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鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第16章

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1010/1011

帝国への道2

 道中はのどかと言って良かった。心配していた野盗や刺客の姿もなく、途中で一度馬を休ませながらも、順調に距離を稼いでいる。

 サラブレッドの全速力ではないので、ちょっとした自動車並みの速度だとは言えないが、快速の馬を選んだらしく、思いの外速い。


 荷車から解放された馬は、恐らくあの黒の森の湖から流れ出て、はるばるここまで来たのだろう川辺でゆっくりと水を飲んでいる。


「ここに来るまでは思ったより木が少なかったですね」

「え? ああ、そうですね」


 俺はカテリナさんにそう言った。一瞬面食らっていたようなのは、俺はこのあたりを通っているはずだからだろう。

 北方から来るとき……は実際には北方からは来てないのでどうしようもないとして、前に帝国へ潜入したときにも景色を見ているはずなのだが、ヘレンの事をずっと気にかける道中だったからだろう、あまり記憶にない。

 そのぶん、新鮮な気持ちで眺められるのは良かったのかどうなのか。


 さておき、ここに来るまでに見ていたのだが森、いや、林と言えそうなものもあまりなかった。

 いくらか木が集まって生えているような箇所はあるのだが、切り出して資源にするのも憚られる程度でしかない。


「今日の目的地は町ですから、その近くには木があると思いますよ」

「確かに」


 そもそもの話、燃料になるものがなければ人々の生活はなかなか立ち行かないのである。

 切り出してから運ぶ必要があるし、それを考えれば町があるから近くに森林がある、というよりは、森林があるから近くに町ができた、と考えた方が良いんだろうな。


 水よりは優先度が低いだろうし、森ともなれば〝黒の森〟ほどでなくても危険な動物も住んでいると思うので、直近には構えないにしても、とんでもなく遠く、というわけではないはずだ。


 となれば、町に近づけばすぐそこでなくても、それなりに近くにあるはず、との推測は間違っていないだろう。


「なぜ森を探しておられるのですか?」


 話を聞いていたらしいアネットさんから、出て当然の疑問が出てきた。


「ちょっと遠出するときに、森を経由して行ったほうが家族たちも良いかなと思いまして」

「なるほど。皆さん森に馴染んでおられるでしょうしね」


 アネットさんは俺の言い分に納得したようで、大きく頷いた後は特に追及してこなかった。

 今のところ、魔力周りの話はおいそれとしないほうが良さそうなので、そこは誤魔化したが、〝黒の森〟に住んでいる事実が納得させてくれたようである。

 それはそれで若干良かったのだろうかという気持ちも湧いては来るが、背に腹は代えられないからな……。


 ただ、アンネが帝国に戻ることになれば、多かれ少なかれ魔力との関わりを帝国に知られることになるので、そのタイミングである程度はマリウスには話を通しておかないと駄目だろうな。


「それじゃあ行きましょうか」


 カテリナさんが俺たちに声をかける。俺が馬に、


「今日はもうちょっと頑張ってくれよな」


 と声をかけると、馬は任せろと言わんばかりに、頭を上下に軽く振って応えてくれるのだった。



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