表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ  作者: たままる
第1章 異世界での暮らし方編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/989

街へ向かう準備

「しかし、こりゃ3本目は普通の売り物にできないな」


「え? そうなのか?」


 サーミャが驚いて言う。俺は


「刃物の取り扱いを十分に知ってるやつならともかく、そうでないやつが、この切れ味のもの使ったら危なすぎるだろ?」


 と答える。


「あー、そうかぁ……」


 がっくりした様子のサーミャ。


「まぁ、ちゃんと刃物の扱いがわかってるやつになら、売ってもいいけどな」


「おっ、やったぜ」


「ん? なんだ? 欲しいのか?」


「お、おう。狩りして捌く時に、これくらい切れ味がよかったら楽だなぁって」


「じゃあやるよ」


 俺は前のがあるし、このまま持ち主を待つのはかわいそうだし、何よりサーミャは知らんやつでもない。


「いいのか!?」


「おう、かまわんぞ。普通に売れるものの合間に鞘作るから、ちょっと時間をもらうけどな」


「それこそかまわないぜ。これだけの物をもらうんだから、そこで駄々こねても仕方がねぇし」


「じゃあ、しばらく待っててくれ」


「おう!」


 なんかちょっと餌付けしてる感じになってきた。いや、住まわせてるから、実質餌付けしてるようなもんか。


 とりあえず、これで作るべきものの方向性は決まった。あまり凄いものは作らずに、そこそこのものを作りつつ、翌々日くらい仕上げで修理も受け付ける、ということにしよう。


 となれば、しばらくは“数打ち”に集中したほうが良さそうだ。俺にとっては大したことのない出来、と言っても普通よりはだいぶ切れ味のいい刃物だから、不評を買うようなことはないはずだ。


 それから5日ほど、小剣やナイフなどの他に、クワと鎌、斧をいくつか作った。新しく作ったものは、切れ味のいいものも、自分用に作ってある。


 この5日間、サーミャはおとなしくしていた。あまり体を動かさなすぎるのも、体がなまるだろうと、試し切りには参加させているが、そのときも全力を出している風ではない。


 そのことについて聞いてみると、


「いや、早く怪我を治してエイゾウのナイフとかを使ってみたいから……」


 と言われた。そうかそうか。今度なんか新しいの作ってやろうな。遠回しにでも褒められると弱いのだ、俺は。


 そうして6日目、俺が()()()に来て1週間たった頃、サーミャの縫合した傷跡の抜糸をすることにした。


「今から抜くが、痛むぞ」


「おう、わかった」


 そうして縫ったぶんの糸を抜いていく。サーミャは痛そうだったが、声を上げることなく耐えていた。


「よし、終わり」


「いてて、ありがとな」


 新しい包帯を巻いた上から、抜糸あとをさするサーミャ。


「ところで、サーミャ、一つ聞きたいんだが」


「ん? なんだ?」


「獣人が街に行くのは問題があるのか?」


「いや? 特に用がねぇからあんまり行かないってだけで、罪を犯してるとかなけりゃ衛兵に止められたりってことはないぜ?」


「そうか」


「なんでだ?」


「いや、明日あたり一回街に行ってみようかと思ってな。俺はこっちの街には不慣れだから、護衛と体慣らしを兼ねて、付き合ってもらえると助かるんだが」


「いいぜ」


「あっさり受け付けるんだな」


「まぁ、エイゾウに世話んなってるのは確かだし。ちょっとでも助けられるならお安いもんだぜ」


「ありがとう、助かるよ」


「おう。それじゃ、ちょっと今日はもとのねぐらに行ってくる」


「そうか。気をつけてな」


 これは、もうここに住むって決めたようなもんだな。

 そう思ったが、多分それを口に出すとへそを曲げるだろう。あまり感情に出して勘付かれても面倒なことになりそうなので、黙っておいた。


 サーミャは夕方頃にはいくつかの身の回り品と共に戻ってきた。


「それだけか?」


「ああ、アタシたちは時々ねぐらを移動するんだよ。だからそもそも物はそんなに持ってない」


「なるほど」


 狩猟民族に近いのかな。そう言えば飯の時に出る話題は狩りの話が多かった。

 でも、ここに住む気が(おそらくは)あるということは、定住ができないというわけでもないようだ。

 この辺の話は、また住むって言ってきた時に聞いてみよう。


 そして次の日、朝の水くみだけ済ませたら、街へ出かける準備をする。

 と言っても日帰りなので、大した旅装は必要ない。今日はナイフと鎌、斧、クワを持っていくことにするが、斧とクワは嵩張るので一本だけだ。


 サーミャは護衛を兼ねているので、ナイフだけ持ってもらう。売り物でないナイフは、今腰につけていて、服装は自分の服だ。

 俺はいつもの服に斧とクワ、複数の鎌という出で立ちで、怪しいっちゃ怪しいが、まぁ逆に言えば、売り物を持ってきたようにしか見えない、とも言えるだろう。


 あとは寝室のサイドテーブルの隠し棚から、銀貨を数枚失敬してきた。多分俺のだけど。


「用意はいいか?」


「ああ」


 この世界で初めて街に出る期待と不安を胸に、俺たちは出発した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=509229605&sツギクルバナー
― 新着の感想 ―
感謝が無かったのはたまたまじゃなくてこいつの性格か 無礼なやつってことでもうスルーしよう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ