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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第6章 帝国革命編
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決行前夜

「隣の倉庫から忍びこむのはどうだ」

「どうやって?」

「こいつでさ」

 俺は懐のナイフをカミロに見せた。

「んん?」

「隣の倉庫から倉庫の壁をこいつで切り抜いて、そこから侵入する」


 壁の厚さにもよるとは思うが、10cmほどの刃渡りであれば余程の厚さの壁でもなければ切り抜けはすると思う。

「なるほどな……」

「問題は勿論、元には戻せないことだ」

「そうなると逃げるときにちょっと厄介だな」

 ヘレンがいなくなったことはすぐにでも気がつくだろう。そこに穴が空いていたらどこから逃げたかは一目瞭然だ。

 音が全くしないわけでもないから、ある程度はバレることを想定する必要もある。

 そのときに誰が周囲の倉庫を借りたのかはちょっと調べればすぐ分かる話だ。

 カミロが考え込んだあと口を開く。

「混乱時には正面から押し通るとして、他所から忍び込むのは何かで時間が稼げそうでなければ厳しいかもしれない」

「かと言って他に方法も無いですしね」

 それにはフランツさんが答える。

 俺はカミロに聞いた。

「ヘレンが囚われているのが秘密ってとこは、俺たちにとって有利か」

「そうだな。連れ出してしまえばそれで片がつく可能性もある。あんまりおおっぴらに人を出せないのは、こういう場合には不利だ。ただ……」

「ただ?」

「少数精鋭で来られる可能性も高いってことだ」

「そうなると面倒だな」

「ああ。でもそのためのお前だろ?」

「それはまぁそうだが」

 カミロの言葉に俺は肩をすくめた。


「で、いつやるんだ?」

「例のあれを待ちたいところだが、余り時間が遅いと移送なりされかねない。遅くとも明後日までだな」

「そこまでは?」

「俺たちはいつもどおりに過ごす……フリをしつつ、あの倉庫の様子見だ。そこはフランツに任せるが」

 カミロの言葉にフランツが力強く頷いた。動きがあればフランツさんがすっ飛んで来ることになっている。

 そのときに請けている修理やらをどうするかは、その場で考えるしかないな。

 仮の仕事とは言え、あまり適当で切り上げたくもないが出来ない場合はしかたがない。そこまでで切り上げてお代は不要ということも考えなくてはいけないな。


 その後は3人で市場を回って仕入れをする事になった。色んな店を回って、街で見ないようなものを買っていく。

 カモフラージュということもあるが、帝国内で身動きがしにくくなる可能性は結構あるし、今のうちに帝国でないと値が高いものなんかを仕入れておこうという腹だ。ちゃっかりしてるな。

「ああ、そうだ」

 カミロが思い出したかのように俺に声をかけてくる。

「こいつを今のうちに渡して置こう」

 懐から取り出したのは1枚の木札だ。俺は受け取ってその表面を眺めた。

「通行証?」

 木札には通行証の文字と、ジミーなる人物が王国出身で戻る権利があることが書かれている。

「ああ。万が一の場合はそいつでお前だけでも逃げろ。いいな」

「しかし……」

 俺はここにヘレンを奪い返しに来たのだ。それに帰るときはカミロとフランツさんも合わせて4人一緒だと思っていた。

 最悪の場合もあるのだろうが、それでもなんとかこのメンツで帰還を果たしたい。俺はそう言おうとした。

「いいな?」

 しかし、珍しく有無を言わせないカミロの気迫に、俺は素直に頷くしかなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 新井素子「絶句」の鉛筆削り(ポケットナイフ) 脱出のためにコンクリートの壁を切り抜くのに使用された。 "チート"という言葉が定着していない頃の作品ですね。
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