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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第7章 アポイタカラ編
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欲求

 翌日、なんとか五角形に出来た刀身を整えていく。今日も工程自体は変わらないので、リケ達には普段の作業をして貰っている。

 この火造りの工程で刀身としては完成する(この後、つばつかさやを作る必要はあるが)ので、この後の工程をいくつか省けたとしても、ここまで以上に気の抜けない作業になってくる。

 まず最初に切先を作った。刃の側に先端を斜めに断ち切ったらそこを叩いて丸く、そして尖ったようにする。

 今回の切先は大(きっさき)である。猪首切先と迷ったのだが、同じのも芸がないと思ってこうしてみた。


 たっぷり午前中の時間をフルに使って切先の形を作った。なかなかハッタリの効いた感じに仕上がっている。

 武器を世の中に出すことに躊躇いはないし、これは護身用が主眼であるというのは自分でも分かっている。

 しかし、であるならば使わないに越したことはない、と言うのも未だ偽らざる気持ちではあるのだ。

 大鋒くらいでビビる獣や人がどれくらいいるのかは疑問ではあるが、突きつけた相手が少しでも戦意を喪失して立ち去ってくれるなら、それで十分なのだ。

 俺はきりの良いところまで終わったので、まだもう少しだけ作業をするらしい女性陣(若干悲しいことに、つまりは俺以外の全員なのだが……)を鍛冶場に残し、昼食の準備をしに家の方へ戻った。


「うーん、やっぱりこっちに戻ってくると涼しいな」


 単純に鍛冶場と家の温度差と言うか、向こうは常に火をガンガンに使っている。

 それも、鉄を加工できる温度で。だから鍛冶場の室温はサウナどころの話ではない。扉1枚隔てただけで涼しいと思える程度には温度の差があるわけだ。

 ヘレンは来て間もないから完全には慣れていないようだが、他のみんなはすっかり慣れっこではある。

 ただ、慣れっことは言ってもあくまで慣れていると言うだけで、汗をかかないわけではない。皆それなり以上に汗をかく。


 だから鍛冶場には常に水分補給できるように水瓶を置いて、そばにそれぞれのカップ(木製で名前を彫ってある)もあって、皆適宜水分を摂っている。

 その水分を摂っただけ、汗もかくわけだ。だから、仕事が終わったら俺もみんなも体を濡らして絞った布で拭いたりしている。

 そもそも炭やらで汚れるのもあるが、拭いた後の布は結構な汚れがついている。つまりはそれだけ体の汚れはあるということだ。

 この世界の今時点での衛生観念でもこの辺がスタンダードなので、俺はそれに合わせているし、皆からも特に不満が出ているわけではない。

 貴族のご令嬢だったディアナですら特に不満を漏らさないところを見ると、貴族レベルでも似たようなものなのだろう。そう言えば、エイムール伯爵の家でも基本的には湯で体を拭くくらいだった。


 しかし、不満が出ていないのとローマ帝国人並にお風呂が大好きな(元)日本人として、こう言うときにひとっ風呂浴びてさっぱりしたい欲求があるのは別の話だ。

 ”キンキンに冷えたビール”までは望まないが、少なくとも温かい湯に浸かりたい。

 風呂の問題は水量と燃料だ。どちらも豊富に使う。このどちらも解決できるような方策を考えついたら、皆に話して湯殿ゆどのを建てるか……。

 俺は軽く体を拭いたあと、昼食の準備を進めながら今後の計画に思いを馳せるのであった。


 昼食が完成するころには、皆も家の方に戻ってくる。軽く体の汚れを落としたディアナが家の扉を開けると、間髪入れずにルーシーが飛び込んできた。

 ディアナが開けた扉から外を見ると、少し離れたところでクルルが草をんでいる。

 彼女は何でも食うのだが、肉よりも植物の方が好みらしく時々ああしている姿を見る。流石に家には入れないが、この間みたいに外で飯を食う機会は増やしても良いかも知れないな。


 昼食を終えたら、作業の続きに戻る。ここからは反りを作っていく作業になるのだが、ここで1つひらめいた。

 アポイタカラは魔力をこめると、そこの色が少し変わる。これはその部分の光り方が変わったりするからのようなのだが、今回はそれを利用して刃紋を入れられるのでは?と言うことだ。

 焼入れをしないので刃紋の無い刀になることを覚悟していたが、これが上手く行けば思った感じの刀に出来るかも知れない。

 俺は内心ワクワクしながら、だいぶ形になってきた刀身に鎚を入れていった。


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― 新着の感想 ―
水はともかく熱源は有り余ってるからな 風呂は導入しやすい環境だろう
[気になる点] 今まであまり言及されてなかったけど、ついに風呂作り計画が
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