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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第6章 帝国革命編
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帰り道

 岩山が遠くに見える、荒涼とした平原に引かれたクレヨンの線のような街道を馬車が行く。遠くには少しだけ雲が見えるが、今日もまだ天気は悪くない。

 街道はまだ避難民で埋め尽くされるという程ではないが、徒歩で避難する人々の数が目立つようになってきた。

 ヘレンはというと、何も言わずにぼうっと道行く人々を眺めていて、その片手は俺の服の裾を掴んだままである。

 いくらか落ち着いてきて顔色も良くなったとは言え、まだ救出されてから1日も経っていない。

 ヘレンに前もって救出を知らせることができたわけでもないから、感情が事態の急変に追いついていないんだろうと思うのでそのままにしてある。


「この先にもう1つ街があるんだったか」

 今のこの状況では追手もそうそう派手なことはできないと思うが、周囲に目をやりながら俺はカミロに話しかける。

「そうだな。来るときに通り過ぎた街だ」

「そっちからの馬車が見当たらないってことは……」

「俺たちが出てきた方は帝国の都に向かう方になるからな。当然その逆に向かうってわけだ」

「元々する予定もないけど、その街での補給は無理か」

「だな。そもそも入れなさそうだ。街道から少し離れてはいるから、混雑も多少はマシだと思いたいがな」

「避難する人でごった返していると厄介だな」

 身動きがとれない間に追手に接近されたりすると面倒だ。街周辺の状況次第では道を外れる事も考えたほうが良いか。

 カミロにその辺りを聞いてみると「そうしたほうが良いだろうな」という答えが返ってきた。やっぱりそうか。


 太陽が中天を過ぎた頃、遠くの街道で人がごった返しているのが見え始めた。丁字路の交差点のあたりに人が溜まっていて、時間が時間なのもあってか休憩している人々も見受けられる。

「どうする?」

「迂回しよう。ここで止まるのはあまり良くない」

 俺が尋ねるとカミロはフランツさんに大きく回り込むよう声をかけた。

 整備された道から外れると揺れはひどくなる。だが、簡易とは言えサスペンションのおかげだろう、思ったよりはゴツゴツとした揺れはない。

「揺れ方で目立つかな」

「多少はな。でもこの程度なら違和感程度で、ちゃんとした仕組みに気がつくやつはいないだろ。なるべく目撃されないようにはしたいが仕方ない」

 カミロはそう言う。サスペンションは隠されているし、余程近づいて覗き込みでもしない限りはバレないとは思うが、揺れ方で目立ちすぎると追手にすれば特定が楽になる。

 しかしここで時間を取られるわけにもいかない。あの街の蜂起が最終的に成功したのかどうかは分からないのだ。

 出るときの街の様子だと成功したとは思うが、鎮圧されていたら早晩ヘレンが脱出したことには気がつくだろう。その時、混乱は逆に追手側にも利点を与えてしまう。

 馬を飛ばしていてもこの状況では誰も不審には思わないだろうしな。


 そうして街道と街を繋ぐ道の交差点を大きく迂回した。警戒はしたがこちらに注目している人は殆どいない。ほぼ全員が自分のことでいっぱいのようだ。

 こちらに目を向ける人々も殆どは単に馬車が通っているから目を向けたという感じで、鋭い視線や警戒しているような様子は伺えない。

 とは言え俺もプロの衛兵などではないので、それが正しいかはわからない。この分野でチートをもらっているかも不明だしな……。

 ひとまずその場をやり過ごせたことにホッとしながら、馬車は更に王国へと向かっていく。今日を越えたら、いよいよ関所が待っている。


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