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3-32 勇者とは――発明家とは

ありがとうございます。


「――ところで、勇者の役割ってどんな役割なの?」


「勇者は……魔王を倒すのです」


「えっと……」


 そもそも、魔王とはなんなのか。なぜ『最高位の悪』という言葉で表されているのか。どうしてそれを倒す役割が存在するのか。

 そういった事への説明を期待していたのであろう。が、チーズさんの返答は、非常に短絡的な一言であった。


「うん。たぶん、ファンタジーなお祭りの主役だよ」


「そうですね」


 そうなのか。


「……魔王を倒すと皆幸せ、みたいな?」


「はい。この星のどこかに居る魔王を倒すと、この星の住民全員が、景品を貰えます。あと、スライムも増えますね」


「ん……なんとなく分かったかも……」


 つまり、惑星規模で管理者サイドが主催する、ご褒美付きのゲーム、という事か。


 この星限定のモノなのか、他の星でも行っているのかは不明だが、抑制システムで苦痛が少なく、死のリスクが少ないこの世界では、戦闘行為もお祭りになるのであろう。


「あ、ちなみに……とても長い間、勇者になれるほど強い人が居なかったのです。先程は、初めて勇者の役割を見たので、少し楽しくなってしまったのです」


「そっか……でも、勇者以外の役割も選べるんだよね?」


「ええ、どの役割でも登録できますが……」


「それじゃ、白姐が好きそうな役割、探してみよっか」


「いんやぁ。ウチは何でも構わねぇで……」


 役割というモノ自体、特に興味が湧かないのであろう。尋ねるように、皆に顔を向ける。


「ふむ、何を選んでも、ワシらに実害は無いのにゃ」


「うん。でも、私は勇者がオススメだよ? 知らないけど」


「こやつは、魔王というモノを見てみたいだけだにゃ。無視して良いのにゃ」


「ん、でも……私もちょっとキニナルかも」


「んだば、勇者にしてみるけぇ」


 微笑みを浮かべながら、チーズさんに振り返る。


「あ、すみません……今気づいたのですが、シロ様はこの世界の住民ではないので、勇者になった事を公表した場合……」


「ふむ、何か面倒な事になるのかにゃ?」


「はい……色々と……」


「や、その辺は、私が隠蔽するから大丈夫だよ?」


「ん、流石お母さん。隠蔽上手」


「うん。クロちゃんに褒められると、嬉しいねぇ」


 決して褒められた事では無いが、『感触』から純粋に褒めている事が伝わったのか、満面の笑み。


「それじゃ、このままチーズさんに登録してもらえばイイのかな?」


「うん」


「あ、それでは身分証をこちらに……」


 チーズさんが判定機の上に身分証を伏せ、側面下部に触手を伸ばすと、判定機全体から派手な球体魔法陣が浮かび上がり、身分証に吸い込まれる。


 見たところ、ただの演出。

 文字自体は、判定機から出たレーザーによる焼き付け。その表面には、細かな粒子状の機械が多数、張り付いている。


「――綺麗やなぁ」


「ん、カッコイイね。特殊エフェクトかな?」


「はい。普通の役割でしたら、少し光るだけですね」


 白い神に手渡された身分証の役割欄には、虹色の複雑な模様と力強い文字列が印字されている。


「文字も光っちょるけぇ」


「シロちゃん。悪いけど、少し地味なのに変えちゃうよ?」


 赤い神が身分証に手をかざすと、役割欄から装飾と文字列が消え、形の異なる黒い文字列が現れる。


「ありがとなぁ」


「ん、それじゃ、次は私がやってみるよ」


「楽しみやけぇ」


 白い神の微笑みが、僅かに深まる。

 自分の役割はともかく、黒い神の役割には興味があるようだ。


「では、こちらに……はい。判定機に手を乗せて下さい」


 黒い神が判定機に触れると、即座に紙が排出され始める。


 が、すぐに停止する。


 紙には、一行だけ小さな文字列が印字されている。


「えっと……これだけ?」


「……おかしいですね……これは――」


 チーズさんが、排出された判定用紙を素早く掴み、折り畳む。


「すみませんが、一度手を離してから、もう一度試してもらえますか?」


「ん――」


 再び手を乗せるものの、先ほどと同じ小さな文字列が印字された、短い紙が排出される。


「またエラー?」


「……はい。管理者様なら最低でも、万能魔法士か四属性魔法士のどちらかが出るはず……なのですが……これは……」


 おそらく、万能魔法士とは、全ての管理者能力の劣化版を有用なレベルで扱い、何かに役立てる役割、という意味であろう。

 四属性魔法というのは判然としないが、相転移的な変化を操る、という意味であろうか。


「なんて書いてあるの?」


「『発明家』のような意味の単語だにゃ」


「んだなぁ。新しいもんを作るとか、今あるもんを変えるっちゅう意味やけぇ」


 黒い神は以前、情報処理がメインの技術者であったため、新しいモノというよりは、既存のモノを組み合わせるニュアンスが近い。

 しかし、モノづくり全般を強く好む黒い神には、相応しい役割に思える。


「ん、全然アリだけど……なんかマズイの?」


「…………」


 言葉を選んでいるのか、羽ばたきを止め、沈黙するチーズさん。


「……なるほどねぇ。ヤバちゃんみたいな扱いを受けるって事かな?」


 地域によっては軽視、軽蔑される、という事か。


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