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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第7章 アポイタカラ編
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おやすみなさい

 俺の刀を作る。その響きだけでもワクワクはするが今日はお休みだ。

 休めるときにはしっかり休んでおく。良い仕事の鉄則である。

 思えばこっちに来た当初は生活がかかっているのもあったが、随分とあくせく働いていたような気がする。


 今は食っていくだけなら週に3日も剣を打てば困らない。

 リケが手伝ってくれるなら、俺の分担は高級モデルをいくらかだけだから、1日打てば事足りてしまう。

 まぁ、それも安定して買い取ってくれるカミロがいてくれるおかげではあるのだが。

 そこそこの長旅から帰ってきたところだし、ルーシーも来たばっかりなので、もう少し先の話にはなってくるが、今回みたいなピクニックではなく、どこかでちょっとした旅行にでも行こうかな。

 もちろん、みんなの同意が得られたらだが。


 長らくそうしてのんびりしていたら、日が傾いてきた。家に帰ってきたのも昼を少し回っていたから当たり前ではあるんだが。

 みんなでぱっぱと片付けて、家に入る。クルルも小屋に戻っていく。ルーシーはというと、今のところは俺たちと一緒に家に入るらしい。

 それでも、一番最初にサーミャが入っていったのを見てからだったから、警戒心がないわけではないようだ。

 おずおず、といった感じで家に入ったかと思うと、しきりに周囲の匂いを嗅いで、あちこちをうろつき始めた。

 今のところ火が入っているものもないし、危ない刃物は片づけてあるので、とりあえずは好きにさせておく。


 居間と台所を1周したら慣れてきたのか、俺の部屋の扉を前足でカリカリしはじめたので、開けて入れてやる。

 やはり匂いを嗅ぎながら部屋の中を一周して出てきた。同じことを客間とみんなの部屋で繰り返したあと、居間の隅でぺたりと寝そべった。どうやら家の匂いは覚えたので、居心地のいいところで過ごす、ということらしい。

 しかし、それもすぐに終わりを告げる。ディアナとヘレンが自分の部屋から木剣をもって稽古に出たからだ。ルーシーは慌てて2人の後を追っていく。

 家に残った俺を含むみんなは体を拭いて清めた。稽古に出た二人はまた後だ。

 俺は夕食の準備をする。だが今日は昼飯が遅めだったので、その分の量は減らしてある。

 抜くことも考えないではなかったが、ディアナとヘレンの2人は稽古するから腹が減るだろうし、それで2人だけのために用意するとなると遠慮しそうだからな。


 先に干しただけの肉を鍋で茹でて戻しておく。このうちのいくらかはルーシーの分だ。人間が食べる分は根菜と塩漬け肉、調味料なども加えて煮込む。

 ただし、無発酵パンはディアナとヘレンの分だけにしておいた。あれ、意外と腹にくるんだよな。


 やがて外からディアナ、ヘレンとルーシーが戻ってくる。ルーシー以外の2人は自分の部屋へ汚れを落としに行った。

 ルーシーはさっき見つけたお気に入りのところで横になっている。そのうち毛布かなにか敷いてやるか……。


 テーブルに料理を並べたあと、ルーシーの肉を皿に入れてテーブルのそばに置いてやると、キョロキョロとみんなを見回して皿の前にちょこんと座る。

 そして、座ったまま食べ始めない。昼飯のときにすぐ食べたのはよほど腹が減っていたのか。ちょっと悪いことしたかも知れないな。

 ひとまずお利口さんは褒めてやらないと。


「お、待っててくれるのか。お利口さんだな」


 俺がルーシーの頭から首の辺りを撫でてやると、ルーシーはパタパタと尻尾を振る。

 皆が座っていただきますをするとルーシーも食べ始めた。ディアナの目がキラキラしている。今は離れて座っているので俺の肩は無事だ。


「前にサーミャに教えてもらったが、森狼って頭いいんだなぁ」

「だろ?」


 ルーシーは何かで親と一緒に群れを追われたか見捨てられたあと、クマに出くわして親を失ったと言う経緯があって、うちに馴染もうとしているがこれは例外なんだろうか。

 飼って飼えないことはないんだろうが、簡単に飼えるならそれこそ犬と同じ立ち位置になってるだろうし、そこそこ珍しい例ではあるんだろうな。


 夕食が終わって片付けをはじめると、ルーシーが外への扉をカリカリしはじめた。


「どした?なんかあるのか?」


 片付けの手を止めて扉を開けてやると、外に出て鼻をヒクヒクさせたあと、トテトテと歩きはじめる。

 気になってついていってみると、向かう先はクルルのいる小屋の方だ。


「ああ、クルルお姉ちゃんと寝たいのか」


 俺がそう言うと、ルーシーは立ち止まって尻尾をパタパタ振った。ディアナのところに行けば多分ベッドに入れてくれるとは思うが、本人の意向だし別に止めないといけないことでもない。


「よしよし、それじゃあ、おやすみな」


 しゃがみこんで頭を軽く撫でてやると、ルーシーは尻尾をふりふり、再び小屋に向かっていった。

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