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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第16章

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帝国で最初の食事

 ヴィクトリアさんが指を鳴らすと、少しして酒と食事が運ばれてきた。

 食事がやたら豪華だったらどうしようかと思ったが、そういうことはなく、全体的に肉が多いのと、パンが比較的柔らかい程度の豪華さで、贅をこらしたものではないようで、内心でホッと胸をなで下ろす。


 だが、見た目通りの素朴さとは裏腹に、スープは燻製肉と乾燥ではないらしい野菜が入っているし、焼いた肉には少しだが凝ったソースがかかっているようだ。

 俺はさておき、王国のお客さんや皇女殿下もいるので、下手なものは出せないのだろうな。


「美味しいですね」


 スープを一口飲んだ俺は素直にそう言った。見て分かるような贅沢さはないが、ブイヨンからちゃんと仕込んだコンソメスープのような、そういう滋味深さが口に広がる。

 コンソメスープも、ちゃんと作ると30時間以上かかるんだよな……。


「そう言っていただけて何よりです。帝国は王国ほど手の込んだ料理はないもので、緊張しておりました」

「いえいえ、本当に美味しいです。ねえ?」


 俺はカテリナさんに言った。彼女も一口啜ってから満面の笑みを浮かべ、


「はい! これは美味しいです!」


 笑顔のままでハッキリとそう言った。彼女もそれなりに演技ができてしまう人ではあるが、あの顔は本心だろう。


「〝黒の森〟ではどのような食事を?」


 ハリエットさんが単刀直入に聞いてきた。一瞬ヴィクトリアさんが咎めるような仕草を見せたが、俺はあまり上手くない笑顔を作り答える。


「このスープと似たようなものですよ。肉が〝黒の森〟に住む獣のもので、野菜は庭の畑で採れたものが中心ですし、到底こんなに手の込んだものではありませんが」


 言ってから俺は「もしかして、妹が何を食べさせられているのか気になったのかな」ということに気がついた。実際、アネットさんの視線がやや冷たい気がする。

 もし、ハリエットさんがその意図で聞いたのであれば、粗末な食事に聞こえるような回答はマズかったかもしれない。


 だが、その心配は杞憂だったようで、ハリエットさんはほんの僅か口角をあげて、


「まあ、〝黒の森〟の肉を? それはアンネマリーも喜んでいることでしょう?」


 と言った。多分、少しだけ上がった口角は満面の笑みなのだろう。どうやら逆鱗には触れずに済んだようだ。


「ええ。彼女から直接文句を聞いたことはないですね」


 俺が小さく肩を竦めて言うと、テーブルに笑い声が広がった。

 それで俺はグッと酒のカップを呷る。中はエールで、アルコール度数も高くない。そんなエールでさっきの緊張を飲み下す。


「やはり、〝黒の森〟の肉って変わってるのですか?」


 今度はヴィクトリアさんが興味津々と言った感じで聞いてくる。


「さあ、どうでしょう……。そこまで大きな違いはなかったように思いますが」


 こっちの世界に来てから口にした肉の大半が〝黒の森〟のものなので、よそとの違いをちゃんと知っているかと言われると、そうでもない、というのが正直なところなのだ。


「私も興味ありますね」


 何故かカテリナさんも話に乗ってくる。


「肉はそこそこ貯蔵しているのがありますので、帰ったらいくらか融通しますよ」


 俺が苦笑交じりにそう言うと、ヴィクトリアさんとカテリナさんは、小さめにハイタッチを交わすのだった。

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