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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第7章 アポイタカラ編
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のんびりした1日

 俺からヘレンを引き剥がすのには、ディアナだけではもちろん無理で、サーミャにリケが加わってようやっとだった。

 リディは力の方はそうでもないので加わっていない。もしかしたら”眠り”の魔法でも使ってくれたかも知れないが、前に聞いた話では元々ある眠気を大幅に増大させるだけらしいので、興奮状態では効き目が全くないかも知れない。

 もちろん、クルルは加わってない。馬1~2頭分の力があるクルルが必要なくらいだと、ヘレンが人間の限界を超えているとかそう言う以前に、俺の肋骨と脊椎が危ないだろう。

 さっきのでも結構ヤバかったが。ミシって音がした気がする。


「あ、ありがとな」


 解放された俺はディアナ達にお礼を言った。前にも似たことがあったな。最初に剣を打ったときだったか、手入れしたときだったか。

 俺がこっちに来て1年も経ってないのだから、確実にそれよりは最近のはずだが、なんだか随分昔のようにも思えてくる。


「す、すまん、エイゾウ……」


 対するヘレンはしょんぼりしてしまった。色々あってからの嬉しいことだから、その感情を爆発させるのは悪いことではない。


「俺はなんとも無かったんだから気にすんな。嬉しかったんだったらそれでいい」


 俺がそう言うと、


「うん」


 ヘレンは頷いて、少し機嫌を取り戻した。


 翌朝、朝食後の打ち合わせの時に、俺は切り出した。


「今日はいつもどおりとして、明日は休みにして、森へいかないか?肉も十分余裕があるんだろ?」

「お、いいな」


 最初に乗ってきたのはサーミャだ。


「そうねぇ。たまには狩りは抜きで森を散策するのも良いかも知れないわね」


 次にはディアナが相槌を打ってくれた。リディはコクコクと頷いている。リケも異論はないらしい。


「アタイも行っていいのか?」

「もちろん」


 ヘレンがおずおずと聞いてきたので、俺は即答した。

 長いこと傭兵で一処(ひとつところ)にいなかったようだし、こう言う生活は久しぶりでどうしていいか分からないんだろうな、きっと。


「じゃあ、そう言うことで。もちろんクルルも連れて行くから、薬草や果実は見つけたら採取するか」

「賛成です。狩りや採取のときは、果実はともかく、薬草までなかなか手が回らないので」

「それじゃ、明日はリディが目星をつけた薬草のところを中心に、森の散策にしよう。あくまでも休みだから、ガッツリ採ろうと思わなくていいからな」


 リディが力強く頷き、他のみんなも返事をして、朝を終えた。


 この日は俺は鋳造までは終わっているショートソードの仕上げと、ナイフを数本だけ作るにとどめることにした。

 明日休んだら、明後日は街へ行く日だが、リケの作る一般モデル(もうそろそろ高級モデルに近づいてきている)の品は十分に生産できていて、今日の分があれば俺の高級モデルは数本でもカミロは文句を言うまい。


 前の世界とは違い、かなり好き勝手に仕事をしているから仕事でストレスが溜まることは基本ないが、それでも翌日が休みだと思うとウキウキしてしまうのは、まだブラック時代の精神が肌身に染み付いてしまっているせいだろうか。

 そんな俺の心を反映しているのか、鎚の動きもなんだか軽い。剣の仕上げもナイフを作るのもスイスイと進む。


「親方ノッてますね」


 そんな風にリケに少し茶化されたりもする。そんなことも全く気にならない。リケに悪意がないことが分かっていることもあるが。


「そうか?まぁ、明日が楽しみだからな」

「なるほど。なんかそれ以外にもありそうですけどね」

「それ以外?」

「作る早さ、純粋に早くなってません?」

「え、そうか?」


 俺は全くそんな感じは受けていないが、リケから見てそうなら、そうなのかも知れない。今日は気分の高揚もあって正確なところが把握できないので、後日また改めて検証が必要だな。

 今日はリケはナイフのみを作って、他のみんなはワイワイと板金を生産している。

 休みではないが、これはこれでゆっくりした日々ではあるな、そんなことを思いながら、1日の作業を終えた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最近見つけてここまで読み進めました。とても楽しんで読んでいます。 [気になる点] おそらく仮称、迅雷の剣の研ぎの描写を忘れています。 今回の話の始め、ヘレンの試しの時点ではまだ迅雷の剣は研…
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