯はアンネのお別れ会も兼ねて豪華にするか。


「まだまだ作業はあるぞー」


 俺の言葉に肩を落としながらも、皆その目にはやる気が漲っていた。


 その作業を繰り返し、体内時計ではあと1時間かそこらで日が沈む頃、焼入れの作業が完了した。

 その後、皆が見守る中、リケが作った鍔を俺が取り付け、最後に「太った猫の姿」の刻印を入れて、ものとしては完成である。


「よし、これで完成だ!」


 わぁっと皆が歓声をあげた。こうやって完全に力を合わせての作業は初めてだったから、新鮮な感じだな。


「皆さん仲良しなんですねぇ」


 やはりどこかのんびりと、しかし少し寂しそうに言うアンネの言葉に、俺はこう返す。


「ええ、家族ですから」


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― 新着の感想 ―
[良い点] ドラゴンころしみたいなのできたw
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