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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第8章 帝国の皇女編
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次の製作物

「それで、何を作るんですか?」


 リケがワクワクを隠さず俺に聞いてくる。サーミャはやれやれといった顔でそれを眺めていた。


 作るものの方向性としては3種類ある。1つは今まで作った武器の発展型、1つはジャンルの違う武器、そして最後は武器以外のものだ。

 防具は恐ろしく手間がかかる(と、インストールが教えてくれている)ので、今日のところは止めにしておきたい。この3週間で長く時間が取れるようならディアナかヘレンの胸甲くらいは出来るかも知れないが。

 道具の(たぐい)も例えば鎌はここに来てすぐくらいに作ったが、それ以外だとこの間の(びっ)(ちゅう)(ぐわ)くらいなものなので、作るのも悪くない。

 だが、今回は武器を作っていきたい。以前に少し聞いたところでは、ヘレンはショートソードを1番得意にしているというだけで、一通りの武器を扱えるらしい。

 であれば、なにか新しい武器を作って試してもらいたいところだ。


 剣、刀、投槍に短槍、ハルバードに弓と、普通の武器、長柄武器、投射武器と作ってきた。


「次はメイスかな」


 鈍器は今まで作ったことがない。フランジつきのメイスなら相手が重装甲でも太刀打ちできる。……俺のチート全開のものであればメイスでなくてもいけそうな気はするがそれはさておき。

 それにかさばってはしまうが、メイスならヘレンが本業に戻るときもショートソードの予備武器として使えるだろう。フランジが多少傷んでも衝撃を与えることはできるし、それで助かる確率がちょっとでも上がるならそれに越したことはない。

 実際どうなのかはヘレンに聞いてみないとだが。なので、そのあたりを聞いてみると、


「んー、そうだな。あんまり重いと動きが(にぶ)るけど、エイゾウの剣もずっと無傷というわけにもいかないもんな。そういうときはあったほうが良いかも」


 という回答である。まぁ、アポイタカラを使ってるから向こう数十年レベルで大丈夫な可能性もあるが、完全に保証できるものでもない。


「じゃ、メイスで決定だな」

「おお……」


 リケの目のキラキラが一層輝きを増していく。言ってもメイスだぞ?構造自体はめちゃくちゃ単純だぞ?

 それでも見学すると言うので、そこは好きにさせておく。他の皆は板金を作ってくれるらしい。


 最初はフランジから取り掛かる。放射状に飛び出している部分で、ここの形状も様々であるのだが、今回はシンプルにカーブを描いた山形にしておく。

 板金を火床で熱して、目的よりも分厚いくらいの厚みに整える。すると、目的の大きさよりもかなり大きい板金になった。

 その板金を再び熱した後、タガネを使って分割していく。1枚の板金からできたのは3つなので、同じ作業をもう2回繰り返し、9つの小片が出来上がる。


 小片の1つを熱し、金床で叩いて、先端がやや尖った富士山のような形にしていく。山の裾野の長さは握りこぶし2つ分くらいだ。

 鈍器なので、成形するときには硬さが増すように魔力を込めていく。形ができたらそのままでも良いのだが、せっかくなのでヘレンが希望する、ちょっとした装飾を入れることにした。

 装飾と言ってもうちの工房のマークである、"太った猫の刻印"だ。それを強度が落ちない程度の深さで浮き彫りにしていく。ちょっと時間がかかったが、可愛く仕上げることが出来た。

 出来上がったものをリケが手にとってまじまじと見る。


「これはかなり硬いですね」

「メイスだからな。硬さのほうを優先した」


 魔力による硬さの増強なので、鉄自体を硬くしたときのように割れやすくなる、といったことも起きにくい。鉄自体をただ硬くしたらパキッといきかねないからな……。


「うーん、これくらいならなんとか?いやいや……」


 フランジの1片を見ながらブツブツと独り言をはじめたリケに苦笑しながら、俺は次の1片を作るべく、小片を火床に入れた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすい文体でとても好ましい。無闇に難しい漢字や表現を使わず淡々と日常を描く中で一つ一つの出来事がストーリーとして映えている。武器作成の記述も詳しすぎず、かと言って手を抜いていない。 […
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