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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第7章 アポイタカラ編
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今回の商談

 醤油と味噌が調達出来たのは喜ばしいが、それ以外にも調達しないといけないものはある。

 いつも通りの品物ではあるが、食べ物関連で言えば塩や胡椒なども大事な品には違いない。

 女性がほとんど……と言うか男はクルルやルーシーを入れても俺1人だが、6人(プラス2頭)の家族だからそれなりに消費量は多いし、特に塩は保存にも使うからな。

 何より忘れちゃいけないのは、生活するのに直接は必要ではないが、間接的には生命線の炭や鉄石だ。これがないと収入源である武器を作れないから、いつかは干上がってしまう。

 その辺の話も済ませると、部屋の外から戻ってきた番頭さんにカミロが指示を出す。


「戻ってきたばかりで追い出すようなマネをしてすまないな」


 俺がそう言うと、番頭さんはニッコリと笑って


「それが仕事ですから、お気になさらず」


 そう言って出て行った。マリウスもそうだが、イケメンがああいう笑い方をすると似合うな。俺やカミロではああはいかない。


「それでな」


 出て行った番頭さんが扉を閉めるかどうかくらいで、カミロが切り出した。

 うちの家族に聞かせてもいいということは、別段内密の話でもないんだろうが、このタイミングなのは何かあるのだろうか。

 俺は少し身構えて、先を促す。


「ちょっと作ってほしいものがあるんだが」

「なんだ? ややこしいものでなければお安いご用だが」

「なに、そんな難しいものじゃない」

「じゃあ、量が多いってことか」


 俺の言葉にカミロが肩をすくめた。正解ビンゴか。


「武器じゃなくてすまないんだが、鍬を大量に作って欲しいんだ」

「鍬か」


 鍬くらいなら難しいものでもない。作ったこともある。最初にこの街に来たときに売り物にしたやつだ。

 あのときは売れなかったが、こうして売り物として頼まれる日が来るとはな。

 若干の感慨深さを感じながら、それをなるべく顔には出さないようにして、リケの方を見た。

 俺と視線が合ったリケは頷いている。数にもよるとは思うが、それなりに量産は可能ということか。人手も増えてるしな……。


「わかった。やるよ」

「そうか。助かる」

「それで、いくついるんだ?」


 大量に、と言われても50本程度なら剣を作れたし余裕だと思うが、100本となると難しいかも知れない。

 いや、今ならいけるか? どこかのタイミングでうちの生産能力の限界は知っておきたいところかも知れない。


「あまりに少なくても困るが、あればあるだけいい」

「随分曖昧だな」

「今回はあっただけ売れるからな」

「そうなのか?」


 俺の言葉にカミロが頷いた。


「前に話しただろ、帝国から切り取った領土の件だよ。帝国の領土だったとは言っても、実際には放棄されたような土地だからな。まずは開墾をしないとはじまらない。広さとしてはかなりあるし、それなりの人数が向かうことになってる。そいつらの鍬がいるのさ」

「なるほどね」


 向かわせるなら小作農がメインだとは思うが、ここいらの小作農は地主から農具を借りていることが多い。つまりは自分たちの農具は持っていない。

 今回はその土地に行けば小作農から自作農になれるという触れ込みなんだろう。墾田永年私財法みたいだな。考えることは世界が違ってもそう変わらないと言うことか。

 そして、自作農であれば農具も自前になる。国が支給するにせよ、農民の自弁にするにせよ、その分の農具が必要だというわけだ。

 俺の工房には鍬だけの発注だが、鎌なども必要になるはずだ。その辺はまた別の鍛冶屋にでも依頼しているのだろう。

 土地が放棄されてて土が硬いなら、うちの鍬が労力も減ってよさそうではある。

 それに農具全てをうちで引き受けたら独禁法にひっかかりそうだしな。まぁそんな法律があるかどうかはさておき、やっかみは受けたくない。


「じゃあ、50本以上を目処に頑張ってみるよ。来週でいいか?」

「……ああ、頼んだぞ」


 俺の言葉にカミロが一瞬目を丸くしたが、すぐに元の顔に戻ってそう言った。


「それで今度はこっちの話なんだが、マリウスに伝言をお願いしたい」

「いいぞ、どうした?」


 俺は明後日に日帰りで都に行くこと、その時にエイムール家でクルルとルーシーを預かって欲しいことを伝えてくれと話した。

 さすがに都の中をクルルをつれてうろうろするわけにはいかないし、その時にクルルだけ仲間はずれもかわいそうだから、苦渋の決断としてルーシーも残すことにしたのだ。

 一方的にこっちの都合だから駄目な場合もある。その時は金を出してそれなりの宿にでも預けるしかないな。


「わかった。伝えておこう」


 俺とカミロは今回の話を終えて、握手をするとみんなで帰り支度を始めるのだった。

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