帝都へ4
うちの娘については、魔力の影響であまり食事が必要ないこと以外は、名前も含めて全て話した。
「よく懐いておられるのですね」
感心したようにうんうんと頷くハリエットさん。
「うちを気に入ってくれてはいるようです。特に繋いだりもしていないですが、うちから離れる素振りもないですし」
「お利口さんですね」
「ええ、そこについては『親』の私が保証しますよ」
俺が言うと、ハリエットさんは今までで一番大きな笑顔――とは言っても、慣れてきた俺にも微差でしかないのだが――で微笑んだ。
「私は普通のリザードマンのように思われていますが、実際にはドラゴニュートなのです」
「ああ、それで走竜のことを」
「はい」
ドラゴニュート。つまりは、半竜半人の種族ということだ。前の世界でやってたゲームなんかだと、リザードマン系の種族やジョブが進化するとドラゴニュートになっていたように思う。
平たく言えば、つよいリザードマンである。
「濃くはないとはいえ、ドラゴンの血を引いているのは同じですから」
ハリエットさんは再び微笑む。前の世界の知識と大きく違うわけでもないらしい。
しかし、口ぶりからして彼女がドラゴニュートであることはある程度秘密だろうと思うのだが、俺たちに言ってしまって良かったのだろうか。
そう思い、ヴィクトリアさんを見ると小さく頷いた。言おうとした時にも止めなかったし、少なくとも俺たち相手には秘密にする必要が無いらしい。
「しかし、帝国の走竜はそこまで賢くないようで、なにか育てるコツなどあるのでしょうか」
「どうでしょうか……うちは基本好きにさせてますからね」
「なるほど、のびのびとした環境が大事かも知れませんね」
「まあ、うちの子にはそれが合うだけ、という可能性は高いですから、ある程度様子見しつつでされるのがよろしいかと」
うちのクルルについては放任主義であることは間違いないのだが、放任したから賢いというよりは、賢いから放任しているというのが正確なところだ。
そして、あの賢さは〝黒の森〟の魔力の影響もあるのでは、と俺は考えている。
実際、恐らく澱んだ魔力の影響が強いであろう魔界で育った走竜は言うことを聞かず、気性が荒いと聞いた。
それがあまり賢くないからそうなのか、あるいは「賢すぎる」からそうなのかは知る由も無いが、クルルの穏やかさを考えれば、ある程度までは個性だとしても、少なからず影響はあるはずだ。
つまり、同じように放任したとしても、クルルのように聞き分けの良い子に成長するかはかなり怪しいだろう。
それでも、普通のも澱んだものも、どちらの魔力の影響も受けずに育った子をのびのび育てれば、「賢い」子に育つ可能性も否定しきれるものでもないので、是非実践してみて欲しいところではある。
こうして、馬車の上は二人の「親」が子育て談義に花を咲かせる場となったのであった。




