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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第5章 荷車と魔族の刀編
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緩やかに過ぎていく日

 割と調子よくロングソードとショートソードを作ることができた。カミロに聞いた売れ行きから言えば、相変わらず高級モデルの量としてはこっちのほうが必要なので、もう幾日か作れればこっちの方は問題なさそうだ。ナイフの方の量は程々でも大丈夫だろう。

 なんとかリディの部屋の扉とベッドを作る時間は確保できそうだな。


 日が落ちるより少し前、ガラゴロと外から音が聞こえてきた。クルルが戻ってきたのだろう。ということは他の3人も戻ってきたはずである。

 ややあって、思ったとおりサーミャ、ディアナ、リディの3人が作業場に戻ってきた。

「おかえり」

 俺が声をかけると、三者三様の「ただいま」が返ってきた。

「今日は何が採れたんだ?」

「主に果実だな。あとは畑に植えられそうなのもいくつか。見繕ったのはリディだけど」

「早めに収穫できそうなものを中心にしています」

 サーミャが答えて、リディがフォローした。早めに収穫できると言うことは、ハーブとか葉物野菜みたいなもんかな。果実の方は一部を酒に漬けて、残りは早めに消費してしまうことにしよう。食卓が賑わうのは良いことだ。


 その日の作業を終わらせて、晩飯の準備をする。今日はハーブも使って猪肉の香草焼きみたいなものを作ってみた。あとはリンゴに似た果物をそのまま出す。

 リンゴに似た果物は結構な数を採ってきてくれたので、いくつかを切って、小さな壺にたっぷりの水と一緒に入れてみた。壺は煮沸消毒して、水は一度沸かしてある。せめてもと思って蓋をして作業場に置いてきた。上手くいけば良いのだが。


 晩飯は好評だった。調理法自体はそうそう凝るのも難しいが、味付けはなるべく色々変えたいところではある。バターとかチーズなんかも手に入らないか、カミロに聞いてみるか……。


 翌日、サーミャとディアナとリディの3人は今日は畑の方をやるらしい。昨日持ち帰った苗は早めに植え替えしないともたないからだ。

 ただし、持ち帰った苗も畑を埋めるほどの量はない。エルフの里から種が届いた時のスペースが必要なので、その分は空けておくというわけである。

 5人プラス1頭の家族なので、一人頭にすると最大限収穫できても量は知れているが、それでも自給できるかどうかは、こういう生活では重要だと思う。

 何がきっかけで長期間ここに籠もらざるを得なくなるかも分からないし、隠居みたいな生活を始めるなら必須だろうし。今のうちにこういうノウハウを貯めておくのがよろしかろう。


 しかし、今日の俺は鍛冶屋をせねばならない。あと1週間ほど後の納品までにそれなりの量の在庫を作る必要もあるし。……合間に見に行くくらいはいいよな?

 明日からサーミャ達が鍛冶仕事の手伝いをしてくれるようなので、今日はナイフ作りに切り替えた。剣は製造スピードで言えば手伝ってもらったほうが早いからな。

 リケも今日はナイフを作るようだ。カミロに聞いた話では売れ行き的にはリケの作る一般モデルのナイフが一番売れているってことなので、数を揃えたほうがいいのは一般モデルのナイフ、ということになる。

 逆に言うと高級モデルのナイフは実はそんなに数は出ない。そんな切れ味のナイフを求めている人の数が、他の商品と比べて圧倒的に少ないからだ。

 カミロからも「少なくても問題ない」と言われているので、今日は一般モデルと半々にしてリケの負担を減らし、その分は好きなものを作る時間に当ててもらうか。


 俺がその話をすると、最初はリケも「そんな畏れ多い」と言っていたが、「エイゾウ工房の弟子として何か自分で作れるようにならないと」と説得して、やや不承不承ふしょうぶしょうながらも受け入れてもらった。

 ちょっと弟子を振り回している感じもあるが、たまのわがままだと思って許して欲しい。


 一般モデルだとそんなに気合を入れることもないので、ホイホイとこなせる。しばらく俺とリケの鎚の音がリズミカルに作業場に響いていたが、やがて外からガラゴロという音も聞こえてきた。

 クルルがディアナにおねだりして、ミニ荷車を牽かせて貰っているのだろう。クルルに牽かせる鋤を作れば畑の拡大も楽だとは思うが、そこまで大規模の農業をするつもりがないからなぁ。

 金属同士のぶつかる澄んだリズムに、ガラゴロというベース音が加わって、俺とリケはナイフを量産するのだった。

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