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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第7章 アポイタカラ編
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お買い上げ

「それで、ディアナはどれにするんだ?」

「わたし?」


 ディアナはキョトンとした顔をして言った。俺は頷く。


「そりゃあそうだろう。みんなも楽しみにしてると思うぞ」


 俺の言葉に今度はディアナ以外の全員がウンウンと頷いた。


「俺たちじゃディアナみたいにセンス良く選べないからな。すまんが自分で選んで貰わないといけないが」

「ええー、じゃあエイゾウ付き合ってよ」

「俺?」


 次はディアナが頷く番だった。


「自分で選んで、それを見せるだけなんてつまらないもの」

「そういうもんかね」

「そういうもんなの」


 ディアナは綺麗な顔でクスッと笑う。俺は頭を掻き掻き、並べられている装飾品に近づいた。

 ううむ、綺麗だということと、ある程度のデザインの良し悪しは分かるが、どれがディアナに一番いいかまでは分からんぞ。

 あと分かるのは工芸品としての出来――つまり、鍛冶屋としてみたときにどれくらいの出来か、だ。

 でも、これはわかったところであまり意味はない。仮に神の手と言われる職人の手になる装飾品であったとしても、ディアナに似合わなければ一銭の価値もないのだ。


「それじゃあ、これはどう?」


 ディアナはシンプルなデザインのネックレスを手にとって胸元に当てた。今着ている服は普段着よりは派手めであるが、”貴族のお嬢様”といった感じはしない。

 その服とディアナの髪とマッチしてよく映える。


「いいんじゃないか」


 一方の俺は完全に”買い物に付き合っているお父さん”のようなコメントを吐き出してしまう。


「ちゃんと見てる?」

「もちろん。見た上で似合ってると思ったから言ったんだ」


 ディアナが少しだけ頬を膨らませ、俺は内心少し慌てつつ釈明すると、膨らんだ頬が元に戻った。


「なぁ」

「なに?」

「完全に夫婦みたいだな」

「そうねぇ」


 小声でサーミャとリケが会話しているのが聞こえるが無視だ無視。


「じゃあ、エイゾウはどれがいいと思う?」

「また無茶なことを……」


 俺は顎に手を当てて考え込む。さっきディアナが手に取ったようなシンプルなネックレスもいいと思うが、この少し大きめの青い宝石が嵌ったデザインのペンダントも似合う気がする。


「これなんかどうだ?」

「あら、いいわね」


 俺が示したペンダントを手にとって、胸元に当てるディアナ。


「うん、似合ってると思う」

「じゃ、つけて」

「ええ……」


 ディアナはくるっと後ろを向いた。ヒキワやカニカンみたいなものではなく、フックを引っ掛ける方式だ。

 俺はそっと近づいて、ディアナのうなじあたりに手をやる。「失礼します」と言わないのはせめてもの抵抗だ。

 一瞬ディアナがピクリとしたが、手元が狂うこともなく引っ掛けることが出来た。


「どう?」

「おおー、いいな!」

「親方が選んだってのがまたいいですね」

「(コクコク)」

「ちょっと羨ましい……」


 ディアナが俺以外の皆に見せる。とりあえずディアナにも皆にも好評なようで良かった。これで「センス皆無」と言われたら、向こう3日は立ち直れない。


「よし、じゃあ買うか。すみません、これ全部ください」

「「「「「えっ!?」」」」」


 俺の言葉に全員が驚いた声を出す。店の人も驚いているように見えるが、買っていくとは思ってなかったのだろう。我ながら金持ってるようには見えんしなぁ……。


「いや、このまま買わずに出るのも失礼だろ。誰か1人にだけ買うとかもなしだ。気になるなら普段仕事の手伝いしてくれてる報酬だと思えばいい」


 これとは別に共通のものは作るが、それはそれ、これはこれだ。


「そういうことで、お願いします。いくらです?」


 これ以上揉めない間にさっさと買ってしまうべく、店の人に言うとほくほく顔で会計をはじめた。

 そこそこの値段ではあるが、今までの稼ぎを考えればどうということはない。ないはずだ。持ってくるときにまだかなり残ってたし。


「ありがとうございました!」


 店の人達が揃って頭を下げてくれる。ちょっとめかしこんではいるが、あくまで普通の格好なので若干の違和感がある。

 でもまぁ、他人の感謝をこういう形で受け取るのも悪くはない。


 こうして、俺達は宝飾品店を後にした。


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