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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第6章 帝国革命編
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家路を急ぐ

 おそらくは俺たちを迎えに来たのであろう、マリウスの家の使用人さんとしばらく話し込む。

 とは言ってもお互いの素性を詳しく語ることはない。王国領内の比較的当たり障りのない話をするだけだ。

 さっきまで盗み聞きしていた話と同じく、王国領内は今の所見かけ上は天下泰平らしい。

 そういえば、もしかすると王国中枢に最速で帝国の革命騒ぎを伝えられるのが俺たちの可能性もあるのか。なんだかスパイのような感じだな。

 まぁ依頼そのものが敵国に潜入して人質を救出せよという半分スパイのような、ダンボールを被りたいような雰囲気であったし、今更ではあるか。


 休憩がてら話し込んでいたが、十分に体力も回復してきたことだし、見かけに反してあまりのんびりしていられる状態ではないのもあって、その場を立ち去ることにする。

 マリウスの家の使用人さんは俺たちと「互いの安全のために途中まで一緒に行く」という話をややわざとらしくして(建前と実際が一致してしまっているが)一緒に出発した。


 ガヤガヤとしているところから離れる。同じように出立している人は少なくはないが、さりとてさほど多いとも言えない。少し距離を取れば聞かれずに話をすることはできそうだ。

 パラパラと人が見える平野の街道を歩いていく。カミロたちはどれくらい先行しているのだろう。なるべくなら早めに家に戻りたいところなのだが。

 少しして周りに人も居なくなったところで使用人の人は名前を名乗った。カテリナさんと言うらしい。

 俺の名前は知っているとして、ヘレンも紹介しておいた。ヘレンは「よろしく」と言ってペコリと頭を下げる。

「よろしくお見知りおきを。まさか、あの“迅雷"にお会いできるとは思ってませんでした」

 カテリナさんはややテンション高く挨拶を返した。そういやこの人、武闘派だったな……。武で名を馳せた人物と会えて嬉しいのだろう。ディアナもそうだったし。

「その名前も地に落ちたさ」

 暗い声でヘレンが言う。俺はヘレンの手を握って言った。

「ちゃんと新しいのも作ってやるし、まだまだやり直しはきくだろ。ただ、今は休憩してたらいいんじゃないか?」

「エイゾウ……」

「こうして見ていると、お二人は本当のご夫婦みたいですね」

 俺の言葉をカテリナさんが混ぜっ返す。俺は思わず赤面してヘレンから目を離す。

 高校生でもあるまいし、中身が40を過ぎているオッさんが随分と初々しいことだとは思うが、こういう経験は残念ながら前の世界と合わせてもあまりないのでどう対処していいやらわからない。

 ヘレンも同じようにしているようだが、握った手が振り払われることはなかった。


 それから更に少し行ったところで、道端に止まっている馬車を見かけた。ヘレンの体がこわばるのが伝わってくる。捕まる前のことでもフラッシュバックしたのだろうか。

「大丈夫だよ、あれはカミロのだ」

 俺はできる限り優しい声でヘレンに話しかける。少しだけヘレンの力が抜けた。

 ゆっくりとその馬車に近づくと、知った顔を荷台から覗かせてニヤッと笑う。カミロだ。

「遅かったな」

「関所を出たところに人がたまってるところがあっただろ?あそこでちょっと休憩してたんだよ」

「ああ、なるほど。お前たちは徒歩で並ばされてたしな……」

 説明をするとカミロはあっさりと納得した。

「よし、じゃあ乗れよ」

 促されて俺たちは馬車に乗り込んだ。


「あれ、そう言えばカテリナさんのこと聞かないんだな」

 人が増えているのに何も聞かずにあっさり乗せたことを疑問に思って俺はカミロに尋ねる。

「ああ。1週間くらいで様子を見に来てくれ、って伯爵に俺が頼んどいたんだよ。万が一ってこともあるからな」

「あと2~3日出てこなければ、私が帝国に入ってエイゾウ様達の行方を追っていましたね」

 事もなさげにカテリナさんが言う。万が一のバックアップを頼んだのが依頼者の侯爵閣下ではなく、マリウスのところだというのが引っかかるが、カミロにもなにか目論見があったのだろう。

 今は無事家に帰り着く確率が格段に上がったことだけを意識しよう、俺はそう思って曖昧な返事を二人に返し、馬車に揺られるのだった。

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