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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第7章 アポイタカラ編
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旅行の準備

 商談室を出て、まず裏手のクルルとルーシーを引き取りに行く。クルルはいつも通りのんびりとしていたが、ルーシーは丁稚さんにじゃれついて、丁稚さんもまんざらではなさそうに相手をしてやっている。

 そこへ俺たちが戻ってきたのを見て、丁稚さんが慌てて頭を下げた。


「す、すみません!」

「いや、うちの子の面倒を見てくれてたんだから、気にしなくていいですよ」


 俺はそう言いながら、恐縮しきりの丁稚さんにチップを渡す。今回はルーシーの面倒も見てくれていたから、その分を今回から少し増額だ。


「いつもありがとうございます」

「これからもうちの子をよろしく頼みますね」


 俺はそう言って丁稚さんに笑いかける。問題は俺もマリウスや番頭さんとは違い、カミロと同じくイケメンでないオッさんなのでぎこちないことだが、こういうのは心が大事だ。

 ……そう思おう。


 荷物を満載にした荷車にクルルを繋いで皆で乗り込む。体の大きさ的にまだ飛び上がれないので、ルーシーはディアナが抱えて乗り込んだ。

 そのうちルーシーも自分で飛び乗るようになるんだろうか。その時が楽しみなような、今のままでいて欲しいような複雑な気分だな……。


 クルルが牽き、リケが操る竜車が街をゆっくりと進んでいく。街の喧騒が流れていくのをルーシーが尻尾をふりふり、荷車の縁に手をかけて眺めている。

 観察していると、ルーシーがそうやって見ているのに気がついた通行人も何人かいるが、特に驚いた様子はなく微笑んだりしていたので、時々はある光景なのかも知れない。

 今のところ見た目は可愛い子犬と大差ないし無用の混乱はないようだが、大きくなって狼になった時に大丈夫なのかはぼちぼち考えていかないとな。

 定期的に街には行くし、俺としては町の人達が見慣れてくれるのが一番いいんだが。


 町の入口で衛兵さんに手を上げて挨拶すると、衛兵さんも手を上げて返してきた。ここからは街道だ。

 白い雲が散らばる青空を背景に、草原が広がって道が伸びている。俺たちの竜車はそこを進んでいく。クルルの調子は今日も絶好調らしく、なかなかのスピードが出ていた。

 野盗が見たとして、ビビって襲うのを止めるのではないかと思うくらいのスピードだ。

 それに負けず劣らずのスピードでルーシーの尻尾が振られている。ルーシーももう少し怖がるかと思ったが、全然平気そうだな。もしかすると俺達が平気な顔をしているから、大丈夫だと理解しているのかも知れないが。


 何事もなく街道を行き過ぎると、今度は森の中だ。

 最近熊を仕留めはしたが、いろいろな生き物がいるのはこの森の中だし、速度も落ちるから勝手知ったるとは言っても警戒は怠れない。

 そうして無事に家にたどり着いた。


 家に着いたら荷物を降ろして運び込みだ。家族で分担して次々と運んでいく。クルルも少し手伝ってくれるが、ルーシーはまぁ、賑やかに応援してくれればそれでいい。うん。

 一通り終わったら自由時間だ。俺とリケは自由時間といいつつ、鍬の生産についての打ち合わせなんかだが、サーミャとリディは畑、ディアナとヘレンはルーシーとクルルを構うために外へ出ていった。


 その日の夕食時、俺は皆に話した。


「とりあえず明日と明後日だが、明日は鍬の生産を進める。で、明後日は都へ行くわけだが、何か準備しておくことはあるか?」

「都へ行くって言っても、日帰りでちょっと寄るだけよね?」

「そうだな」

「じゃあ、別に着るものとかは意識しなくても大丈夫だと思うわよ。パーティーに出る話でもあれば別だけど」

「それはないし、君の兄さんからされても断るぞ……」

「兄さんが残念がるわね」


 俺の質問にはディアナが最後は笑いながら教えてくれた。都住まいだったディアナの言葉なら間違いないだろう。


「どうせだから都で他に買いたいものとかあれば、今のうちから考えておいてくれ」

「欲しいものはだいたいエイゾウに頼めば作ってくれるからなぁ」


 俺の言葉をサーミャが混ぜっ返し、他の全員がうんうんと頷く。


「俺でも作れないものは……そう言えばそんなにないな」

「でしょう?」


 何故かリケがドヤ顔をする。俺の場合鍛冶屋がメインではあるが、生産でもチートを貰っているから、該当すればそこらの職人くらいのものは作れてしまうのだ。

 アクセサリーなんかも作ろうと思えば作れるから、元になるデザインがピンとこないだけでデザイナーがいればデザインした通りのものが出来上がるに違いない。


「まぁ、偶には俺が作ったやつ以外のものに触れるのも良いんじゃないか?」

「それはそうかも知れませんね。見聞が広がります」

「だろう? じゃ、みんな考えておいてくれ」


 俺の言葉にリケが乗っかってくれて、俺はほっと胸をなでおろすのだった。


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